アーヴィンの部屋(2)
「セシリア、このお肉好きだろ?ホラ、あーんして。」
「あ、あーん…?」
モグモグと食べているセシリアを満足そうな表情で見るアーヴィン。
「アーヴィン様、私は自分で食べられるのでアーヴィン様も自分の分を食べて下さい。」
「セシリア、俺の事はいい。ホラ、口開けて」
「でもアーヴィンさ…」
「お口?」
セシリアの言葉を遮る様に強めの口調でアーヴィンは催促する。
「あーん…」
セシリアは言われるがままに行動するしかなくなった。
(いや、あーんが多いって…恥ずかしいからやめて欲しい!)
赤面しながらモグモグ食べていると壁側で待機しているソクラテスとミサが肩を震わしながら笑いを堪えている。
(ソクラテス、ミサ…こっち見ないでよ!)
キッと2人を睨むセシリア。ソクラテスとミサは咳払いをしながら親指を立てる。
「グッジョブ!奥様!旦那様が喜んでおられますよ!」
ミサは小声でセシリアに伝えた。
(誰か止めてよ…)
「セシリア、このスープも美味しいんだ。飲んでみて。」
「…はい。」
ご機嫌なアーヴィンの表情を見てセシリアは少し意地悪してやろうと思い立った。
「アーヴィン様。いつも食べさせて貰っては申し訳ないので…アーヴィン様もこのスープを飲んでください!ホラ、あーんして?」
さっきまで笑っていたソクラテスとミサはセシリアの行動にビックリして顔が真っ青になる。
「奥様…それ怒られますよ!!」
「おい!機嫌が悪くなる事するな!」
2人は一生懸命小声でセシリアに伝える。
「え。」
(やばい…もしかして私やってしまった…!?調子に乗りすぎた!)
ソクラテスとミサの顔面蒼白な顔を見た後、そーっとアーヴィン様の顔を見ると、もう既にアーヴィンはスプーンですくったスープを口に咥えて飲んでいた。
「うん…確かにいつも以上に美味しいな。セシリアが食べさせてくれたから余計に美味しいのかもしれない。」
(え。食べた…それもご機嫌に…)
セシリアとソクラテス、ミサは同時に同じ事を心の中で思っていた。
「旦那様…ああいうの嫌いだったよね?」
「まぁ…それほど奥様の事を本気だという事なんじゃないか?」
「変わりすぎて…若干引く。」
「おい、思っていても言うな。」
ソクラテス達は聞こえない様に小声で悪口を言っていたがご機嫌なアーヴィンには聞こえなかった。




