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天才という言葉を知る

ジャックは改めて天才だと知るいいお話になればいいなと思います。

では本編へGO!

 アンヌは先ほど到着したこの町の大通りでアクセサリーなどの小物の買い物をしながらも朝方の光景を未だに忘れらないでいた。

 ジャックが言うほどアンヌ自身はあの頃をトラウマとして捉えているわけじゃなく、多少引っ掛かる感じは残っているがそれでも解呪したことを間違いだと思ってはいないのだ。

 呪いを使う方がおかしいのであって、ましてやそれを年端も行かないような幼い子供たちに使うなんてどんな理由が在ってもアンヌは許そうとは思えなかった。

 アンヌの心に引っ掛かっている部分は、そこではなくあくまであの朝太陽が上がる前にジャックが現れたキング種に対して行った攻撃だった。


「なあ…ナーガは呪術や聖術を行使できないのではなかったのか? ジャックが朝方行った魔術は聖術だったぞ?」


 アンヌの買い物の荷物持ちをしているディラブがそんな疑問をアンヌへと投げかけると、アンヌは「原則はそうだよ」とディラブの方を見ない様に簡素に答えた。

 原則上ナーガは魔術を行使するが、聖術と呪術を行使することは出来ない。

 だが、ジャックは現れた亡霊系のモンスターのキング種を討伐するにあたり聖術唯一の攻撃系の式である『ホーリー』の亜種を使った。

 これはナーガには出来ない芸当である。


「では何故使ったのだ?」

「予想することは出来るよ。本人が何も言わないから証明しろと言われたら困るけど。魔術は聖術と呪術の丁度中間地点の術式で、本来この二つを行使することは出来ない。でも、ジャックはかつて勇者と言われた聖術の使い手。中でも攻撃系統の『ホーリー』は達人クラス」

「使ったことがあるから行使できると?」

「そうじゃない。けど、ジャックには裏技がある。一度メビウスインパクトを製造しそれを自分だけのオリジナルの術式に作り替えるという技を持っている。一度使えば体や頭ではある程度理解できるから。多分再現したんだと思う。いわばあれは『疑似ホーリー』だね」

「そんなことできるのか?」

「ナーガの生体上の法則をジャックはテクニックで無視したんだよ。普通なら考えないけど…けど、あれはホーリーの威力じゃないよ」


 ホーリーは攻撃系統ではあるが、肉体にダイレクトなダメージを残すようなタイプではなく、亡霊のような特殊なタイプを消去するような、それでいて邪悪な敵に対する攻撃方法なのだ。

 肉体を焼くような痛みと共に敵を消去するという一番ヤバい攻撃力だが、同時に邪悪であることや亡霊のように肉体を持たない敵出なければ効かない。

 それに邪神のように特殊な個体も効きが悪く、ある程度なら防ぐことも出来るのでアンヌはあまり使わない。

 本来であればキング種を一撃で倒すような威力は出来ないはずだが、ナーガの中でもトップクラスの魔力量を誇り、長年の経験とオリジナルの術式というメリットを最大に生かした本来なら存在しない高威力のホーリーを作り出した。


「ジャックは本当に化け物時見ているな。その内呪術も習得するのでは?」

「多分それは無理。あくまでも何度も使ったことがあるから出来る芸当だよ。同じことを呪術でしろって言われたらジャックは「出来ない」って答えると思うもん」

「あくまでも使ったことがあるから使用できる裏技という事か。それでも聖術を魔術として行使するとは」

「あくまでも攻撃系統だからだよ。補助や回復までは再現できないよ。使い方が異なるし、元々本人は苦手にしていたから」


 アンヌは今にして思えばと本当にそう心の奥で抱く。

 あれはナーガだっただけに苦手だったのだと。


「お爺ちゃんはあまり驚いている素振りは無かったから、もしかしたらだけど「使えるかも」ぐらいは予想したかもね」

「あの爺ならそのぐらいは予想できそうだな。無駄に長生きしているみたいだし。だが、余計に分からん。ならどうしてジャックはあの男に使おうとはしなかった?」

「使えなかったんだよ。使うならそれなりの準備が居るし、何よりもとっさに出来ることじゃないもん。ちゃんと練習して慣れて行かないと。ジャックは良くも悪くも魔術を習得してから決まった術しか使わなかった」


