44話 執着
「ヤツはどこに………………………………………!」
がれきの雨が降りしきる中、灰賀は黒フードの男を探していた。
先ほど、アステラを逃がし黒フードと戦闘するし攻勢に出てはいたものの致命傷を与えるには至らず黒フードの男にそのまま離脱される。
あたりを見渡してももうその存在の痕跡すら残されていない。一人残されたまま灰賀は下に転がるがれきの山を乱暴に蹴りつける
「……………………………………っち!」
思えば最近の灰賀はなにからなにまで上手くいかない。
翔進羅黒に一杯食わされ、神室冬花にもアステラを奪い返されかねなかった。アステラを捕らえたと思えば黒フードの助力によって取り逃がし、あまつさえ黒フードも見失った。
灰賀が望むのはただ圧倒的なまでの力。それこそ自身に逆らう気力すら起きないほど頂点に君臨するモノ。
故に自身に逆らうものは生かしては置けない。
が、翔進羅黒も神室冬花も生存しているというのがなおさら灰賀の癪に障る。
そしてあの黒フードはおそらくキトノグリウス狩り。アギトが存在をほのめかしていた人物だ。
最近、キトノグリウスのメンバーを始末する者がいると
どうやってアジトの位置を調べたのかは不明だが、ここまでされて見逃すわけにはいかない。
「………………………だがいったいどういうことだ」
激情にあられている中、灰賀に残ったわずかばかりの理性が疑問を投げかける
あの黒フードの正体はわかった。だが、そのことが余計に灰賀の頭を混乱させた。
どのみちあの黒フードの男を殺すことには変わりない。灰賀は眉をひそめ、彼方にいる敵へ視線を送る。
その時。
ふと視界にある人物の姿が映りこむ。
(あれは…………………………翔進羅黒?)
がれきの山の向こう側に一瞬だが翔進羅黒の姿が確かにあった。
『…………………………………………次はないと思え』
灰賀の脳裏に灯されたのは、アギトがアステラの確保に失敗した際に、翔進羅黒との別れ際に放った言葉。
その時、灰賀は人質を取ってアステラを奪おうとしたがそれすらも失敗に終わる。
自然とナイフを握る力がこもる
翔進羅黒はキトノグリウスにとってもっとも邪魔な存在の一つだ。アステラを常に守り、ことごとくキトノグリウスの行く手を阻んだ。
何より灰賀にとって翔進羅黒は目障りな存在でしかなかった。
彼の生き方そのものが灰賀の神経に触るのだ。
「…………………………………………」
どこに行ったのかはわからないがそう遠くには言っていないはずだ。
借りを返すには今しかない。
灰賀は静かに歩みだす。自身がかつて放った言葉を現実のものとするべく




