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スリーピングビューティー “剣術に全てを捧げたこの俺のスキルが魔法使いだと??”  作者: 鰺屋華袋


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31/31

ep31. どうにもできねぇのか? ……④

「気遣いは無用だ」


 私の返答に両手を開いて肩をすくめた彼女は私からモニターへと視線を戻した。


「相変わらず無愛想な男だな。そんなに彼の動向が気になるのかい?」


 宙にに浮かぶ複数のヴーチャルコンソールを高速でタイピングする姿を見た者が居れば、とても彼女の仕事が“女神”だなど思わないだろう。


「当然だろう。こちらに()()()システムを立ち上げてから……彼は、君が我々への邂逅を促した初めての人材なんだからな。それに……」


 低位活動状態(ローアクティベート)睡眠(スリープ)を保ち、VRアバターで知識や身体感覚だけは年齢に準じた脳機能を維持しているが……フローラの魂が帰るべき肉体は刻一刻とその生命の残り火を消しつつある。


 彼女の生命を蝕む七つの疾患は、そのどれもが致命的リスクを保持しているが……生命の灯火は七つのうちのたった一つの疾患が手遅れになるだけで容易に吹き消されてしまうのだ。


「……ふむ。言いたい事は分かるよ。君が娘を救う方法を求めこちらへ()()決意をした時、私にその手助けを求めた事を忘れてはいないさ。もっとも……私が彼女の病を癒す事さえ出来ればその様な真似は不要だったのだがね。まったく……君の成した功績にその程度の報酬も用意出来ないとは……仮にも()を名乗る者が聞いて呆れるな」


 自嘲のこもる言葉に私は首を横に振ることで否を返した。そもそも私は顔も知らない有象無象や、あやふやな()()を目当てに()()()で戦ったのではない。ただ見知らぬ土地で呆然としていた私と出会い生きる意味を与えてくれた……たった一人の為に戦ったのだ。


「娘が“特異点”とも言うべき存在である事は弁えているよ。君が()()()()()()()人間に対して大きな影響を与える事が出来ないという事もな」


 だからこそ私は……神話の時代を過ぎ、魔力は失せ、管理権限が半ば放棄された()()()に娘を連れて戻る事を決意したのだ。


 そして彼女は娘を助けるシステムの構築に全力で協力してくれた。これ以上の要求は強欲というものだろう。


「……君は変わらないな。さあ……時間も無い事だ。先に君が知りたい事に答えよう」


 私が彼女に会いに来た理由。それは数日前に出会った彼の事を知るためだ。


 彼が並々ならない()()である事はシステムがスキップスターターと判断した事が証明している。が……


「君は……どうして彼を()()()のかね?」


 ほんの僅かな邂逅ではあったが確かに彼は常人とは違った。しかし……


「それは勿論『彼』が君の……いや私達の求める結果に大いに寄与するだろう()()だと判断したからだよ」


「彼の技能がず抜けている事は僅かながら私自身も目撃している。その後の彼の行動も聞き及んでいる。だが……」


 彼が私と出会う事が決まったのはそういう技能を持っていると判明する()……彼が“アリス・ドア”を装着し“登録”してログインする間のほんの僅かな時間なのだ。勿論、彼自身の性質は好ましく思うし援助することに否は無いが……


 娘の残り時間は刻一刻と減っている。


 そして……期待を大きく持てば持つほどその期待が外れた時のダメージは大きい。現状で彼に過度の希望を見出す事には躊躇があって当然だろう。


「君の疑問は分かるよ。そうだね……ちょうど今、彼がモンスターと戦闘する様だ。その様子を見ながら理由を説明しよう」


 そう言った彼女は目の前に浮かぶ七つのモニターのうちの一つに手をかざした。モニターは私と彼女から少し離れた空間で()()()すると鬱蒼とした森林を俯瞰する映像を映し出した。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


「……アンタ誰だ?」


 俺と二人の仲間は突如現れた人物から即座に距離を取った。


「ただのプレイヤーさ。資金稼ぎしてたらカモ……んっん……モンスターを引き連れたあんたらが近寄って来たんでな。()()掻っ攫って文句言われるのも面倒だから声を掛けたんだ」


