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魔王亡き世界で勇者パーティを追放された無能と呼ばれた魔術師、実は転生した冷徹非情な魔王様でした。  作者: 灰色の鼠
プロローグ 追放と覚醒

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第4話 旅立ちと決意


 魔王軍の幹部を倒した俺は、宿屋の前に座り込んで他のパーティメンバーを待っていた。

 ガーベラとアレクの遺体は宿屋の空いている部屋のベッドに寝かせている。


 待っている間、ガーベラから貰い受けた聖剣に目を落とす。

 剣身に映っている俺は別人だった。


 黒だった髪が白くなっており、八重歯が鋭くなっている。

 筋肉も若干ついているような気がする。


 前世の魔王だった時の記憶を、少しだけ思い出した影響なのだろか?


 そんなことを考えていると、後ろから殺気を感じた。

 反射的に聖剣を盾のようにして構え、振り返る。


 ガキンっと、金属の衝突音が響いた。


 そこにいたのは大剣を構えたギルバート。

 俺を攻撃したのだ。


「おいシオン! 何なんだ、その姿は!?」


 ギルバートは険しい顔で指をさしてきた。

 後ろには回復役の聖者マナもいる。


 勇者パーティの二人が、ようやく戻ってきたのだ。


「それじゃ、まるで……まさかっ、記憶を取り戻して、暴走を……!」

「やっぱり、最初から殺すべきでした! いつか、こうなっていたのに、なんでガーベラさんは彼を庇っていたのか!」

「貴様にかけられていた”守護魔術”の効果はまだ切れていないはずだ。だというのに、魔王軍が俺達の位置を特定した! シオン、まさか貴様……俺達が知らない間に、すでに魔王軍と接触をして、この襲撃もガーベラを殺めようと計画して……」

「違げぇよ」


 記憶を取り戻して暴走とか、魔王軍と裏で結託していたとか。

 そう決めつけてきたが、静かに否定する。


「武器を収めろ。戦う気はない、俺はシオンだ」

「その姿になった貴様を誰が信用するか! 答えろ! ガーベラとアレクをどうした! あの魔王軍はどこにいる!?」

「あの魔王軍なら俺が倒した。魔王軍の幹部”魔官ケセド”恐ろしく強いやつだった。そいつは、ガーベラとアレクを殺しちまった」


「「!?」」


 嘘偽りなく報告すると、ギルバートとマナの二人はショックを受けていた。


 俺のことが嫌いで裏でよく嫌がらせを受けていたが、死んだアレク含めて勇者パーティの三人はガーベラを尊敬していた。


「貴方が殺したのはではないですか……?」


 バンバン! と死角から銃声が聞こえ、勘で銃弾を回避する。

 やはり、前までの俺なら有り得ない反射神経と身体能力だ。


 撃たれた方を見ると、銀髪の少女が立っていた。

 顔が整っている美少女だった、銀色の銃器をこちらに向けている。


「誰だ、あんた……?」


「———お初お目にかかります神聖国”聖魔導師団せいまどうしだん”所属、聖冠術士”リネット・クレイドルと申します。以後、お見知りおきを」


 そう自己紹介するリネットに、一瞬だけ見惚れてしまう。

 人形のように可愛らしい。


「お聞きになっているかと存じますが、私はシオン・マグレディン様を神聖国へと無事送り届けるよう依頼を承りました護衛です。しかし、状況が変わってしまいました……」


 よく見てみると左胸に神聖国の紋章シンボルを飾っていた。

 そういえば、アレクに神聖国の誰かが俺を迎えにくるって言っていたな。


 それが、目の前で銃を向けてきている少女か。


「魔王テスタロッサ、勇者ガーベラ様を殺害した罪で拘束します……大人しく投降しなさい」


 そう言ってリネットはふたたび発砲してきたが、持っていた聖剣で弾丸を弾く。


「それはガーベラ様の聖剣!? 魔王である貴様が触れていいものではない! 今すぐ、こちらに返しなさい!」

「これはガーベラが俺に託したんだ」


 仇ような眼で睨みつけてくるリネットに、俺は決意して告げた。


「お前らと俺で争っている場合じゃねぇんだよ。こんなくだらねぇ事をしているうちに魔王軍が勇者の死に勘づいて、活動を活発化させるかもしれねぇ。そうなれば被害が拡大する。罪のない人たちが巻き込まれちまう!」

「魔王テスタロッサ、貴様がそうさせたのだろう!?」

「俺は魔王じゃねぇ! ガーベラも殺してねぇ! 俺は”勇者の子、シオン・マグレディン”だ!!!」


 思わず威圧を飛ばしてしまいリネットや、他の連中が怯む。

 周辺の建物も揺れてしまう。


 リネットが両手で銃を構え、それに続いて戦士のギルバートも武器を構え直した。

 やはり、こうなってしまうか。


 ギルバートは勇者パーティで実力は相当。

 リネットは神聖国の”聖魔導師団せいまどうしだん・聖冠術士”と言っていたな。


 俺の知る限り、対魔王軍で最も軍事力を持つ国の師団。

 しかも”聖冠術士”といえば師団で上から二番目の階級。

 ギルバートと同等の実力だろうな。


「俺は、お前らとは戦わない」


 俺は足元にありったけの力を込めて、跳躍した。

 地面が砕け、あっという間に町の外へと飛び越えていた。


 アネットとギルバートは唖然とこちらを見上げていた。

 もう会うことはないかもしれないし、ガーベラのいない勇者パーティには居たくない。


 もう、後戻りなんてするか。

 これがキッカケで人族の敵になったかもしれない。


 だけど、俺はガーベラの意志を継ぐ。

 彼女に貰い受けたこの聖剣で、魔王軍を殲滅する。


 たとえ、俺の前世が魔王だったとしても。






 こうして、俺の旅は始まった。



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