初めての晩餐(2)
アーヴィンがセシリアの手に触れるとセシリアの手はビクッと大きく震えた。
「ファネット嬢…。驚かせて申し訳なかった。この家では誰も貴方の事を傷つけたりしない。食事も4日ぶりなら肉料理も重かっただろう?パン粥を用意させよう。」
セシリアの震えは少し収まり、アーヴィンを見つめる。
「旦那様が不在の時も私を殴ったり蹴ったりする人はいないですか?」
「ああ。そんな事をする人はいない。」
「部屋に閉じ込められたりしませんか…?」
「………君はどんな生活をしていたんだ?そんな事はしない。」
セシリアの大きな瞳からぽろぽろと涙が溢れてくる。
「もう…本当に痛いのを我慢しなくていいんだ…。」
アーヴィンはセシリアの頭を撫でる。
「ファネット嬢、今までよく頑張って来た。これからは何も怯えなくていい。自由に過ごしてくれ。食事も毎日食べるんだ。」
「毎日…?カビだらけの硬いパンじゃなくて柔らかいパンが食べられるんですか?野菜も?」
「ああ、そうだ。」
「そう…良かった…」
ふわっと柔らかい笑顔で笑うセシリア。
初めて彼女の笑顔を見たアーヴィンはその笑顔に見惚れた。
ミサとソクラテスもセシリアの笑顔につられてホッとしながら口角が上がる。
ディミトリア家で一体どんな虐待を受けて来たのか…想像しながらアーヴィンは眉をひそめた。
アーヴィンはセシリアの頭の上にある手をそっと下ろし、両手で優しく握る。
その時服の隙間からチラッと見える腕の傷に目がいく。
「ファネット嬢、すまない。私の部屋まで一緒に来てくれるか?パン粥は私の部屋まで届けてもらおう。」
アーヴィンはセシリアを抱きかかえ自室へと向かう。
「え!?旦那様?」
助けてもらおうとミサを見たがニコッと笑っているだけだった。
(なんでアーヴィン様の部屋に!?)
いつの間にかアーヴィンの部屋に着き、ソファに座らされていたセシリア。
「ファネット嬢、少し傷を見せてもらうがいいか?」
「傷…?傷の手当てはミサにしてもらいました。」
「いや、どれくらいの傷か確かめたい。腕以外どこにある。」
「…全身です」
「全身…?」
「あ!いや、見える所には傷がないので服を着ていれば見えないので大丈夫です。」
「見えない所を狙ってやられたのか…陰湿だな。すまないが見せてもらう。」
「え…!?」
アーヴィンは腕や背中、足の傷を確かめた。
「アーヴィン様…あの…恥ずかしいです…」
傷に夢中になりすぎて気付くとセシリアの服がはだけていた。




