第十六話 ハンター対錬金術師
それから5分後、クルスとアルケミナはシャインビレッジの村役場の前に立っていた。
現在彼らの目の前には、サーベルキメラがいる。
「結構早かったね」
『生まれつき逃げ足だけは早かったからな』
「ところでハンターというのは」
『2人組の男だった。小太りに金髪のリーゼントの男と黒いローブを着た金髪のスポーツ刈りの男。黒いローブを着た男の名前はブライアンというらしい』
アルケミナとサーベルキメラの会話を聞き、クルスは首をかしげる。クルスは状況を理解していない。
「先生。そのサーベルキメラは何者なんですか」
「説明は後。ハンターが来た」
アルケミナが人差し指を立てると、2人の前に息切れしたハンターたちが現れた。
「ブライアン兄さん。ここって依頼人のトーマス村長がいるところだ」
「よかったじゃないか。ここでこいつを狩れば、すぐに依頼人への報告ができる」
ブライアンがにやりと笑うと、アルケミナはサーベルキメラとハンターたちの間に入った。
「お嬢ちゃん。そこをどけ」
「嫌」
「邪魔をするな」
サーベルキメラを守るように立っている幼い少女に対してハントは怒鳴る。だがそれをブライアンが宥めた。
「ハント。気にするな。ただの子供じゃないか。こっちは村長に依頼された仕事をすればいい。村長も言っていただろう。何をしても構わないって。わがままな悪い子にはお仕置きをしないといけないだろう。仕事の邪魔をするやつは殺せ」
「分かった」
ハントは赤色の槌を取り出し、地面を叩く。それにより発生する魔法陣から煙が出現し、少女の体に白い煙が付着する。一方サーベルキメラは空を飛ぶ。その羽ばたきで白い煙は消えたが、わずかにサーベルキメラの体には煙が付着している。
「ブライアン兄さん。後は任せた。こっちは邪魔をした悪い子にお仕置きする」
ハントが錬金術で呼び出した白い煙には独特の匂いがある。その匂いは1日経たないととれない。この匂いが付着していれば、相手がどんなに逃げ足が速くても、追跡することができる。
ブライアンが逃げていくサーベルキメラを追うと、アルケミナは呟いた。
「あの匂いはサーベルキメラの嗅覚では気が付かない奴。狩りをするには最高の錬金術だけど、つまらない。ブライアンとかいう男も錬金術師だろうけど、才能がない」
その幼い少女の言葉はハントを傷つけた。
「餓鬼に言われたくない」
「ただの餓鬼じゃなかったとしたら」
アルケミナは挑発を続ける。一方ハントは怒り、別の槌を取り出し、地面を叩く。
魔法陣がアルケミナの立っている地面まで移動し、幼い少女の回りを炎が包み込んだ。
だがその炎は一瞬で消える。炎が消えた瞬間、ハントの目に少女が槌を握っているのが見えた。
「バカな。一瞬で錬金術を使うなんてありえない。一秒以下のスピードだ」
「言ったよね。ただの餓鬼じゃないって」
その少女の声が聞こえた瞬間、ハントの視界が真っ暗になった。
一瞬で炎を消し、一瞬で反撃したアルケミナはクルスに指示を与える。
「クルス。あのサーベルキメラを追って。独特の匂いが付着しているから、すぐに見つかるはず」




