表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

少年シィルはオトナの味方

お姉ちゃんの、言葉責め。

 広大な森の中に先人がもたらした獣道が、やがて村道となった上をポーチを片手に目的地へと一人歩く少年がその終点である村を目にしたのは、大体日が真上に来た頃であった。虫刺されを防ぐため、長い袖の丈夫な服を上下に纏い、頬から流れる汗を布でぬぐいながら後一息でたどりつくであろう村へと足を向けた。中々にこのあたりでは大きめの村であり、それなりの人数も住んでいるこの村は、特産のキノコと獣の肉が少年の拠点である町において大変な人気を持っている。少し距離のあるこの村まで、少年シィルが訪れるのも町に届く生活必需品を村に届けるついでにこの特産品を仕入れるためでもあった。

 村の門の近くに、行商人のために用意された切り株を利用した簡易な椅子の近くまで寄り、シィルは座り込む。その際、椅子と尻の間の位置を気にするのはいつものことだった。シィルの尻からは黒々として、先が銛の返しのような形状をしているとても小さな、それこそ彼の手首から肘まで位の長さの尻尾が生えていた。




 シィルの生まれは森の中の小さな村であり、とても優しく力強い豚人オークの父と、ある日村にやってきた絶世の美女、サキュバスの間に生まれた第四子であった。夫婦の仲は子供であるシィルと上の三姉妹が入ることのできぬほど親密であり、夜な夜なその愛情が寝室より漏れ出てシィル達の耳にも届いていたものであった。シィル達はみな母親に似て、サキュバスの容姿を持っていた。

 豚人の父はその村で唯一の行商人であり、村の生命線であった。下働きで修行中の近所の兄貴分と一緒に、シィルは父より行商の知識を教わっていた。どちらも物覚えが良く、特にシィルには才能があったのか、一人前になったのは兄貴分と同じ時期で、その時の兄貴分はとても複雑な表情を浮かべていたことをシィルは覚えていた。

 ちょうど、二人が一人前になった頃、父が急逝してしまった。死因は、疲労困憊・または心臓の病と村の薬師でもあった母は推察した。母とシィル達は間違いなく確信があった。父親は腹上死だった。朝、母の横で父が眠るようにして死んでいたのだ。

 母と四人の子供達は大変悲しんだ、それに加え、村の住人の奇異の視線も日に日に強くなっていった。母と三姉妹に詰め寄る輩が急激に増えたのだ。たとえサキュバスである母にハーフ・サキュバスである三姉妹にもそれは非常に耐えがたいものであり、その日を期に一家は町へと移り住むことにした。幸いにして、兄貴分は一人前になっており、村の生命線が切れることはなく、薬は村の長老も扱うことができていたので、すんなりと移り住むことができた。貯金をほぼすべて使い、小さな家を買い、五人で薬屋を経営し、唯一の男で(といってもサキュバスである母と三姉妹はみな力が一般人より強いのだが)あるシィルが行商をすることで一家の家計はそこそこに潤っていた。

 



 しばらく椅子に腰かけ、息を整えてからシィルは行商の準備を始めた。腰にあるポーチに手を突っ込み、中から母と姉妹お手製の薬や、近所の肉屋のお兄さんから格安で仕入れた家畜の肉、八百屋のお姉さんと交渉の末仕入れた新鮮な野菜、魚屋のおばあちゃんとお話して仕入れたとれたての魚を次々と出していく。シィルのポーチは母お手製のマジックポーチで、中には見た目から想像もできないほどの量が入るために非常に貴重なものだった。しかもこれはシィルのために作られており、シィルでないと取り出すことができなかった。

 一通りの種類を並べ終わった後、村の人に到着を伝える……はずであったが、シィルの場合はその前に人が集まって来る。以前聞いた話では、マジックポーチを持つシィルの売る素材は鮮度がよく、人気が高いらしい。

「シィルちゃん、この魚はいくら?」

「シィル君、今日捕れた大熊の肉を持ってきたよ」

「シィル〜、おいしいおやつちょうだーい!!」

 シィルの周りに老若男女問わず、顔なじみになった村の面々が一斉に話しかけてくる、シィルも行商人としての訓練も積んでいるため、その集団に冷静かつ的確に対応する。

「メアおばさん、それは銅貨二枚だよ! ゴンズさん、その肉いただきます! 代わりにいろいろ野菜を渡しますね。ニールには、そうだなぁ、今日は感想果物を持ってきたよ!! 一袋銅貨一枚だよ」

