シエル(1)
「ところで…この方はどなたですの?」
冷たい視線でセシリアを見るシエル。
「も、申し遅れました。私、セシリア・ヴェリエールと申します。」
「ヴェリエール…?どういう事?」
「シエル、セシリアは私の妻だ。」
「つ、妻ぁあ!?…あ、そっか。いつものようにお兄さまの冷酷さにすぐ逃げ帰るパターンね。いい?お兄さまは女性が苦手なの。貴方みたいな人が近くにいてはいけないのよ!」
シエルがセシリアに指を刺し詰め寄る。
「は、はい…」
(これは一体どういう状況?!お兄さまってアーヴィン様に妹がいたの?急に入って来たし何が起きてるの!?)
「こらシエル、セシリアが混乱してるだろ?」
アーヴィンはセシリアとシエルの間に入る。
「セシリアは私の大事な妻だ。丁重に接してくれ。」
「だいじ…?な、なんで…なんでこんな可愛くない女が大事な妻なの!?私と結婚してくれるって約束したじゃない!!」
「いや、してないが?どこでどうなってそうなった?」
激昂するシエルを見ながら冷静にツッコむアーヴィン。
セシリアはシエルとアーヴィンのやり取りを見ながら後ろに後退りし、待機していたソクラテスに話しかけた。
「あ、あの…シエル様はアーヴィン様の妹さんなのでは?」
「いえ、旦那様の妹ではありません。」
「誰の妹さん?」
「私の妹です。」
「そう…ソクラテスの………え゛!?」
「仰りたい事は分かります。なにぶん知能が低く傲慢で我儘しか取り柄のない子ですので。」
ソクラテスはずっと表情は変わらずに淡々と喋る。
「悪く言い過ぎじゃない…?家族でしょ?」
「いえ、血だけは繋がっている他人です。」
「それ家族だから。他人じゃないって…」
「奥様、妹が大変失礼致しました。」
「え?私失礼な事されてないけど…?すごく可愛くて元気のある女の子だね!ハッキリ物を言う所なんてカッコいいし憧れるな〜。」
シエルを見ながら笑顔になるセシリアをみてソクラテスは少しビックリした表情になる。
「奥様は優しいですね。」
フッと笑みを浮かべながらセシリアを見る。
(わ…ソクラテスが笑ってる!貴重な瞬間を見てしまった…)
「そこ…何良い空気になってんだ。」
私とソクラテスの前に急に現れるアーヴィン。
「わぁ!?アーヴィン様…ビックリしました…」
「ソクラテス、セシリアは私の妻だからな。必要最低以上に接するな。」
アーヴィンに後ろから抱きつかれるセシリア。
「承知しております。安心してください旦那様。」
「いーや!安心出来ん。お前、絶対セシリアの様な女性好きなの私は知っている。」
セシリアとソクラテスは目を丸くした。
「旦那様…私は旦那様の妻を攫うつもりも好意を持つつもりも毛頭ありませんし、好きな女性のタイプも違います。」




