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変わる心(1)

「す、すまない…。傷を調べるのに夢中になってしまった…。」


アーヴィンも顔を赤くなる。


「いえ…。」

「この傷は君の家族が?」

「……。」


セシリアはどうしても言葉が出なかった。

言ってしまうといつかその事が義母や義姉にばれてまた折檻されてしまうのではないかと思うと怖くなり言えなかった。

「あの…、3年後私は離縁した後1人で暮らしたいと思っています。なのでディミトリア家には離縁した後の事は話さないで欲しいんです。」

「分かった約束しよう。それと…傷もなるべく早く治せるよう善処しよう。」

「ありがとうございます。」

セシリアがはだけた服を着直していると

アーヴィンは用意されたパン粥を持ってセシリアの前に来た。

セシリアは持って来てくれたお皿を受け取ろうと手を伸ばすとアーヴィンはスプーンでスープをすくい、セシリアの口元まで持って行った。

「どうぞ。」

「え…。」


アーヴィンはそのままずっとスプーン持ってセシリアが口を開けるのを待っている。


(え…?まさか…食べさせてくれようとしてる…?)


「あ、あの…そこまでして頂くわけには」


真っ赤になりながらセシリアは断るとアーヴィンは更にスプーンを口元に近づけてきた。


仕方なくセシリアはパクッと食べるとまたスプーンを口元に持ってくる。


(これは…食べ切るまで続くやつだわ)


じーっとセシリアを真顔で見ながら永遠とスプーンを運んでくるアーヴィンを見て可笑しくなり笑ってしまうセシリア。


「ふふ…ふはは…っ」


ふわっと可愛く笑うセシリアを見てアーヴィンは鼓動が早くなり、見惚れてしまう。そしてセシリアの笑顔につられて一緒に笑ってしまった。


「旦那様…そんなに真顔でスプーン持って来られたら変です…ふふっ」

「そんなに可笑しかったか?あまりやった事がないから何が正しいか分からない。難しいな…。」

「それは…あまり誰もやらないと思います。」


また2人はクスクスと笑って穏やかな空気になる。


「あの旦那様…」

「アーヴィンでいい。」

「え…旦那…」

「アーヴィンだ。」

「ア、アーヴィン様…」

「うん、なんだ?」


アーヴィンはとても満足している表情をする。


「あの、もうお腹がいっぱいになったのでもう大丈夫です。本当に優しくして下さってありがとうございます。」

「そうか。部屋に戻るならミサを呼ぶ、待ってろ。」

「はい。」


(最初はあんなに冷たくて、殆ど会う事はないって言われたけど…アーヴィン様は無愛想だけど優しい人なのかも。)


セシリアはアーヴィンの優しさで温かい気持ちになる。


「ファネット、ミサが来た。」

セシリアは名前を呼ばれても反応しなかった。


「ファネット?」

「…あ!はい!」

(今、私はお義姉様の名前だったの忘れてたわ…)


「ミサが迎えに来た。」

「ありがとうございます。あの、アーヴィン様。」

「なんだ?」

「おやすみなさい。」


ニコッと笑いながらセシリアは挨拶するとアーヴィンはフッと笑って頭をポンと触る。


「ああ。」


セシリアは部屋から出た。


「あの子の名前……」


アーヴィンが考え事をしているとドアがノックされた。


「旦那様、ソクラテスです。報告にあがりました。」

「入れ。」




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