 飄々とした声は確かに男……それもかなり若い事を感じさせる。もっともアバター設定と同じくそれで実年齢やベテランかは判断出来ないが。


「……なら安心していい。アレが俺達を狙っている事は間違い無いが、奴らの()()は通常のフィールドモンスターで間違いねぇ。つまり誰が倒そうとご自由に……ってとこだな。もっともあんたがデスっても俺達は責任なんて取れねぇぜ?」


 俺は現状を説明して仲間と目を合わせる。二人は俺の言葉に異論が無いと示す様に小さく頷いた。


「そうか……ありがとよ」


「礼を言われる様な事じゃ……えっ?」


 仲間の同意を確認して男へと視線を戻した時……そこには誰も居なかった。


 俺は瞬間的に仲間へと視線を戻して……その仲間も目を見開いているのを見て自分が体験した事が幻覚の類では無いと理解した。


「何だったんだ……今のは??」


「……分からない。俺の“鑑別”では間違いなく〘プレイヤー〙だったが……」


 相棒は回復・補助系魔法のスキル構成を活かして今の男を調べていたらしい。G.O.Dには特に理由も無くP K(プレイヤーキル)を仕掛けてくる奴も居るので、初対面でカルマ値*¹をチェックするのは普通の事だ。


「……が? 何よ? 何かおかしな情報でも見えたの?」


 “鑑別”はそれほど難しいスキルじゃないがスキルの練度によって見える情報が変わる。


 初心者は本当に表層的な情報しか見えない。が、第一大陸のメインクエスト“城郭都市ジャクシオンの奪還”攻略を目標に掲げるクラン〘最終職従事軍(ブラッククルセイダー)〙のメンバーには「神眼のパレランド」と呼ばれるプレイヤーが居る。


 このプレイヤーは、嘘か誠かジャクシオンを封鎖している「旅団」のボスである大悪魔「双面のザルバタナス」のステータスを看破したと言われている。


 ザルバタナスどころか部下の悪魔にすら接敵できる者が殆ど居ないので情報の真偽は未だに分からないが、少なくとも「ザルバタナスと10人の悪魔」の詳細情報の出処(ソース)が〘最終職従事軍(ブラッククルセイダー)〙だという事だけは間違いない。


 まぁクランの募集ページでデカデカと宣伝してるからなぁ……なんてどうでもいいことを思い出していたら正式なメンバーである相棒が変な事を言い出した。

 

「そうじゃない。正直言えば見えたステータスも大した事なかったから止めるか迷ったくらいだ。ただ……ステータスは大した事なかったのに……」


「? 何よ? なんか変なスキルでも生えてたの?」


 言い淀む相棒に弓狩人が問いかけた。


「いや、スキルまでは見えなかった。ただ……俺の見間違いじゃなければモンスター討伐数が3000を超えてた」


 「は? そんな数のモンスター狩って低ステータスのはずないじゃん!」 


 弓狩人が驚いてその内容を即座に否定する。それも無理は無いだろう……討伐数3000オーバーとか相当ベテランのプレイヤーじゃなければ無理な数字だ。逆に言えばそれだけのベテランならステータスが低いはずが無い。


「……間違いないのかよ?」


「さっきのやつが何か特殊な隠蔽スキルの保持者でなければな」


 俺は少し考えた。G.O.Dではモンスターの討伐数は所持コイン=強さに大きく関係している。先行プレイヤーに追いつく為には最重要課題だと言ってもいい。


 さっきの奴が初心者なのに大量のモンスターを討伐しているというのが本当なら……これはチャンスかも知れない。


 ゆっくり迷っている暇はない。だが……


 俺は意を決っして二人に告げた。


「……二人はこのまま離脱してくれ。俺はさっきの奴を追いかけてみる」

*1 カルマ値……公式には発表されていないが「プレイヤー間の戦闘」で溜まると言われている数値。簡単に言うと“どれだけ恨まれているか?”を視覚化したものだと認識されている。モンスターとの遭遇やイベントの発生率に影響するのでは……と考察する者も居る。

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