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英雄とスライム  作者: ソマリ
最終章 大戦編
209/231

5章 第20話R やられたらやり返す

 ナナからセーナンでの戦いの一部始終を聞いているときだった。


 オーウェンから、緊急通信が入った。


 それはアイオンの王宮がヴァンの襲撃を受け、オーウェンを始めジル・ミーシャ・ペトラが瀕死の重傷、しかもヒデオが連れ去られたというものだった。


 それを聞いた俺はナナと一緒にアイオンに跳び、二人がかりで治療を行う。

 四人の中ではジルをかばったらしいオーウェンが最も重傷で、生きているのが不思議なくらいのものだったけど、人並み外れた生命力のおかげで一命をとりとめた。


 それとヴァンが放った拡散光線魔術は王宮のあちこちに小さな穴をいくつも空け、死者こそ出なかったけれど国王ゼルをはじめ王宮内に多くの負傷者を出していた。


 ブランシェからはニースと魔導研究所の所員が治療魔道具を抱えて駆けつけてくれて、俺達と一緒に治療に奔走した。

 この間俺もナナも、無言で治療を続けてた。


 そして日付が変わる寸前にようやく全ての負傷者の治療を終え、オーウェン達が休む部屋に戻ると同時に、俺はナナの周りの空間魔素を乱して転移を阻害、直後リオとセレスとアネモイがナナに飛びかかり押し倒した。

 このタイミングて転移しようとするのは、わかりきってたよ。


「止めるでない……止めるでない! ヒデオが……連れ去られたのじゃぞ!!」

「罠だとわかっているところに、ナナを行かせられるわけがないだろ。それに……今のナナが行って、何ができる」

「……っ!」


 今のナナの反応を見て、確信した。

 そうじゃなきゃいいな、と思ってたんだけどね……。


「ナナ……魔石、割れかけてるんじゃないのか?」

「……」

「世界樹でヴァンと戦った時か? その義体ならともかく、戦闘用義体は動かすだけでも辛かったんじゃないか?」


 戦闘用の義体は強力な分、日常レベルの行動でも負荷がかかるからね。

 下唇を噛んで鼻の頭に力を入れているところ見ると、やっぱりそうなんだね。


「それでも……行かねばならぬのじゃ……頼むロック……見逃して欲しいのじゃ……」

「駄目だよ。俺はヒデオに、ナナのことを頼まれたんだから。それにナナが戦えないかもしれないって、最初に気付いたのはヒデオだよ。だからナナを守りたいって、戦闘用義体での訓練を始めたんだから」

「なん……じゃと……?」


 ナナが問答無用で転移しようとする様子が無くなったので、リオとセレスとアネモイが三人がかりで押し潰していたナナを抱き起こし、ソファーに座らせた。


「ヒデオも確信はなかったみたいだけどね、ナナの動きの不自然さで気付いたらしいよ。確かに世界樹でヴァンと戦って以来、訓練も軽い運動か魔術ばかりだったもんね」

「ヒデオ、が……そうじゃったか……気付いておったのか……」

「そう。ちなみにみんな知ってる。ヒデオから聞いた俺が、みんなに話した」


 リオとセレスとアネモイが、それぞれナナの視線を受けて順に頷いていった。

 一度深呼吸して、泣くのをこらえているナナの顔を正面から見る。

 ナナがへこむから今まで言わなかったけど、こうなった以上は事実を突きつけなきゃいけない。


「ナナはもう、戦わせない。もし前に出るつもりなら、側近全員でナナよりも前に出る」


 ここまではっきり言った以上、ナナが勝手に動くことは無い。

 他の全員が一緒に動けば、ブランシェを危険に晒す。

 俺と同じ感性持ってるんだからわかるよね。

 ナナの目から、ぼろぼろと大粒の涙があふれこぼれ落ちていく。

 ノーラとヒルダの面影のある妹の、そんな顔は見たくなかったんだけどな……。


「ヒデオは俺が助けに行く。これもヒデオに頼まれてるんだ。もし自分に何かあったら、ナナじゃなくて俺に来て欲しいってね。やっぱほら、惚れた女に何度も助けられるってかっこ悪いじゃん? ヒデオもそーゆーとこ気にしてるんだよねー」

