ボツ小説「異世界転生したら人生軽すぎて無双②」
2話「初無双でオレTUEEEEEEE」
狩石栄蔵改めエイゾーは、重量無効というユニークスキルを得て異世界転生したのだった。
アカリと一緒にギルドから受けた依頼をこなす事になった。
こうして国を出て、該当する地域に踏み入れた。
「へっへっへ。命が惜しかったら全て置いていくんだな」
「気が変わらない内にしたほうがいいぜ?」
「そこの幼女も高く売れそうだな」
「じゃあ、その女も置いていけ!」
「まぁ、アンタも生かして帰すかは俺たちの気分次第だ。はっはっは」
「弱いのが悪いんだよダボ! ヒャハハハ」
下卑た笑いを浮かべる盗賊団が大勢でエイゾーとアカリに絡んでいた。
しかしエイゾーは、そこらへんに生えていた大きな木をまるごと引き抜いた。ベキベキベキッ!
「な、なに!?」
「マジかよ!!!」
「おいおいおいおい!!」
「いいから、やっちまえー!! 重くてどうにもならんだろう!?」
盗賊団は青ざめるも、パワハラボスに怒鳴られてエイゾーへ襲いかかる。エイゾーは大きな木を軽々とぶん回す。
そんな超重量の太い幹が盗賊を薙ぎ払っていく。
「うわああああああ!!!」
瑞々しい青空へ盗賊たちが宙を舞って、鎧の破片や剣などが飛び散る。
オレの周囲で死屍累々と盗賊たちが横たわっている。
そばでアカリと言う幼女が「ほへー」と感嘆。
「て、てめぇっ!! どんなスキルだ!? この怪力野郎!」
後方で尻餅ついている盗賊のボスが叫ぶ。ビビって尻込みしている。
「ま、軽い男なんで」
引っこ抜いた木一本を肩に乗せている、絵面としてはカッコ悪いけど、しゃーない。
当面の生活費の為に節約したいからだ。
本当は武器防具揃えて行きたいが、幼女抱えたせいで二人分の生活費が必要になった。数万円ぽっちじゃ、すぐ底をつきそうだ。
まぁ武器だけでも、と思ったけど木を振り回してた方がリーチも威力もあるしお手軽だ。
木なんてそこら中に生えているからな。
「きさま!! いつかぶっ殺してやる!! 覚えていろー!!!」
「だが断る」
逃げ出した盗賊にへ木を思いっきり投げてグシャッと潰した。血飛沫が飛び散る。
ああいうヤツをみすみす逃しても仕方ない。
パワハラには何かと私怨があるからね。そこは容赦なく潰しとこう。
その後で、散らばった剣やナイフをひょいひょい回収。
「これを持ってて。護衛になるだろう」
中で一番良さそうなナイフをアカリに手渡す。
町に帰った後、ギルドに依頼されたクエストの結果を報告。ビックリされたが、当面の報酬が貰えた。それから武器屋辺りに、回収した武器を売ってちょっとした額を頂いた。
「これで十万円……。ちょっとは安心できるな」
「ほえー、凄いでございますっ!」
「ちょっと待て────!!」
甲高い声に振り向くと、銀の甲冑をきた女騎士。緑の髪でポニーテール。なにやら物々しい雰囲気だ。ちょっと面倒な予感……。
「その女の子連れて怪しい奴め────ッ!!!」
ビシッと指差して、ツカツカ寄ってくる。
アカリは怯えて、こっちの背後に隠れる。
「その怪しい奴に隠れましたが?」
「やかましい! なぜ連れてる? 不審だぞ貴様!!」
「じゃあ代わりに世話してくれるか?」
「は?」
女騎士は訝しげだ。
「アカリちゃん。早々に親を亡くした。これからどうすればいいのか分からない。今はオレが預かってるが、引き受けてくれるなら喜んで預けるよ」
「いや────!! だめ────!!!」
がしっと背中にしがみつくアカリ。
「抱きつくな──────!!! このロリコン野郎が────!!」
いや逆だ! 抱きつかれてるのになぜぇ!?
「こんな怖い人とは嫌でございますっ!!」
「ガ────ン!!」
いや、口で言うなよ。ってかそれほどショックか?
