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おかあさんと呼んでいいですか  作者: 碧科縁
第2部 第2章

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225 連れ戻すには

 エメラインを見たザナがそっと口をはさんだ


「すごく近く感じるようになった。カレンに吸い寄せられ離れられないと思った。なくてはならない大切な心頼りになった……」

「はい、そうです、そのとおりです、ザナ。ずっと昔からそばにいたような感覚がして」

「大丈夫よ、エメライン。あなたの感性は正しい。わたしとて同じだから」

「えっ? ザナもですか?」


 ザナは首を縦に動かし手は横に伸ばし、こちらを見た。


「こんな()っちゃいころにカレンに感化されたから……。いや、もっと前かしらね。つまり、それ以来ずっとよ」




 ザナとエメラインが何度もうなずき合っているのを見て言う。


「おふたりでいったい何を納得しているのですか?」


 ペトラが満足そうな顔で首を動かした。


「ザナもエムと同様、カルを母親だと思っているという意味でしょ」

「何をばかなことを言っているの、ペトラ。それに、ザナにはちゃんとお母さんが……」

「それはどうでもいいの。残りは四人だね。あとは誰かな。わたしが知っている人では誰も思い浮かばないなあ……」

「どうでもよくないわ、ペト」


 ペトラはかまわず話し続けた。


「ねえ、向こうで、つまりハルマンかイリマーンで、誰かピピッと感じる人に会わなかった? イサベラ以外に。誰かいるんじゃないかと思うけど」

「知らないわよ。わたしを知っているような人には誰にも会ってないから、本当に」

「そう? ぼんやりしていて、カルが気づかなかっただけじゃないの?」

「知りません!」


 強い口調で言ったものの、いったん口を閉じてためらう。向こうで出会った人は大勢いるけれど、あの中に来たる作戦に参加してくれそうな人は……。




 沈黙を破って、メイが合点したようにしみじみとした声を出した。


「そうか……お姉ちゃんを助けたのも、彼女がシルにとって必要な人だったからなのね?」

「それはどうかしら? あれはニアの独断で決行したことだとシアは言っていたけれど。つまり、幻精は人の生死に関わることが禁じられているにも関わらず、ニアはあの時、即座に行動を起こした。そうじゃないととても間に合わなかった……」


 ザナが言葉を引き取った。


「そうね。つまり、ニアはシルの規範に反したけど、最後にはシルが必要とするだろうと判断した。それはミアにとってはとても幸運だった。……というより、カレンが助けたと言うべきだろうね」


 口を開く間もなく、ペトラがまた話を戻した。


「あとの四人が判明しないと困るよね。レイの長はヒントをくれなかったの?」


 首を横に振る。


「いいえ、全然」

「そんなので大丈夫なの? それとも、これからその人たちに出会うのかな? いくらシルでも未来のことを知っているはずはないよね……」

「わたしには心当たりがない。わたしが知らないだけで、その人たちはどこかにいるのかもしれない。すでに会ったことのある人かもしれない……」


 ザナはケタリシャだけれどエメラインは違う。六人とつながる。六人とはどういう意味なのだろう。


「まあ、いいや。そう言われたのだったら、その、レイの長は知っているという意味でしょ? そうじゃないとそういう話にはならないよね。つまり、ちゃんと道は決まっているはず」


 ペトラはまだ頭を突き合わせている幻精たちを見た。


「前もって教えてはくれそうもないな……」

「たぶんね。わたしたちは自分で答えを見つけ解決しなければならない。それはいつものことよ」



***



「ところで、ケイトと会ったときの話は?」

「そうでした、ザナ。わたしはケイトたちの意識を元の体に戻す方法を探るためにケイトに会いに行ったのよ。まあ、シルの意図は違うところにあったと思うけれど」


 メイが遠慮深げに漏らした。


「お母さんたちの意識を戻せる可能性はあるの?」

「それがね、ケイトったら、カムランに残っている自分たちを消してほしいと言うのよ。それって、わたしにケイトたちを殺せと命じていることよね。冗談じゃないわ」

「前にも聞いたけど、どうして消してと言うのさ?」

「それは、ケイトたちが原初にあるトランサーの核というか意識の塊と一体化しているので、体を消滅させればその意識は核を道連れに消えるはずだと言うのよ」

「ああ、なるほど」

「なるほどじゃないわ、ペトラ。わたしは人を殺すなんて、それも、姉と親を(あや)めるなんてできるわけないじゃない」




「それじゃあ、どうするのさ? 何もしないの?」

「違うわ。意識のつながりを断てるというのは、反対に、意識を体に引き戻す方法もあるかもしれないという意味でしょ」

「そうなの?」

「わからない。だけど、やってみるしかないじゃない。ね?」

「そうだね。そうなれば、メイもお母さんに再会できる」

「うん、そうなるといいけど。いや、そうなるように頑張る」

「あのね、カル。あんまり頑張りすぎないほうがいいと思う」

「賛成!」


 異口同音の声を聞き思わず身を引く。そんなに信用ないかなあ、わたしは。

 話も尽きるとザナは用事があると言い残して出ていき、メイはワゴンを押して部屋をあとにした。



***



「ねえ、カル。カルが目覚めたので、わたしたちはセインに行かなければならないんだけど」

「セインに? あっ、もしかしてお仕事?」

「そう、カルがもとに戻るまで待ってもらったんだけど」

「いろいろごめんね、忙しいときに。それでいつ出発するの?」

「たぶん、明日の朝早くになると思う」

「わたしも行くわ。アリシアさんに確かめたいこともあるし」

「大丈夫かな」

「もう一晩休めばへっちゃらよ」


 疑いの目を向けるペトラの顔を見て付け加える。


「たくさん食事もしたし、これまでだって目覚めたあとは何ともなかったでしょ?」

「わかった。じゃあ、四人とも乗せてもらおう」




「みんな行くの?」

「エムとわたしはアリーに来いと言われているし、セインにはメイのお父さんがいるから、メイも合流して会議に参加したほうがいいとなったの」

「わかったわ。あっ、そうすると船はどうしよう。あれで行く?」

「いいや。さっきカティアに聞いたんだけど、誰かがレタニカンまで運んでくれるって。カルはセインからあれに乗っていけばいいんじゃないかな」

「ああ、それはよかった。とても今あれをまともに動かせそうな気がしないわ。そうだ、アレックスにも挨拶しておかないと……」

「アレックスはいま留守。ザナの話だと今朝国に戻ったらしいよ」


 インペカールに? 混成軍の今後に関わることかしら。


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