和解
セシリアとアーヴィンは執務室へと戻った。
中に入るとソクラテスがミサに手当てをしてもらっていた。
「旦那様に奥様…。申し訳ありません、手当の為にお部屋をお借りしておりました。」
ミサとソクラテスが頭を下げる。
「顔を上げてくれ。…ソクラテス、私こそ勘違いをして殴ってしまって悪かった。」
ソクラテスは目を丸くする。
「いえ…私も勘違いをさせるような行動をとってしまいました…」
「旦那様が謝るなんて珍しい。雹でも降るのか?」
ミサはボソッと小声で言った。
「アーヴィン様、ソクラテス。お仕事が沢山溜まってます!私も手伝いますのでまた一緒に続きをやりましょう?」
「ああ、そうだな。」
ミサはセシリアに近寄った。
「奥様、話し合いうまくいったんですね。良かったです。」
「ミサのおかげよ。本当にありがとう!」
ミサは少し微笑んだ。
「いいえ、奥様のおかげです。さっきまで怒り狂ってた旦那様があんなに素直に謝るなんて…。」
「あ、ミサ!私…実はアーヴィン様と婚姻関係ではないみたいなの。だから…『奥様』ではないの。」
「あぁ、それなら知っております。」
「え?じゃあなんで…」
ミサはセシリアと目を合わせ微笑みかけた。
「そうですね…。ただ…私はセシリア様の事が好きだから支えたいしこの家に留まって欲しいから、でしょうか。」
「ミサ……!私もミサの事大好き!!」
セシリアはミサに抱きついた。
「ミサと離れたくない!」
「奥様は本当に可愛い人ですね。」
「ミサも可愛くてカッコよくて…私が男性ならプロポーズしてた!」
「あら、こんなに可愛い男性なら私も喜んでプロポーズお受けします。」
ミサはセシリアの背中に手を回しポンポンと背中を叩いていると後ろからじっと2人を見つめるアーヴィンの姿が見えた。
「…羨ましい。ミサには思いっきり甘えてる…。私にも甘えて欲しいのに…」
「旦那様……同性の私にまで嫉妬しないで下さい。」
呆れた顔でアーヴィンに話すミサ。
「これは先が思いやられますね奥様…。」
心配そうに見つめるミサをきょとんとした顔で見るセシリア。
「え、そう?私はそんなアーヴィン様も可愛いって思うよ?行き過ぎた時はちゃんと叱るって約束したし!ね?アーヴィン様!」
「ん?ああそうだな。」
セシリアとアーヴィン2人は仲睦まじく笑いながら見つめあっていた。
「奥様は女神か何かなのか…?ねぇソクラテスそう思わない?何処となく旦那様を懐柔している感…。それにあの執着さを見せられても笑顔でいるなんて…」
「そうだな…こんなに愛が重い主人を受け入れてくれる懐の深い人はそうそういないよ…」
「旦那様には奥様じゃないとダメな気がする。」
「そうだな、私もそう思うよ。セシリア様が奥様として来られて本当に良かったよ。」
「…ふうん?失恋したのに立ち直るの早いんだな。」
ミサは意地悪そうにソクラテスに言った。
「失恋ね…。そんなのとっくに分かってたさ…実ることなんて無い。この気持ちは直ぐに消すことは出来なくても少しずつ思い出にしていくよ。2人の邪魔をしないようにね。」
ソクラテスは少し辛そうに2人を見つめていた。




