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本(1)

「セシリア…セシリア!」


アーヴィンの声にハッとするセシリア。


「ア、アーヴィン様…ごめんなさい考え事をしてしまって…」

「本当に大丈夫か?」

「はい…あ、いえ…本当はちょっと…大丈夫じゃないかもです。」


セシリアはぎゅっと自分の手を握る。


それをみたアーヴィンはセシリアを抱きしめた。


「今までずっとあんなに辛くあたられていたのか?ずっとしんどかっただろう?よく耐えてきたな。」

「…必死だったんです。この世界に誰も知ってる人が居なくて不安で…絶対に元の世界に戻るって毎日過ごしてきたけど、新しい家族とも仲良くなれる未来を何処かで期待してたりもしてました。でも…やっぱり無理でしたね。」


セシリアは笑顔を作りながらボロボロと涙を流した。


「セシリア。ディミトリア家では無理だったかもしれないけど、ヴェリエール家では仲の良い家族になろう。君はもうヴェリエール家の人間になるんだ。俺はセシリアを一生離さない。絶対に幸せにする。だからもう悲しむな。」


アーヴィンはセシリアの涙を拭く。


「はい…アーヴィン様は本当に優しい人ですね。私、出会えて本当に幸せです。アーヴィン様、大好きです!」


セシリアは涙を拭き笑顔を見せる。

アーヴィンはクスッと笑い、セシリアにキスをした。


「俺もセシリアが好きだ。セシリアと出会えて本当に良かった。人を好きになるのが初めてだが…こんなにも幸せな気持ちになるんだな。」


「私も…もう元の世界に戻りたくないです。アーヴィン様とここでずっと暮らしていきたいです。」


「そうか…良かった。実は元の世界に戻りたいのではと思っていたから。でももしそう思ってたとしても絶対に離さないし逃さないけどね。…そういえば、ファネット嬢が本を気にしていたが、あれはそんなに重要な物なのか?」


「私にもわかりませんが…お義姉様は確か、元の世界に戻れるカギがあると言っていたような…それが本なのかもしれません。」


「じゃあその本を燃やしてしまえば元の世界に戻れないという事か…」


「も、燃やす!?」


「嫌なのか?まだ本を持っていたいと言う事は、やっぱり元の世界に未練があるんだな……」


アーヴィンは次第に不安そうな表情になっていた。


「あ、いえ!そうじゃなくて本を燃やすって火傷とか怪我とかしないかなって思ってしまって…でも元の世界に未練が無いと言ったら嘘になるかもしれません。私の家族がそこには居るし、もう一度会いたいなと思う時もあります。だけどそれ以上にアーヴィン様と離れたくない気持ちが強いので本を燃やす心の準備しておきます!」


セシリアは両手で気合を入れながらアーヴィンに真剣な眼差しで伝えた。

その姿が可愛らしく、可笑しく見え、アーヴィンは笑い出す。


「そんな顔して本を燃やす心の準備しなくてもいいよ。これは例え話だから、燃やすつもりはなかったよ。」


「え?そうだったんですか…?恥ずかしい…でも少し気になるのであの本をもう一度見てもいいですか?」

「ああ、本は執務室で預かっている。このまま執務室へ行こうか。」

「はい!」


アーヴィンとセシリアは執務室へと向かった。



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