兄妹(1)
アーヴィンは微笑み、セシリアを抱き上げた。
「きゃあ!?ア、アーヴィン様…?」
「私が居なくて寂しかったのか?」
セシリアは少し顔が赤くなる。
「は、はい…実はアーヴィン様がいらっしゃらなくて少し寂しくなりました。」
アーヴィンの肩に置いている手でギュッと服を握りしめる。
アーヴィンは握りしめられた服を見ながら少し笑う。
そんな光景を馬車から見ているシエル。
「お兄さま、あんな表情もするのね…」
「そうだ愚妹。お前の入る好きなんかない。」
「お、お兄様!?いつの間に…」
「ん?旦那様が奥様を抱き上げる前からいるぞ。お前は本当に旦那様の事になると周りが見えなくなるな。」
「な…!余計なお世話よ!」
「まぁ、旦那様も奥様の事になると周りが見えなくなるというか…愛が重すぎるというか…。」
「え!?お兄さまってそんな人なの!?ギャップすぎてもっと好きになりそうだわ。」
「シエル…やめておきなさい。お前は振られただろ。」
「…私は知ってるのよ?ソクラテスお兄様だって同士だって事。」
「同士?」
「ソクラテスお兄様、セシリア様の事好きなのでしょう?」
「え…!?」
顔を赤くするソクラテスを見てシエルは得意げに笑った。
「だって態度があからさまなんですものお兄様。セシリア様の事目で追いすぎよ?あれじゃあお兄さまにバレちゃうわよ気をつけて。」
「……もうバレている。」
「えぇ。大丈夫でしたの?」
「残飯処理に異動させられる所だった…」
「あははっ…残飯処理って…ふふっ」
元気に笑うシエルを見てソクラテスはフッと少し笑った。
「シエル、新薬の件はどうなった?上手くいったのか?」
「え、ええ。試飲させてもらう事になったわ。」
「そうか。上手くいくといいな。」
「ええ。早く丈夫になりたいわ…私はまだやりたい事沢山あるんですもの!お兄さまに振られた事を吹っ切れたわけじゃないけど…いつかまた新しい恋だってして、恋愛だってしたいわ。」
意気込むシエルをみてソクラテスは優しく笑った。
「女性は逞しいな。」
「あら、お兄様だって素敵なお相手を見つけて結婚して欲しいですわ!」
「そうだね…まだ俺はそういう気分じゃないが。」
「気分じゃなくてまだ諦めてないのね…。」
シエルが心配そうに見つめるとソクラテスはニコッと笑った。




