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欲望(2)


ーーーー応接室ーーーー


「久しぶりね、セシリア。ここにいる方々はとても寛大な方達なのね。貴方みたいな何処から来たのか分からない異物みたな人でも随分と良い暮らしをさせて貰ってるじゃない。」

「はいお義姉さま。お蔭様でとても良くして頂いてます……」


ファネットはセシリアを睨みつけ、セシリアは少し怯んだ。


「そんな答えを聞きたいんじゃないのよこっちは!」

「も、申し訳ありません…。」


(ダメだわ…お義姉様の前だとどうしても恐怖が勝ってしまう。うまく話せるかしら…)


「はぁ…アーヴィン様は噂と全然違うのね。もっと冷酷非道で恐ろしい人って聞いてたのに…本当の姿を知っていれば交代なんてしなかった…。」

「ど……どういう事ですか?」

「ねぇセシリア、この場所私に返しなさいよ。元はと言えば私がここの家に嫁ぐ予定だったんだから待たせてある馬車に乗って帰ってちょうだい。」

「え…ま、待って下さい!そんな事…」

「そんな事出来ないって言うの?貴方が私に逆らう気?」

「いえ…そうではなくて…」


(嫌だ…あの家には帰りたくない…それにアーヴィン様の隣にいる人が私じゃないなんて…そんなの嫌だ!)


「私はディミトリア家には帰りません!私はアーヴィン様の妻ですから!」

「何生意気な事言ってるのよ!」

ファネットはカッとなりテーブルにあるソーサーを投げつけセシリアの頭に当たる。


「痛…っ!」


ファネットは立ち上がり持っているお茶をセシリアの頭の上から全て流し微笑を浮かべた。


「貴方にはその姿がお似合いよ。ねぇ、これ以上私をイラつかせないで。折角貴方にとっても良い情報を持って来たんだから…」

「え……?」

「私と馬車に乗って。それから教えてあげるから。」

「ば、馬車ですか…?でも私外には出るなと……」

「いちいち煩いわね!!いいの?私が折角『元の世界に帰れる方法』を見つけて来たと言うのに。」

「ほ、本当に…?」

「大人しく言う事聞けば教えてあげても良いけど…どうするの?」


(本当にお義姉様は元の世界に帰れる方法を知ってるの?嘘かもしれないし…それに私は元の世界に戻れる方法を知れると思っても嬉しいと思っていない…寧ろ…)


迷っているセシリアにイライラを募らせるファネット。


「なに?アンタもしかして…元の世界に戻りたくないくらい優しいこの家に執着してるの?」

「執着なんて…そんな事…」

「侯爵夫人という立場がアンタに合ってると思ってるの?異物のくせして分不相応ね。侯爵夫人の立場は私にピッタリだし、アーヴィン様ほどの綺麗な方、この世に存在しないくらい貴重だわ!あんな格好いい人初めて見たのよ…!だから貴方はここから消えて頂戴。」

「…お義姉様は…もしかしてアーヴィン様が好きなんですか?」


ファネットはニコリと笑った。

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