「……ばか、ものぉ……たわけぇ……毎度毎度ピンチになっておるくせに……しまいには、あっさりと拐われた分際で、今更格好も何もないじゃろうが……」

「ほんと、どこぞのお姫様かっていうくらい、ヒデオってひどい目に会ってるよね。でもほら、その手のお姫様って、最後は必ず救い出されて助かるもんじゃない? だからナナは、俺を、仲間を信じて、ブランシェでどっしり構えてなよ」


 納得はしてないみたいだけど、ナナがしっかり頷いたのを見てから振り返る。


「じゃあちょっと行ってくるよ」


 転移前にまずは、深呼吸だ。


 ……ヴァン、お前はまた、俺の身内に手を出したな。


 殺す。


 絶対に殺す。


 一度はお前のことを可哀想なやつだと思ったが、もう知ったことじゃない。

 ヴァンも、ヴァンの仲間も、全て殺す。


 残り五体かそれ以上だとしても関係ない、相打ちになってでも皆殺しに『ドンッ!』ごっふあ!


『ズサアアア!!』


 が、顔面から床に、それと背中に何か当たって、背骨がゆがむかと……な、なんだあ!?


「私も行くわ!」


 お前かアネモイ真後ろからタックルするんじゃないいいいい!


「いきなりなんてことするんだよ! それに危なすぎるから駄目!」

「いーやーよー。いざとなったら気絶するから、そしたら私の力を全部ロックが使えばいいと思うの。それなら安全安心よ!」


 余計不安だよ!

 ていうかやる気も殺る気も思いっきり削がれちゃったよ!!

 背骨曲がってないよな……全くもう。


 ふう。

 …………でも、これでよかったのかも。おかげで少し頭が冷えた。

 強引に今すぐ転移して暴れるつもりだったけど、よく考えるとただの自殺行為だ。

 慢心にもほどがある。


「置いてかれるのはやっぱり嫌よ、レーナみたいに私の知らないところでいなくなるんじゃないかって思うと、怖いの……ぐすっ」

「……わかったよ、アネモイ。一緒に行こう。でもまずは……俺の腰から手を離せ、そして俺の上から降りろ、尻尾を足に絡めるな、泣いているふりをして俺の財布をまさぐるんじゃない!」


 はあ。

 アネモイの角をつかんで引き剥がし、ひとまず深呼吸だ。

 しかしレーナか、元カノというかアネモイが初めて触れ合った人間だ。

 戻ってくると言ってたのに殺されてたんだものな、そりゃ不安にもなるか。


 とりあえずアネモイのせいで雰囲気ぶち壊しだけど、いい機会だ。落ち着いて考えよう。


 ヒデオを助けに行くのなら間違いなくヴァンの罠があるだろうから、それをどうやってかいくぐるか、またはぶち壊すかだね。

 というかヒデオ、そもそも本当に帝国にいるのかな?

 ナナと繋がった魔力線も方向は確かに帝国の方だけど、数百キロくらい離れると見えなくなるし。

 というか今気付いたけど魔力線がまだ見えてるってことは、生きてることは確実だよね。あとはどの辺りにいるかわかれば良いんだけど……あ。


 キューちゃん!

――動力確認、問題なし。ステータス参照、魔道具本体の破損と防御機能の停止を確認しましたが、位置情報把握には問題ありません。個体名:ヒデオの現在地は現在地であるアイオンから東南東の方角、距離およそ1万2千キロメートルです。