 ブラックホールが強すぎてジャックはこの技を連発するようになった。


「オリジナルの術式を使うときはきちんと練習する必要があると思うし。ジャックは天性の才能が有ったから今までは良くも悪くも作ろうとは思わなかったんだよ。ブラックホールだって作った術式だし」

「良くも悪くも天才だからか?」

「そうだね。油断していたというのも大きいけど。今回の場合はホーリーでもないと倒せないと踏んだからでしょ。私のホーリーじゃ威力不足だって感じていたし」


 アンヌはそんなことを言いながら目の前に並んでいる食器類を眺めていく。

 ピカピカに磨かれた食器に映っている自分の顔を見てしかめっ面を作り、今度は笑顔を作ってみてもイマイチ乗り気にならなかったのかまたしかめっ面に戻る。


「私は良いの。割と割り切っているし、ジャックもそれが分かっているからあの二人が寝ている間に素早くけりを付けるって決めたんだし。私が懸念しているのはあの二人だよ。どれだけ酷い目に遭っても故郷だから」

「それもそうだな。だが、俺はきっと普通に乗り越えられると思う。あの二人には強く逞しく生きることが出来る才能があるように思う」

「あのお姉さんのメイビットの方は明らかに真相に気が付いていたきらいがあるし。わざと解呪しないで居たんだと思うけど」


 解呪することで呪いを村中に返すことになると分かっていたのだろうが、それをアンヌは優しさだとは思えなかった。

 それは甘さだと、だがそれをいう事に意味があるのか。無い。

 それははっきりと分かるのだ。


「ジャックが早いうちに気が付いたらどうしただろうか? 案外両方が救える道を…」

「探さないよ。意外かもしれないけど。あれで悪党みたいに呪いを付与するような人間を許す気はないはずだから。反省の余地なし。それは以外にもジャックの意見なんだよ」


 邪悪は決して許さない。

 どんな理由が在ろうとも邪悪を許さないし、許してはいけないとジャックは本能と言うべき部分で理解していた。

 たとえ反省していてもジャックは許さないし信じない。


「一度罪を犯してそれを認められた時点でジャックには許すという手段は無いんだと思うよ。まあ、それこそ背後関係にもよるとは思うけど。少なくとも村の人達が催眠されていたとは言え、集団でしかもたった二人を呪い殺そうとしたことを許すことは無いと思う」

「それがあればジャックは別の策を用意するか…」

「話していなかったのも、意味の無い約束事をしたのもあくまでも下法狩りの一環なんだろうしね。私は好きじゃないから勝手にすればいいと思うし」

「そういうのもあるんだな」

「どんな使い方でも表も裏も「絶対に超えてはいけない一線」があるからね。その一線を超えれば問答無用で下法だよ」

「他にもあるのか? 下法と呼ばれている手段とか」

「あるよ。話さないけど。興味を持たれても困るし。知らないで済むのならそれが十分だよ。普通に生きている分では、どんな理由が在っても多分使わないし」


 実際アンヌも数えるほどしか見たことが無い。

 それだけレア度が非常に高い下法と言う者達。


「外にもいるんだな。見たこと無いけど」

「居るみたいだね。私も見たのは初めてだし聞いたことも無かったけど。ジャックはあの様子だと聞いたことぐらいはあったみたいだね」

「隠し事をするな…アンヌは気に入らないようだな」

「私隠し事嫌い。今の何か隠し事をしている気がするし。全く話そうとしないけど…」


 ジャックがアンヌに隠している事、それをアンヌ自身が知る日が来るのかそれが気になって仕方が無かった。

どうでしたか?

もう少し話が進めば新たな登場キャラクターが現れます。

では次は双厄のホビット第七話でお会いしましょう!

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