ボツ小説「異世界転生したら人生軽すぎて無双③」
3話「なんか魔王の幹部きた!」
幼女アカリと貧乏騎士スールと一緒のエイゾーが怪しかったのか、二人目の騎士が「怪しいヤツめ!」と食って掛かってきた。
「このスールが監視している。心配しなくてもいい」
「あ! あんたクビになったスールじゃない!」
「しっ!! 黙っててっ!!」
慌てる無職スールに、オレとアカリはジト目で呆れる。
要するに王国騎士をやってたけど、なんかやらかしてクビになったそう。
騎士ぶってパトロールしてエイゾーに絡んだわけだ。
ぼいんぼいん、大きい胸を揺らしてスールは洋服姿でドアを開けてくる。
「朝飯できたぞ────」
「ありがとう」
一緒に暮らす事になって三人家族みたいになってきた。
それぞれ三人は個別の部屋を受け持ち、暮らす事になった。スールとアカリは一緒に寝たがっていたが無理言って断った。
こうして冷静にしてるが、これでも一介の男。女性の体に興味がない訳じゃない。
むしろロリコンで、アカリと一緒に寝たいくらいだ。
だが、前世では法に触れるし、何よりもアカリの為にならない。
スールほどじゃないが、勘違いされて道を外れるのも教育上よろしくない。それに幼い故の好意で好きになってるだけだから、大きくなっていけば考えも変わる。好きな人も変わる。
だから今はこれでいい。
アカリが寝る前に絵本を読んであげる程度の付き合いはしていた。
ぐっすり安心して寝てくれるだけでほっこりするよ。
「おはようでございますっ!」
元気いっぱいでハキハキ挨拶してくる。
前世にはナカッタナー。いつも淡白で「おはよー」したかすら覚えてないほどの人事の付き合い。つまらない男ってよく言われてたがな。
美味しい朝飯を作れるのはアカリ一人のみ。オレも普通程度に作れるが、異世界だと作れるものは限られてくる。
だってカレーもスパゲティもラーメンもないんだもん。
味噌汁もだし作れないから、市販のものでやってた。異世界にはそんなものはない。
できるのはせいぜい炒め物ぐらいだろう。
「さて、ここの町は平和だしのんびり暮らせるしな」
「で、ございますか?」
「貴様、なにを言っている?」
スールは厳しい顔を向ける。王国の女騎士だったが、今ではただの無職だ。
「魔王が徐々に勢力を広げている。四天王もあちこち侵略を繰り返して、多くの人が死んでいる」
「そんなのがあったのか?」
「ほえー」
後付けみたいな感じだが、ここは侵略とは遠い所だったのかもしれない。女神様はそこまで考えてスタート地点を配置してくれたのだろうか?
「魔王の名はオソロシゾ! 誰もその姿を見た事はない。何人かの勇者が旅立ったが帰ってこない」
あ、オレ勇者なんだっけ。ありきたりすぎて、ギルドカードに記された職業気にしてなかった。
スールは戦士。アカリは魔法使い。
本当はアカリは無職だったのだが、クエスト受ける際に登録を済ませておいた。まだ初期の魔法を使わせていないが、幼いから当分お預け。
大きくなって自立しても大丈夫なように、前もって準備は済ませた方がいいとの
個人的な考えだった。
女神様はチートスキルを与えた後「魔王倒してくれるとありがたいです」とか言ってた。
強制的な言い方ではなかったからのんびりやってた。
「四天王は?」
「名前は聞いた事ある。豪炎のヤキツ。爆炎のエクプロー。熱血のバーニグ。疾風のウィンディ」
「ものすごく偏った四天王だな」
「でございます」
頰に汗を垂らすスール。
「火力重視で世界征服してるから、誰も手に負えないらしい」
「脳筋だなぁ」
「でございます」
魔王の属性はともかく。水や氷属性育てれば四天王壊滅できそうだな。
ドガアァァン!
言ってるそばから爆音響き、地響きが足元に伝う。まさか来たのか?
「グワッハハハ────!!!」
なんかデカいガーゴイルっぽい悪魔が空を飛んでいた。バサバサッ!
ざわめく人々。町のあちこちで火が燃え上がっている。
「グワハハ、我は四天王が一人ヤキツだ!! 焼き尽くしてやるぜぇ!!」
そう言うと、口からボーボー火炎放射して一軒の家を炎塗れにする。
うわーきゃー逃げ惑う人々。
冒険者も弓矢で応戦するが、中々当たらない。当たっても微々たるもの。
うわーきゃー! ダメだー! 逃げろー!