 ……いた。少なくとも魔石は無事だし、その方向と距離は間違いなく帝都だ。


「ナナ、一応報告。ヒデオの現在地把握、それと無事なのも確認したよ」

「なんじゃと! いったいどうやったのじゃ!!」

「無事なのはナナと繋がってる魔力線見たらわかるよね」

「……あ。……ほんとじゃ……無事、なんじゃな……」


 あわてんぼうだなあ、ははは。

 俺もさっき気付いたばかりだけどさ。


「場所に関してはその……結婚式の直前、ヒデオやエリー達の指輪に細工してて……居場所がわかるよう発信機みたいな術式埋め込んでたんだよねー、あはは」

「はあ? ……こそこそと何をしておるのじゃ……全く」


 念のために仕込んでたの忘れてた、何のための保険だよ。

 思い出してよかった。

 ナナの呆れたような視線は無視して話を続けよう。


「ヴァンはヒデオが魔石生命体だって知らないはず。でもオーウェンから聞いたヒデオの傷の状態だと、肉体は死んでるのと同じ状態だと思う。それなのに誘拐したということは、ナナがヒデオの死体、または魔石を求めて追ってくると確信してるんだろうね」


 そうだ、考えろ。

 俺が知ってるヴァンの性格なら、このあとどうする?

 ヴァンは魔石生命体の存在を知っている。ただヒデオがそうだとは知らないだけだ。

 だがヴァン自身がそうである以上、魔石があれば生き続けられる、蘇生できる可能性があることには行き着くはずだ。


 あいつは人が絶望する顔が好きだ。

 ナナを絶望させたいなら……目の前でヒデオを殺す。

 それも蘇生や治療を不可能にするため……魔石を完全に壊してとどめを刺す。

 じゃあ逆にナナが帝都に行かない限りは、ヒデオは無事って可能性が高い?


 だけど時間をかけすぎても逆効果だろうな、ヒデオの魔石握り締めてブランシェ襲撃なんてやられたら、救い出せる可能性が低くなる。

 ……なるべく早く、そして確実にヒデオを救い出し、俺もヒデオも無事に帰る方法か……。

 俺一人じゃ考えつかないな、アルトの知性とダグの野生に期待して相談してみるか。


「やっぱ今すぐ行くのやめて、作戦立ててからにするよ。一度ブランシェに戻って、確実にヒデオを助ける方法考える」

「ん……むう、わかったのじゃ……ロック……ヒデオを、頼んだのじゃ」


 さて、それじゃあ一度ブランシェに戻って――


『ピピピッ』

「ん? アルトから通信? はいこちらロックー」

『ロックさん、ナナさんの説得は成功していますね? 今どこですか?』

「ナナは目の前で大人しく座ってるよ。まだアイオンにいる」


 ヒデオだけじゃない、誰かに何かがあったらナナはきっと跳んでいこうとするから、転移を阻害できる俺と勘のいいリオでナナを止め、俺かダグがナナの代わりに跳ぶ。

 この筋書きは前々から決まっていたのだ。


『間に合って良かったです。ヴァンの動きを捉えました。北東の内海を巡回していたテテュスさんが、海上に現れそのまま東へと飛び去る二体のヴァンを見たそうです。ただし六時間ほど前のことですから、ヴァンの飛行速度から推測すると既に帝都についている頃と思われます』

「今無理に跳んでたら、最低でもヴァン三体が相手だったってことか……もしかして間一髪だった?」

『そうなりますね。ヒデオを囮にして我々をおびき寄せるつもりでしょう。ですが慌てて戻ったようにも思えますので、最初からヒデオを狙ったわけではなく、もしかしたら事故だった可能性もありますね』

「ん? どゆこと?」


 アルトの推測だとテテュスが見た二体は、それぞれジースとプロセニアにいたヴァンの可能性が高いらしい。

 そしてもしかしたらヴァンは、アイオンもしくはオーウェンを狙っていたのではないか、と言う。

 そこで偶然ヒデオを発見、ヴァンはナナとヒデオに交友関係があることは知っているから、ナナをおびき寄せるために予定を変更してヒデオを連れ去り、他のヴァンも呼び戻したのではないか、とのことだった。


 ヴァンにとってヒデオをアイオンで待ち伏せをするリスクが高すぎること、南北で戦端を開いておきながら中途半端に破棄したこと、そして何よりヴァン自身はヒデオが死んでいると思い込んでいる可能性が高いというのが理由らしい。