白目で茫然自失する女騎士。
「良かったら、アカリの店にきてくれるか?」
静かな店。ドアに「準備中」のプレートをぶら下げている。
女騎士とオレとアカリはテーブルについていた。
「エイゾー……。訳は分かった。そのアカリちゃんを助けた事は信じよう」
美人だが、ちょっと頑固そうだ。こう言う人種とはウマが合わない。前世ではこうした人とよくケンカして気まずくなる事が多かった。
こっちの言葉足らずも原因だが、向こうの勘違いもある。
「だが、このまま二人きりにする訳にはいかない。このスール・カンチガが見張ろう」
「一緒に暮らすってことか?」
「勘違いするな! 不逞な事をやらかさぬよう、寝る時も食べる時もずっと監視をするのだ!」
「そんな心配は無用だろ。オレにそんな気があるなら、昨日の晩にヤッてる」
「それもそうか。いや、そうじゃなくって!」
ドン、テーブルを拳で叩く。
「このスールが、貴様を監視して起きるであろう悪事を食い止める!!」
「じゃあ昼飯なんで、なんか作ってくれない?」
「でございます!」
スールは「う!」と気後れし始める。目を泳がせる。
「作れないのか?」
「ち……違う! たぶん」
そっぽ向いて目を合わせようとしない。
「どっか食べていけば? 三人分だと食費かさむ」
「でございます!」
「ぐっ! し、仕方ないな」
テーブルに千円分のコインを転がす。チャリン!
「ぜ、全財産だ! 持ってけ!」
「おい!」
「うわ────────ッ!!!!」
木一本振り回してゴブリン集団を空に散らす。何匹かでっかいゴブリンって言うかオーガも混ざってたけど一緒に薙ぎ倒してあげた。
重量無効ってだけで、木をブンブン振り回す無双が出来るとは思わなかった。
「せめて槍か大剣持て────!!」
指差す女騎士。ナイフしか持ってない騎士様に言われたくないよ。
と言うのも見かけだけの騎士様。なにを思ったのか、村人から冒険者になろうと高額な武器防具揃えたら財産が尽きかけた。ついでに買った大剣が重くてナイフしか持てない。
クエストも、鎧が重くて失敗してばっかり。
仲間も募ってたが、役立たずと分かると遠慮されてしまった。つまり早い話お荷物。こいつもこれからどうすればいいのか分からない系女性。
こんなんばっかだな。
「お前のせいで余計にクエストこなさないといけなくなった。せめて回収したアイテム持ってくれ」
「な、なんで私が荷物持ちなんだ……」ブツブツ。
「こっちで持ってもいいんだがな。お荷物でも、見かけは騎士様。立ってるだけでもアカリちゃんのお守りになるし」
「お、お荷物って言うな……」
「次クエストやる。今日中に終わらせた方が、生活が楽になる」
「え? お、お化け退治!?」
「でございます」
アカリよ。それ言ってばっかだな。
スールはブルブル震えている。お化けが苦手だからだろうか?
「あの廃墟だ。幽霊系モンスターが溢れてて周辺に被害が出てる。だから割と高額クエストだ」
「お前! 浄化系魔法使えるのか?」
「でございます」
「ギエエエエエエエエッ」
風船のような白いオバケの集団が散り散りと吹っ飛ばされていく。
木一本振り回すだけで成仏。なんかこれスカッとするな。
「な、なんで成仏できるんだ────!!?」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「聞いてないぞ────!!」
そりゃそうだ。重量無効って言うチートは言ったが、なにもチートは一つだけとは言ってなかったな。
そう他にもあったんだよ。
耐性無効ってチートって奴がな。
あらゆる相手の属性相性や耐性を無視してダメージ与えられるスキル。
幽霊系のような物理攻撃を無効化にするモンスターも例外ではない。霊体が耐性なのかどうかはさておき、効く辺り有効なようだ。
女神様いわく、重量無効とか地味過ぎるしオマケでもう一つって言ってたからな。
効かない敵いると面倒だからこれにした。
胸、腰、手足、額を覆う軽めのプレート装備一式でキラキラ包むスール。腰には片手剣を差している。
目を輝かせて感嘆している。
それに思ったよりスタイルいいな。鎧で隠れてて分からなかったが、胸が大きいのも分かった。顔立ちもいいし、彼氏いないのが不思議なくらいだ。
いないって言ってたが、その残念な性格のせいかもしれない。言わないが。
「これなら身相応だろう。今回の冒険でレベルアップもしたし、この辺りのモンスターなら問題ないだろう」
「だが監視は怠らないからな」
「あのさ、その気になれば何でもないからな? つかオレに襲われたらどうするんだ?」
「う」
今まで失念してたようで気後れするスール。
「今回のクエストに参加してくれたから報酬の分け前も払っている。一カ月ぐらい不自由にならないだろう。監視などもう必要ない、新しく仲間を募って冒険者続けるなり、普通の日常に戻るなり好きにしろ」
「だが、お前らを二人きりに────」
「オレはアカリが一人でも何とかなるようになるまで、保護者代わりになる」
アカリの頭を撫でる。懐くネコのようにこきげんだ。
「……止むを得ん。仲間になろう」
「おい待て!」
「仲間を募っても誰も来ないだろうから、このスールが一緒になってやる」
「おい話聞けよ! おい!」
「むしろ一緒に寝てもいい」
頬を赤らめさせて、もじもじチラッと流し目。
……前世ではこんな事ナカッタナー。
「貴様待て────!! 女二人で怪しい奴め!!」
今度は二人目の女騎士が指差してきた。流行ってるの? これ?




