消えたセシリア(3)
「アーヴィン様…!!」
アーヴィンは声のする方へ顔を向け、一瞬で表情を歪ませる。
「何で貴方がここにいるんですか?ファネット伯爵令嬢…」
ファネットはキラキラした目でアーヴィンに近寄った。
「アーヴィン様お久しぶりでございます。私の事を覚えて下さってとても嬉しいです…」
「何故ここにいるのかと聞いている。」
「それが…私の義妹の事で…。」
「セシリアは何処にいるんだ?」
「アーヴィン様、義妹をどうかお許しください!私に黙って入れ替わりなんてしてしまって罪悪感を感じてしまって…嫌になってしまったようで私を呼んで義妹は馬車で帰ってしまったんです。」
「セシリアは居ないのか?」
「ええ…私が元の世界へ帰る方法を知っているからって無理矢理この家まで呼び寄せて私を置いて1人で逃げるように…でも元々は私がアーヴィン様の妻となる身でしたので…!」
「…………い。」
「え?」
「煩い。どうせお前が仕組んだんだろう?セシリアを何処へやった…」
「え…だ、だから私は何も知らな……きゃあ!」
アーヴィンは怒りのあまり、ファネットの両肩を強く握った。
「い、痛いですアーヴィン様やめて…!」
「やめろ……?セシリアにはもっと酷い仕打ちをした奴がこんな事で根を上げるのか…?」
恐ろしい表情のアーヴィンを見てファネットは恐怖で震える。
「答えろ…セシリアを何処にやった?」
「し、知らないわ…御者に任せたもの。実家かもしれないし森の奥深くかもしれないし、海かもしれないわね。」
アーヴィンは更にファネットを睨みつけた。
「ソクラテス、ミサは?」
「はい、恐らくミサは奥様の捜索に出たのではないかと。」
「私達も行くぞ。……ああ、ついでにそいつは地下に入れとけ。」
ファネットは護衛に拘束されて連れて行かれようとしていた。
「な、何で私が!?嫌よ!!何で…何であんな子がいいのよ!何処から来たかも分からない気味悪い人間なんだから始末して当然でしょ?!」
アーヴィンはファネットの方を振り向く。
「セシリアは君みたいな奴より遥かに人間らしいが?」
ファネットは苛立ち声を荒げる。
「あんな子どうせ元の世界に戻ってるわよ!私がトリガーになる本を馬車に置いて来たんだもの!殴って気絶してるけど、もう起きてたら間に合わないわよ。あはははは!!いい気味ね!」
「ソクラテス、急ぐぞ。」
「はい!」
アーヴィンはファネットの言葉を聞き、急いで家を出た。