 確かに世界樹の異界生成術式を壊す生贄にヒデオを狙っていたようだし、異界融合後ヒデオの無事がティニオンで発表されたのは、光天教を国外へ追放した後だ。足がかりをなくした帝国とヴァンが、その情報を得ている可能性は低い。

 そしてセーナンで倒したヴァンの体内から、通信魔道具に類似するものをナナが見つけていた。

 ヴァンが互いに連絡を取れるのは確実だからね。


「そうなると、やっぱりうかつには動けないな。もし俺達が戦力を分散して帝都に跳んで、ヴァンが全て集結していたら危険。全員で帝都に跳んだとしてもヴァンが戦力を分散していて、ブランシェを狙われたら負けだ」


 最善はヴァンの各個撃破。

 救いがあるとしたら、帝都から外には連絡できないってことだ。

 空間魔術の阻害があるから、ヴァン達の連絡も阻害されているはずだ。

 こっちの通信も帝国内じゃ使い物に、ってアルトの後ろから別の話し声が聞こえるな。


『ええ……ええ……わかりました。……ロックさん、追加情報です。プロセニア軍とジース軍にティニオン軍が夜襲を受け、甚大な被害が出たそうです。プロセニア・ジース両軍ともに、十体のドラゴンゾンビを使役していたとのことです』

「ゲオルギウスが作ったっていう、あの玉だね。これで両国の後ろに帝国がいることが確定か」


 こっちの戦力を分散しにかかったか?

 そうするとアルトの言う通り、どっちにもヴァンはいないと思って良さそうだね。


「それなら……オレが、前線に出るぜ……」

「あ、ごめんオーウェン起こしちゃったね」

「こんだけ騒いでおいて、起こしちゃったも何もねえだろ……」


 それもそうだ。

 でもジルもミーシャもペトラも、よく眠ってるんだけどな。


「オーウェン、目が覚めたのじゃな!? 良かった……良かったのじゃ……」

「お、おい、嬢ちゃん……いつもどおり、獣並みの生命力とか言わねえのかよ……何だか調子狂うぜ……」


 ナナがオーウェンに抱きついて、ぷるぷる肩を震わせてる。

 まずは一安心だね。


「いや、だって俺達来た時、オーウェンだけ心臓に穴空いて死にかけてたからね? むしろあの状態で、よく通信できたよね……まさに熊並みの生命力」

「お前が言うのかよ、ロック……。それで戦況は? 親父はなんと?」

「ゼルも宰相も第二王子も負傷、傷は治したけど今は休んでるよ。第一王子は『報復のため帝国に派兵しろ』とか言ってる馬鹿貴族をなだめてる。戦況はアルトどうぞー」

『南北ともに千人を超える死傷者が出たようです。しかしどちらもいち早く撤退を決めたため、これでも被害は最小限といって良いでしょう』


 先にこっち片付けた方がよさそうだね、面倒ごとは一つ一つ潰していくに限る。


『北の戦線はアトリオンからも遠くフォルテとフォルト姉妹の活躍もあって時間に余裕はありますが、問題は南のジースです。セベオンまでの距離が近く、早ければ明日の昼過ぎにはジース軍とドラゴンゾンビが都市に到達します』


 フォルテとフォルトって誰。ナナもきょとんとして……あ、変体紳士のとこの森人姉妹かな?

