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マリア騎士団と十字軍  作者: ネムノキ


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マルティナ4

 東ローマ帝国を滅ぼして成立したロマニア帝国と、キプロス=マリア騎士団の仲は滅茶苦茶悪かった。

 『エーゲ海の戦い』と呼ばれるようになった、マリア騎士団とヴェネツィア海軍との戦いは伝説となり、吟遊詩人や托鉢修道会の修道士達が私達マリア騎士団の戦いぶりを高らかに歌った。

 そのせいでロマニア帝国の評判は地に落ちていて。元十字軍騎士達はヴェネツィアとマリア騎士団を激しく罵った。

 ロマニア帝国はヴェネツィアを『諸悪の根元』として取り引きを止め、ジェノヴァやマリア騎士団と交易をした。まあ、私達マリア騎士団と取り引きするのは少数派だったけれど。

 こうしてアナトリアから締め出されたヴェネツィアは、エーゲ海やアドリア海で海賊行為を働くも、ジェノヴァやマリア騎士団の海軍に返り討ちにあうことが多々あった。

 結論から言えば、ロマニア帝国はヴェネツィアと組むべきだった。ヴェネツィアの交易網を捨てたロマニア帝国は経済的に弱く、ギリシャ方面ではブルガリア帝国に押されに押され、アナトリアでは東ローマ帝国の亡命政権、ニカイア帝国にコテンパンにやられていた。

 一方のイスラム勢は、この隙を見逃さずに勢力を伸ばしていて。これは将来アナトリアはイスラム勢力になるな、とマリア騎士団では分析している。




 さて。ロマニア帝国が内輪揉めで忙しかった間も、世界は動いている。

 一番大きな動きは、インノケンティウス三世猊下が呼び掛け、一二一五年一一月から始まった第四ラテラン公会議だろう。

 正統信仰の保護。十字軍国家エルサレム王国とキプロス=マリア騎士団(!?)の支援。俗人の聖職者叙任権への介入の排除。異端の排斥及び改宗。等々がお題目として挙げられる中。注目すべきは、新たなる十字軍の編成だった。


 正統信仰の保護と異端の排斥及び改宗、これはカトリック教会として当然のことだから省略するとして。


 十字軍国家の支援は、特にエルサレム王国を中心に話がされた。イスラム勢力の圧力にさらされているエルサレム王国を支援しなければ、エルサレムへの巡礼が脅かされると考えられた訳だ。それが新たなる十字軍に繋がる事になるが、それは後で述べることとする。


 俗人の聖職者叙任権への介入の排除というのは、領主や国王、商人が、聖職者の階級を決める際に介入してくることを禁じよう、としたのだけれど。汚職で真っ黒黒になりつつあった今のローマ教会でこれを禁じるのは無理があり。

 外面だけの取り決めで終わった。


 異端の排斥及び改宗、これが揉めた。原因は私達マリア騎士団だ。

 まず、カトリック教会では『説教』というものを行う。これは聖書の内容を教える行為を指す。

 私達マリア騎士団では『説法』というものも行う。これは聖書を『何故そういう教えなのか』と解釈したものを教える行為を指す。

 聖書の内容について考察することは、何というか、異端の臭いがプンプンする行為なのだ。

 けれど、説法をしていないローマ教会では腐敗が進み。

 説法しているマリア騎士団では、イスラム教の聖地、メッカのカアバ神殿で大勢のイスラム教徒相手に説法をして大喝采を受ける。

 なんて『あり得ない』現象が起こっている。

 つまりは、この『説法』を、異端とするかどうか、激論が巻き起こったのだ。

「だから聖書に書かれているモノを改変すること自体異端だと言っておろうが!」

「説法は『改変』ではなく『解釈』だ! 貴公も『メッカ説法』を読まれよ!」

「そんな穢らわしいモノ読めるか!」

 本当、戦争さながらの激論だ。

「ハッハッハッ」

「なにわろてんねん」

 猊下に怒られた。解せぬ。


 とりあえずこの件は、異端審問官と神学者をキプロスに送り込んで説法がどのように行われるか調べて。それから説法は異端かどうか決めよう、という話になった。


 その、異端審問官と神学者達だけれど。

「素晴らしいぞこれは!」

 と、キプロスに来て一週間でマリア騎士団に懐柔された。君達チョロ過ぎない?

 まあ、初代騎士団団長マリア秘伝の技術だからね『説法』。あの人、知れば知るほど化け物がかって頭が良くて怖いんだけれど。

 それはともかく。キプロスに来た面々も、やることはやっていて。

『マリア騎士団で行われる説法は非常に高度なため、特別に教育を受けた修道士以外が行うのは、異端に墜ちる可能性が高い』

 との文書をローマ教会に送る。神学者と一部異端審問官がキプロスに残って説法の勉強を行いつつ、ローマ教会は『特別』として、私達マリア騎士団の説法を許した。



 さて、十字軍の話だ。

 第四回十字軍及びロマニア帝国が、アナトリアでの身内の政争に明け暮れ、現地勢力との紛争に熱中して、一向にエルサレム王国への救援に向かわないことに教皇猊下がブチギレていたのは有名な話なので。『やっぱりな』という感があった。

 神聖ローマ帝国内の紛争と、南フランスの異端アルビ派に対する十字軍『アルビジョア十字軍』が落ち着いていたのでやろう、と猊下は考えたのだろうけれど。

 新たな神聖ローマ帝国皇帝フリードリヒ二世は熱心じゃないし、アルビ派との戦いはまだ燻っているしで、今まで十字軍の主力だったフランス・ドイツ諸侯が参加出来そうになかった。

 それでも、エルサレム王国が危ないのは事実なので、第五回十字軍は行われることとなった。

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