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最終回(2)

「奥様!!」


執務室から出るとミサが駆け寄ってセシリアに抱きついた。


「ミサ、どうしたの?」

「もう……もう会えないのかと思って心配しましたが。」

「え…?」

「光がドアの隙間からもれていたので…あの本が光ったんですよね?」


(本の事…ミサに言ったかしら?)


「奥様…あの…」


ソクラテスが少し言いづらそうに立っていた。


「ソクラテス、どうしたの?」

「先程、ディミトリア伯爵がファネット嬢を引き取りに此方へ来ております。奥様と旦那様にお会いしたいと言う事で応接室でお待ちになっておりますが如何いたしますか?」

「お父様が?…アーヴィン様、行ってもよろしいでしょうか?」

「ああ。私も行こう。ソクラテス、いいと言うまでファネット嬢はまだ連れて来ないでくれ。」

「畏まりました。」

「セシリア、伯爵の所へ行こうか。」

「はい。」


2人は応接室へと向かった。


ドアを開けてセシリアとアーヴィンは部屋に入る。



「セシリア…!」

「お父様…」


(お父様は再婚してからあまり感情を表情に出さなくなったけど今はとても心配してくれているのが分かる…)


「ヴェリエール侯爵様、この度は大変申し訳ありませんでした。まさかファネットが入れ替わりを命じてセシリアを向かわせるなんて思わず…」


「ディミトリア伯爵は辺境へと遠征をしていた時だったから仕方がない。問題があったのはファネット嬢とその母親だ。」


「いえ、私の責任でもあります。…セシリア、すまなかった。まさかこんな事になるなんて…。お前がファネットとラシオーネと折り合いが悪いのに気付いてからファネットを嫁に出して少しでも居場所が悪くないようにと考えていたんだが…」

「お父様…そんな事まで考えてくれてたんですね…私、知らなかったです。お義姉様は元の世界の本まで持って来ていて…私の事をどうしてそこまで嫌っているのか結局分かりませんでしたが…元の世界に早く帰ってほしかったようです。」

「な、何!?あの本を持ち出したのか!?」

「え?ええ…でもさっき本が光って…元の世界に戻りそうになりましたが戻りたくなくて…アーヴィン様の手を取ったら本だけ光に包まれて消えていきました。」

「そうか…そうだったのか…」

「お父様、あの本の事を知っていたのですね?」

「ああ、あれは私が保管していた本なんだ。セシリアがこの世界に来た時に別の場所にあったそうで、施設から預かっていた。」

「なら…どうして私にその事を教えてくれなかったのですか?」

「それは……他の異世界から来た子供達がこの本が光り、消えていったと言う話は聞いていたが、元の世界に戻れると言う確証は無かった。その証拠に1人の子供は元の世界ではなく、別の国に飛ばされていた。その子は記憶もなくし自分が誰かも分からずに生活をしていたそうだ…。」

「そんな……。」

「だから…そんな危険な本はセシリアに渡さないと思って私の書斎に置いておいたんだ。それをラシオーネに話した事があったからファネットにも伝わったのだろう…本当にすまなかった…」

「お父様…もう謝らないで下さい。少し前までは元の世界に戻りたかったですし、お義姉様に入れ替わりを強要されてしまいましたが、私はここでアーヴィン様や出会えた人達に沢山幸せを貰っています。本当に幸せで…」

「そうか……お前が辛い思いをしているなら何が何でもこの縁談を破談にして連れて帰ろうと思っていたが…」

「な…!ま、待ってくれ!それは…」


アーヴィンは焦りながらノーランを止めようとした。

その姿を見てノーランはフッと優しく笑う。


「そうですね…これは余計なお世話になってしまいますね。ヴェリエール侯爵様、セシリアを宜しくお願いします。」

「ああ。ディミトリア伯爵、セシリア嬢の事は必ず幸せにします。」

「とても頼もしい旦那様で良かったな、セシリア。」


ノーランは優しく笑っていた。


「はい。お父様…ありがとうございます。」


(お父様の笑顔久しぶりに見た…私はどの世界にいても愛されて想われていたのね。それに気付かなかったのが悔しい…)


「では、私はファネットを連れて帰ります。」

「あの、お父様!お義姉様はどうなるのですか?」

「心配いらないよ。もうセシリアに何かしでかす事はない。暫く謹慎したのち、辺境伯の元へ嫁ぐ予定だ。とても厳しくて恐ろしいが、思いやりのある伯爵でな、ファネットを受け入れてくれた。彼女も変わってくれると良いんだが…。まぁ、セシリアはこれからはファネットと会う事はないだろう。」

「そうなのですね…」

「じゃあまた、会いに来るよ。私の大事な娘。」

「はい、お父様、待ってますね。」


ノーランはファネットを連れて馬車に乗り帰っていった。


その様子を窓越しにセシリアは見ていた。



「セシリア、父親と離れるのが寂しいのか?」


セシリアの後ろから声をかけるアーヴィン。


「いえ…お父様にはこれからも笑顔で過ごして欲しいなって…」

「そうか…だが、ディミトリア伯爵のことばかり気にかけているセシリアを見ていると妬けてしまうよ。」

「ええ…?お父様ですよ?!」

「だが、養子だろう?血の繋がりはない。セシリア、もっと俺のこと見て欲しい。」

「もう…私の旦那様は本当に愛が重すぎますね。」


セシリアは困った表情で笑う。


「申し訳ないが俺はこれでもまだ我慢しているんだ。だけど、絶対幸せにするしセシリアの笑顔を守る。だからこんな俺でも愛して欲しい。」


「私もアーヴィン様の事愛しています。でもダメな時はダメってしっかり伝えますからね。気持ちは受け止めますが…行き過ぎないようにして下さいね。」


満面な笑みでアーヴィンを見つめるセシリア。


「善処しよう…。」


アーヴィンもそんなセシリアを笑顔で見つめ返した。





END

ここまで読んでくださってありがとうございます!!

愛が重い男性の話を書きたくて出来上がったのがアーヴィンでした。愛が重すぎて病み系に行かないように修正するのが大変でしたが(笑)優しくて心の強いセシリアと一緒にいれば中和されるでしょう…。


本当に最後まで読んでくださった皆様に感謝です。

ありがとうございました!

また次の作品でお会いできたら嬉しいです。

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