地下牢(2)
「旦那様、奥様、此方の部屋にファネット嬢がいらっしゃいます。奥様は部屋の中には入れませんのでご容赦ください。」
「分かったわ。」
(ここが…牢屋?ドアもついてるけど…)
ソクラテスがコンコンとノックをして牢屋のドアを開けた。
牢屋のドアの間に格子があり逃げ出せないようになっている。
中は小綺麗にされた狭い部屋のようだった。
「ファネット嬢。お加減はいかがでしょう?」
「…どうもこうもないわよ。アンタ私をいつまでここに置いておくつもり?!」
ファネットは苛立ちながら振り向いた。
「セシリア……アンタどうせ私を嘲笑いにでも来たんでしょう?本当に性格の悪い人だわ!アンタの顔なんて見たくもないのに!」
大声で怒りをぶつけるファネット。
「違いますお義姉様……私はただ何故お義姉様がここまでするのかを知りたくて…」
「アンタの声も聞きたくない!本当に目障り…さっさと出て行って!」
ビクッとなり固まってしまうセシリアを見てアーヴィンはいてもたってもいられなくなった。
「おい、立場を分かって言ってるのか?今はセシリアがお前よりも爵位が上だろう?それになぜお前はセシリアをそうやって嫌うんだ。セシリアが何かしたか?」
「セシリアセシリアってうるさいわね!!この女の何処がいいのよ!私は最初から嫌いだった…異世界から来ている時点で気持ち悪い。それに純粋で善人面してるこの女の顔を見るたびに私が否定されているようで……お義父様はいつだってアンタを褒めて、私には冷たい目線で見てくる…アンタみたいな綺麗な心を持っていない私は、どう足掻いてもアンタには勝てないって言われてるようでずっと嫌いだったのよ!」
「お義姉様……」
「これ以上私を惨めな思いにさせないでよ…アンタなんか元の世界に早く帰ればいいのに!…そうだわ…あの本見たの?見てないわよね…ねぇ早くあれを読んでよ…」
「本…ファネット嬢あの本は何なんだ?」
「あの本は………見たら分かるわよ。」
「お義姉様、あの本は何処から…?」
「……何でアンタに色々教えなきゃいけないのよ。自分で確かめたらどうなの?それよりも早く私を出して!」
「……お義姉様。私、お義姉様が今でも怖いしあの家には戻りたくありません。だけど…もうお義姉様にも辛い思いはして欲しくありません。だから人を傷つけるような事…私を叩いたり蹴ったりしないで欲しい、それにお義姉様自身も傷つかないで欲しいです。」
「……何?あんた気持ち悪い…その善人面が嫌だって言ってるのよ…もう話したくないから出て行ってよ…」
ファネットは辛そうな表情をしていた。
(何を言ってもお義姉様には届かない…これ以上は話しても無駄かも…結局最後まで分かり合えなったわ…)
「アーヴィン様、わがままを聞いてくださって有難うございます。もう大丈夫なので帰りましょう。」
「もう大丈夫なのか?もっと同じ目に…それ以上酷い目に合わせる事だって可能だが…。」
「いいえ、もう大丈夫です。…お義姉様、もう会いに来ません。会話するのも最後でしょう。でも…本当はお義姉様とは仲良くしたかった。血は繋がってなくても家族だし姉妹だから…」
セシリアは踵を返し、俯きながら地下牢を出た。




