アーヴィンの部屋(1)
「セシリア、ちゃんと部屋にいるか?」
数時間が経ち、アーヴィンが部屋に戻ってきた。
「はい、アーヴィン様。ミサにお風呂と着替えも手伝って貰いました。」
「捻挫していると医者から聞いた。歩けるか?」
「えっと…少しゆっくりですが…その…足が腫れていて歩かせられないからとアーヴィン様の部屋のお風呂を使わせて貰いました…。」
セシリアは少し照れながらアーヴィンに話した。
「ああ、それは私が許可したから問題ない。」
「アーヴィン様が許可してくださってたんですか?!
他人のお風呂って恥ずかしいです…。」
ボソッと独り言のように小さい声で呟くセシリア。
「他人?私達は夫婦だろう?同じ風呂に入ったって問題ない。」
「え゛!?…ああ…そうでした…。」
アーヴィンはムッとした顔をする。
「どうやら…セシリアには自覚がないんだね?セシリアは僕の妻だろう?」
「だ、だって…契約結婚ですし…肩書だけの妻ですよね?それにアーヴィン様は女性がお嫌いなのかと…」
「セシリア…」
「ひぃぃっ」
アーヴィンがセシリアに近づいていく。ソファに座っているセシリアはできる限り後退りをする。
最大限端まで後退りして動けないセシリアにアーヴィンは覆い被さるようにソファに乗る。
「君は僕の気持ちに全然気付いてないのか?」
「き、気持ち…?」
「僕は君の存在がとても大きいんだよ。もう居ないなんて考えられないくらいだ。」
「なるほど…?」
(そうか、私が居なくなったらまた新しい人と一緒にならなきゃいけない。女性が苦手なアーヴィン様はこの繰り返しに飽き飽きしているのね!?私がここに居ればきっとそのストレスからも解放されるって事ね、、成る程!それにこの契約結婚が恩返しになるのなら…!)
「理解しました!アーヴィン様のストレスにならないようしっかり妻として努めます!!」
セシリアは目を輝かせ純粋な表情でアーヴィンを見た。
「…全く違うが暫くはもうそれでいい…でも、私はもうセシリアを逃さないからね。」
「はい!私はもう皆の知らない所で屋敷から出ません!」
「………。」
全く伝わっていないセシリアを見てアーヴィンはため息を吐く。
その後アーヴィンはフッと笑った。
「そうだな。屋敷から出ないでくれ。これから私の部屋から出るのも許可がいるからな。」
「へ…?私は自分の部屋があるので…。」
「今からここがセシリアと私の部屋だよ。」
「え…えええ〜!?」
(な、なんでどうして〜!?男性と2人一緒の部屋なんて無理よ!)
混乱するセシリアを見て楽しそうにニコニコと笑うアーヴィン。
「さぁ、食事が来たからここで食べようか。今日はセシリアの好きな料理だよ。」
「は、はい〜…。」
苦笑いをするセシリアには構わず嬉しそうに食卓に料理を並べるアーヴィンだった。