 そんな名前だったんだ、へー。それはさておき。


「じゃあちょっと行って片付けて――」

「だめだ。これ以上嬢ちゃんたちの手を借りるわけにはいかねえ。ティニオンの問題はティニオンで片付ける。だから……ヒデオを、頼む……」


 死に掛けたんだからわざわざ起き上がって、頭下げるのやめて欲しいなあ。

 でもオーウェンにそこまでされて、無視して手を出すわけにもいかないかな。


 なんて困ってたら、ミニスカートの裾からもっふもふの尻尾を九本立てて揺らしながら、ニースがナナの前に歩いていって深く頭を下げた。


「オーウェンさんはもう少し休んでいて下さい。僕が行きます。行かせてください!」

「ニース、何を言っておるか。おぬし魔力は高いが、ろくに戦闘訓練をしておらんじゃろうが」


 尻尾を立てたままこっちに背中向けて頭下げたもんだから、ミニスカートの中丸見えじゃないか。

 ていうかあれは何だ。

 ジュリアの新作か。

 小さくてプリッとしたお尻がミニスカートから見えてたら、それを目で追ってしまうのは男の本能だ。

 だから見たよ。

 そして後悔した。


 お稲荷さん透けさせてんじゃねえよちくしょおおおおおおおお!


 俺にそっちの趣味は無いんだよおおおおおおお!!


「……そんじゃ、こっちは任せたよ。一度ブランシェ戻って、ダグとも打ち合わせしてから砂漠経由で行って来る」


 今見たものを一刻も早く忘れるために、俺は行く。

 ナナが何か言いたげだけど、振り向かずに手をひらひらさせて答える。

 きっと、大丈夫。


 なんだかこれくらい緊張感が抜けてるのが、俺達らしいといえばらしいよねー。


 アネモイを片手で引き寄せ、柔らかい感触でさっきの記憶を塗りつぶしつつ、ブランシェに転移だ。

 アイオンにいるナナの守りが手薄だけど、ヒデオの誘拐という手を選んだ以上、ヴァンの襲撃は無い。

 数日もしたらわからないけど、少なくとも今はね。


 そしてダグ・アルトと三人で、今後の対応と作戦を決めよう。

 実のところ戦力的には、はっきり言って分が悪い。


 セーナンで戦ったっていうヴァンの戦闘力を基準にすると、一対一で勝てるのはダグだけだ。それもテテュスの力を借りるのが前提。

 アルト・リオ・セレスだと三人がかりでギリギリ互角、今いないけどグレゴも単独でギリギリ互角。

 俺は完全装備でアネモイの力も借りれば、一対一ならよゆー。二体までならいけるかな?


 正直ナナを戦力から外すと、もしヴァンが五体同時にブランシェに攻め込んできていたら、それだけで俺達の敗北が濃厚だ。

 だけどヴァンは、ヒデオを拐った。

 逆にこれでヴァンの行動予測が立てやすくなったし、俺達の勝ちが見えた。


 ヴァンが取るだろう手は、ヒデオを取り戻しに俺達が帝都に行くのを全員で待つか、待ち伏せを残した上で別働隊を出すか、だ。

 別働隊が出れば、各個撃破のチャンス。


「面倒くせえな、ロックいっそ転移で行ってヴァン釣ってこいよ。正面から堂々と行きゃ逆にヴァンも警戒して、様子見で戦力分けるんじゃねえか?」

「正面から行くのは無謀ですが、それなら……あっ……」


 ……うわぁ……そっか……正面から堂々と、ねぇ……まんまとヴァンにやられたかもしれない。

 アルトも気付いたな?


 ヴァンの野郎、皇帝になって使者送ったりしてきたのは、堂々と姿を見せることで俺達を警戒させて、動きを限定させるためか……。

 猫探し言い訳にしてグレゴ探しに行こうとしたとき、頭に何か引っかかったのはこれか。


 ヴァンに気を取られてプロセニアもジースも無警戒だったし、それにヴァンがアルトの部下の死体を返してこなかったら、もっと沢山の斥候を帝国に送ってただろうからね。

 俺だってもっと早く猫探しに行って、異変に気付いたかもしれないし。


 時間稼ぎの策にはめられたってことか。


 ヴァンの方が一枚上手だったね、伊達に数百年生きていないってか。


 こうなったらとことん……おちょくってやる!


 そのためには……まずグレゴと合流だ。

 グレゴってあれでいて、アルトより魔術の腕が上だからね。


 それに俺が帰ってくる時に使った異空間とゲートゴーレム、向こうに置きっぱなしだ。

 ちょうどいいからそこ拠点にしよう。


 今度はこっちがはめてやる側だ。

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