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ディミトリア家と対面(2)

「シエル、今日の社交界では成果はあったのか?」

「そうね…上々ってとこかしら?病院を営んでいるタルバン公爵様と製薬業のサフラン侯爵にはお会いできたわ。あの方達に聞くとそろそろ新薬の認可がおりるそうよ。その新薬で私の体の不調が治ればいいのだけど取り敢えず試験的に飲ませてもらう事を約束して来たわ。」

「そうか。シエルにあった治療方法が見つかると良いな。」


シエルとアーヴィンは早々と社交界の場を離れ馬車の中にいた。


「それにしても、私は助かるけれど…今日は異様に早く切り上げましたわね。もしかしてセシリア様に会いたいから?」

「まぁ…そうだな。セシリアの顔を早く見たい。」

「まぁ!素直に言うのね。目の前にはお兄さまに振られた女性がいるのに配慮が足りないわ。」

「すまない…」

「ふふっ冗談よ。…もう分かってましたから。それよりも…セシリア様のご家族とは何があったのか教えて欲しいわ。」

「ああ。セシリアはあの家族に虐げられていたんだ。ウチに来た時も体は傷だらけで痩せていて…毎日の様に叩かれていただろう。」

「セシリア様が先程の方達に…!?」



それからアーヴィンはセシリアがヴェリエール家に来るまでの話をした。



「酷いわね…嫌だからって姉の代わりに嫁がせただなんて…私はお兄様が味方だったけれど、セシリアは家族に誰も味方がいなかったのかしらね…。」

「…私は…セシリアがウチに来てくれて良かったと思っている。あの姉が来ていたらどうなっていたか…。」

「そうね…」

(もし、セシリア様ではなく姉がきていたら…私とお付き合いしてくれたのかしら。)

シエルは少し複雑そうな表情をしていた。




走っていた馬車が止まる。


「もう着いたみたいだな。ソクラテスが来ているからここで待っていろ。」

「お兄さま!」


馬車から降りるアーヴィンに声をかけるシエル。


「どうした?」

「私、お兄さまの事を本当にお慕いしておりますの。何故…私では駄目なのですか?」


言いづらそうにしているシエルにアーヴィンは頭をポンと触る。


「他の女性といる時は嫌悪感しかないが、シエルといる時は心穏やかに過ごせた。でもそれは私がシエルを妹の様に可愛がっていたからだ。それ以上の感情はなかった。これからもないだろう。気持ちを受け取れなくてすまない。」

「それでも諦めませんから…!」


涙目になるシエルを見て少し困ったような表情をした。


「アーヴィン様…?」


アーヴィンが振り向くと後ろにはセシリアがいた。


「セシリア。どうしたんだ?もしかして迎えに来てくれたのか?」

「は、はい。その…馬車が見えたとソクラテスが帰宅の準備をしていたので先に来てしまいました。」

「そうか。」


アーヴィンは微笑み、セシリアを抱き上げた。


「きゃあ!?ア、アーヴィン様…?」

「私が居なくて寂しかったのか?」


セシリアは少し顔が赤くなる。


「は、はい…実はアーヴィン様がいらっしゃらなくて少し寂しくなりました。」


アーヴィンの肩に置いている手でギュッと服を握りしめる。

アーヴィンは握りしめられた服を見ながら少し笑った。



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