 小さな体を精いっぱい動かしてシィルはてきぱきと商品を売りさばいていく。村の人々が皆しゃがんでシィルに話しかけなければ届かない位シィルは小さく、育ち盛りの幼いニールにも身長は負けている。それをシィルはいつも気にしていた。




 日の光が沈む頃、鞄の中の必需品がすべて売れ、町で売るための特産品を村の人から仕入れたシィルは、もう一つやる事を始めようとしていた。シィルは週に一、二度この村に訪れる時は、村長の村で食事をごちそうになっている(もちろん村長のためにおすそわけをシィルは忘れない)。シィルが来ると村では夕食時が過ぎた頃に村人が集会所に集まる。それも、大人になった女性だけ。シィルは一足先に集会所へ行き、商品を並べていく。並べる品々を見るたびに、シィルは未だに慣れないそれらの商品を見てため息をつく。

 やがて、時間になるとぞろぞろと村の女性が集会所へ入って来る。既婚・未婚の女性問わずに入ってきた彼女達はシィルの目の前に座り、独身の女性は目をギラギラさせ、既婚の女性はその飢えた目とシィルを見てニヤリと笑みを浮かべている。集まったのを確認した後、シィルが全員に向かって話す。

「そっ、それでは、いつもの、………な商品をお売り致します」

 顔を赤らめて伏せるシィルに若い娘が大きく尋ねる?

「シィール君! どんな商品なのか聞こえないよぉ?」

 好色な笑みを浮かべて尋ねる村娘。さらに顔を赤くしたシィルはもう一度口に出す。

「ぇ、えっちな、商品、です」

「えーーーーーーー!?」と商品を知っているはずの女性陣から驚いたような声が一斉に出る。シィルは恥ずかしさで頭が茹で上がるようだった。

 シィルが夜に売るもの、それは文字通り夜のお供であった。怪しげな薬、怪しげな道具、すべてサキュバスであるシィル以外の4人による作品である。薬を売るついでに母が暇をつぶしながら作っていたもので、気がつくと町でもかなりの需要が出来てしまっていた。次第に娘たちも作るようになり、いつも最後はシィルが実験台にされていた。効果を教えられながら試験されるシィルにとってはたまったものではなかった。女性のみが集まるのは、これらの商品を男が悪用しないようにするためであり、男の所持が発覚すると手酷いお仕置きが待っているらしい。

「ね〜ぇ、シィルちゃん、これはなぁにー?」

 一人の娘が小瓶の中身を訪ねる。

「それは、媚薬……です。飲むと、えっちな気持ちに、なりますぅ……」

 シィルの一番の悩みはこの効果の説明であった。妙齢の男女に大人の道具の用途を教える、それは一重に淫猥な単語を用いねば説明ができないという事であった。それが苦手なシィルはいつも赤面しつつ説明するのであったが、淑女にはそれが少年を苛めているようでひどく気持ちがよいものであったらしい。それこそ、週に一、二度の行商にほぼ全員の村娘が集まるほどには。

「ねぇ、シィルおにぃ、これはどう使うの?」

 そう言って尋ねる小さな娘は、シィルの記憶ではまだ子供であったはずだった。それがここにきているという事は、つまり。

「もう大人だから来てもいいって言われたの。で、シィルおにぃ、これなーに?」

 大人になった娘から再度尋ねられ、やはり恥ずかしがりながら答えるシィル。

「それは、その先の魔力貯めが空になるまで振動する、ぼっ、棒……だよ」

「ふぅん、どうやって使うのぉ?」

 そう言って己の股の間を通して床に棒を立てて尋ねる娘。わかって聞いてるのかな、とシィルは怪しむが、答えないわけにはいかない。

「今ちょうど、棒のある、その付け根……」

「ちゃんと言ってくれないと〜わかんないよ?」

 そう言いながら太ももに棒を触れさせる娘。どうやって答えればいいのだろうかと悩むシィルの羞恥はしばらく終わりそうになかった。 



 散々質問を浴びて、疲労困憊のシィルは、行商が終わり代金をポーチに収め終えると倒れるように眠ってしまうのだった。そこからどうやら、村娘の間で未婚の娘の家の内の何処かでシィルを休ませるのが暗黙の了解になっているらしい。朝、シィルが起きると大体けだるさとともに村娘の誰かの家の寝床で目を覚ますのだった。もう慣れたもので起き上ったシィルは村娘にお礼の挨拶をして村を出るのであった。ふと村を出る時、シィルはふとある事に気付いた。




 シィルを介抱するのはいつも夜の商売で媚薬を買った村娘であった。

朝チュン(強制)。ノクターンならもうちょっと行けたはず……。数日後に行く事になるかもしれませんが……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