山の中(1)
「ん……」
ガタガタと揺れる馬車の中で気を失って倒れていたセシリアは目を開ける。
「痛っ……ここは…?」
(馬車の中…?そうか…私お義姉様に殴られた時にぶつかって気を失っていたのね…)
「お義姉様…今回は強めに殴って来たわね…」
頭から流れる血に気付いたセシリアは持っていたハンカチで血を拭った。
「今何処を走ってるのかしら…すみません!!止まれますか?」
馬車の窓を開けて御者に声をかける。
御者はその言葉に無視をしてそのまま走り続けた。
よく見ると御者は手が震えている。
(この人…自分のやっている事に気付いてるのね…)
「あの…すみません!もう大丈夫ですよ。ここからは私が1人で行きますので!」
馬車がゆっくりと止まった。
セシリアは馬車から降りて御者の所に行った。
「あの…大丈夫ですか?すごく震えていたのが見えたので…もう貴方を巻き込みたくないので私の事は何処かに捨てたとでも言って置いて行って下さい。」
「も、申し訳ありません……ですが…ちゃんと指定された場所まで連れて行かないとクビにされてしまうんです…。」
「大丈夫よ。私がその場所まで1人で行きますから。目的地は何処ですか?」
「あの…山の向こうで…しょ、処分するようにと…。」
「処分ね…分かったわ。気を失った私を連れて行ったと伝えておいて。本当に巻き込んでしまってごめんなさい…。」
「い、いえ…私こそ逆らえずこんな真似をしてしまって…本当にごめんなさい…」
「いいのよ…。これは完全に私達に問題があるわ。」
「あの…お嬢様…」
御者は馬車の中に入り、一冊の本をセシリアに渡した。
「これもお待ちください。一緒に捨ててくるよう言われましたので…」
「本…?分かったわ。」
(本…お義姉様が何か言ってたような気がするけれど…朦朧としていて覚えていない…なんだろう…)
御者は道を引き返し、セシリアは山道に1人となった。
(ここから下りるのは時間もかかりそうだわ…頭の傷もどうにかしたいけど…どうしたらいいんだろう…)
セシリアは馬車の跡を追いながら歩いて行った。
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