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ディミトリア家と対面(1)

「ヴェリエール侯爵様!お待ち下さい。」


2人で並んで歩いていると、突然横から話しかけて来る2人の母娘がいた。


「私に何か?」


「お初にお目にかかりますわ。私()()()()()の母、ラシオーネ・ディミトリアと申します。このような場所での挨拶が初めてになる事をお許し下さい。」


アーヴィンの眉がピクンと動く。


「今日は娘のファネットは居ないんですの?」

「ああ。今日は別のパートナーとして来ただけだ。」

「まぁ!別の…そうでしたの…会えなくて残念ですわ。」

扇子で顔を隠しているがラシオーネはあからさまにクスクスと笑っていた。


(この義母…セシリアの待遇が悪いと思ってセシリアを馬鹿にしているんだろう)


「お母様…もしかしてこの方がヴェリエール侯爵様なんですの?こんなカッコいい方だなんて知らなかったわ!」

「ファネ…っ!セシリア何を言ってるの?!謝りなさい!申し訳ありません侯爵様…セシリアは大事に育てた娘ですので何せ社交に疎いんですの。ご容赦くださいませ。」

「構わん。そちらの女性は娘という方は妻の妹なのか?」

「は、はい!私、ファ…セシリア・ディミトリアと申しますわ。以後お見知りおきを。」


セシリアの名を名乗っているファネットに対してアーヴィンは嫌悪感を感じ拳を強く握りしめる。


「ああ。私は用事があるのでこれで失礼する。行こうシエル。」


冷たい視線をラシオーネに送り、怒りを露わにしながら歩くアーヴィン。


「お兄さま…何故あの子はセシリア様の名前を名乗っているの?」

「帰りの馬車で教えよう。」

「…分かりましたわ。」


シエルはチラッとディミトリア母娘を見てアーヴィンについて行った。


去っていくアーヴィンの背中をずっとキラキラした目で見つめるファネット。



「フンッ…相変わらず冷酷な男ね。」

ラシオーネはアーヴィンに嫌悪感を抱き悪態をつく。


「ねぇお母様は知っていたんですの?侯爵様があんなに素敵な方だなんて……」

「ええ?外見だけよあんな人。女性嫌いで表情ひとつ変えない冷たい人よ。今だって笑顔一つもなかったじゃない。調子に乗って腹の立つ…」


「お母様…私あんな格好いい人見た事ないですわ!もっと早くお顔が分かっていればセシリアになんて行かせなかったのに……私が侯爵様の所に行きたかったわ!ねぇ、お母様、どうにかして私が行けないかしら?あの方の元に!」

「む、無理よ。今さら間違いでしたなんて言えるわけがないじゃない。それに貴方には恋人がいるでしょう?」

「侯爵様を見たらあの恋人なんて霞んで見えるわ。ねぇ!お母様私侯爵様の所に行きたいの!」

「ファネット…あの人の非道な扱いを噂で聞いたことあるでしょう?それに今日だってセシリアはいない。他の女性とパートナーを組むくらいですもの。きっとセシリアは今頃冷遇されているのよ。良い人ではないわ。諦めて貴方はもっと優しくてお金を持ってて爵位のある人にしなさい。」


「そう、分かったわ…。」

(お母様に言っても無駄ってことがね。)


「良い子ね、ファネット。他の方に挨拶しに行きましょう。」

「分かりましたわ。」


(絶対に私が何としてでも侯爵様の妻になってやるわ!見てなさいセシリア、あんただけに良い思いなんてさせないんだから!絶対に諦めない……)


ファネットは不適な笑みを浮かべながらラシオーネの後をついて行った。

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