ダメだ笑う……。テンプレ過ぎてネタしかならない。
不謹慎だからポーカーフェイスで通してるがな。さて。
ひょいと、大岩を持ち上げる。片手でポンポン跳ねる。
「まさか……」
「でございます」
そのまさかだよ。小石を投げる感覚で、大岩を投げた。超高速ですっ飛んでガーゴイルに当たった。グシャッと嫌な音が耳に届いたが、まぁそこはそれ。なおもすっ飛ぶ大岩は町を出て行って山に激突。
ドゴオオオオオン!!
なんか爆裂した。別に付加魔法した訳じゃないんだがな。多分あっちの体内の器官が誘爆したんだろう。あるいは火山だったとか。
あの後も冒険者たちは警戒を怠らず構えていたが、動きもなにもないので解散して行った。こちらも平常通りクエストこなして数十万稼いだ。
雷鳴轟く雷雲の元、なんか黒い城が建っている。魔王城だ。
仰々しい王座の間。血のように赤い絨毯。黒い壁と骨を彷彿させる柱。青い炎が灯るシャンデリア。
「なんだと!?」
魔王は怪訝に目を細めた。
太った体格で顔はトリケラプスのような大きなツノを備えた大きな顔面だった。太い手足は筋肉隆々で丸太並み。
「魔王オソロシゾ様! 本当に四天王が一人豪炎のヤキツがやられたようです」
「フフフ……。ヤツは四天王の中でも最強。……よし、お前ら三人行け!」
「えっ?」
後方で控えていた、漆黒のフードをかぶった三人は輝く両眼を丸くした。
魔王がひと睨みすると三人はビクッと身を竦ませた。
「だ、誰かは知らんが三人でなら負けねーぞ!!!」
「ああ! バーニング! ごおおおおおお!!」
「ヒュンヒューン、ヒュンヒューン! いっくよー!」
爆炎のエクプロー、熱血のバーニグ、疾風のウィンディは竜巻に包まれてビュオオオオオオっと空を駆けていく。
「ぎえええええあああああああ!!!」
「ちょっ、ゆっくり旅立とうよ? ってかあっちヤバくない? なんか消えかかってるんですけどォォォ?」
「風を操って移動できるのウチだからねー」
「ギエエエエエエエエエエエ!!!」ボシュン、一人はフードだけになった。
「ん? なんだ?」
フードをかぶった怪しげな二人が裾を風で揺らして現れていた。見るからに威圧が感じられる。
「二人誰でございます?」
「ま、まさか……四天王!?」
なんかスールガクガク震えてる。オバケでも見たかのように顔面真っ青だ。
「ヒュンヒュンヒュン、なんか爆炎のエクプロー逃げてるみたいだけどさ」
「お前が風で炎だけの身体こそぎ落としてったんだよ! 糞が!」
「あれ? そうだったっけ?」
「糞ォォォォォ!!! どうすんだよォォォォォ!」
なんか漫才してるように言い合ってるな。
「じゃあ、後はよろしく。ワタシ退職するんで」ヒュン!
一人渦を巻いて掻き消えた。一人取り残されて呆然。なんかこっち見てくる。
「そこの丸太男どう思う?」
「え? オレ?」
木一本抱えてるからそう見えたのかな?
「隠居して静かに暮らせばいいんじゃないかな?」
「あ、そうするか。あそこブラックだったし」
「そうなのか?」
黒いフードの男は頷く。
「だって魔王様やる気ねぇんだよ! 俺達四天王も最初は火、雷、大地、氷と精鋭がいたんだが自主退職しやがって、三軍であった俺達が四天王やらなければならなくなってたんだ」
こいつら四天王だったのか……。スールビビってた訳だ。
「二人って事は、残り殺されたのか?」
「爆炎のエクプローは疾風のウィンディがな! もう一人は豪炎のヤキツ。ガーゴイルみたいな奴。岩に潰されて爆死したらしい」
「あ、空飛んでたアイツか。四天王……そんな事言っていたような……?」
「遠い昔のように忘れるな────!!」
スールが指差してくる。すっかり忘れてた。ごめ。
「き、貴様がヤキツを殺したのか!!? 仇だ────!!」
フードを剥ぎ取ると、細身の暗黒騎士が現れた。カブトの下の顔面はドングリっぽい細長くて鼻がでっぱり。
まるで人間としか思えない風貌だが、全身から紫に燃え盛る炎が溢れ出した。
大地を揺るがすほど威圧感が膨れた。ズズズ……。
黙っときゃよかったな。
「怒涛の大瀑布ウォータースプラッシュ・カスケードでございます!!」
火山のように膨大な水流が噴き上げて、バーニグは粉々に吹き飛んだ。ドドドドドドドドド!!
呆然するオレとスール。
テヘペロするアカリ。実は彼女もチート持ちの異世界転生者だった。
「町中でやったら水没するレベルじゃないか……」




