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最終話(1)

(嫌だ…アーヴィン様と一緒に居たい!)


「セシリア!!」


その時アーヴィンの手が光の中で微かに見えた。


「アーヴィン様!!」


セシリアは微かに見えるアーヴィンの手を取ろうと手を伸ばす。



(お願い…届いて!!)


セシリアは思い切り手を伸ばすとアーヴィンの指先に触れた。

セシリアの指が触れた途端、アーヴィンが思い切り手を掴み引っ張った。

消えていた体が光の中から引っ張り出され、2人は床にドサッと倒れた。


「セシリア…良かった…元の世界へ戻ってしまうのかと思った…セシリアがいない世界なんて考えられない。もう何処かへ行こうとしないでくれ。」

「アーヴィン様…私もアーヴィン様が居ない世界なんて嫌です。…怖かった…もう会えなくなるのかと思いました。」



2人は暫く抱きしめあっていた。


「セシリア、元の世界の名前は思い出したままなのか?」

「はい。私の本当の名前は紗奈って言います……あれ?名前覚えてるけど元の世界には戻ってないしあの光も無い…」

「そうか…。だとしたらあの本が鍵だったのかもしれないな。」

「あの本…!」


セシリアはキョロキョロと辺りを見回すが何処にも本が見当たらなかった。


「恐らくあの光の中に入って消えた…つまり本だけ元の世界に戻った可能性は高い。」

「じゃあ私はもう元の世界に戻る事はないって事…ですよね?」

「そうだと信じている。やっぱりセシリアは元の世界に未練はあるのか…?」

「いいえ!今回改めて思ったんです。私ここのお家の人達が大好き…そしてアーヴィン様の事も…!だから未練なんてないです。寧ろこの世界にいられて私は幸せです!」

「セシリア…もう俺から離れないでくれ。」

「はい…私も…アーヴィン様の側に居させてください。」


アーヴィンは更に強くセシリアを抱きしめた。


「俺、自分が思っている以上に重い人間みたいだ。人をここまで好きになるとは思わなかった。」


セシリアはフフッと優しく笑う。


「とても光栄です。でも……程々にして下さいね。」


ニコッと笑うセシリアを見てアーヴィンは少し困った様に笑った。


「善処する…」




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