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虹色の羽を求めて

簡単な戦闘回ですね。

ネリビットというキャラクターがこんな感じなのだと分かっていただけたら幸いです。

では本編へGO!

 エルベリア山は急斜面な尖った山となっており、周りにはそこまで多くの山々に囲まれているわけじゃないので遠くからでもはっきりと目立つ。

 先端が二つに分かれている感じがして山であり、外を上っていくのではなく中の洞窟を通って登っていく感じなのだとか。

 出入口は二つあるらしく、俺達は南側から入っていくことになり、大きな洞窟の入り口に入っていくと、まるで虫食いのような跡が出来ている洞窟の中を下から見上げるような形になった。


「この山は中と外を何度も行き来しながら進んでいくんです。現れるモンスターも飛行するタイプと立体的に動くような虫で言えば蜘蛛みたいな形が多いですね。四肢で踏ん張って移動する感じです」

「みたいだな。あちらこちらから視線を感じるし…ディラブが前衛だな。俺とネリビットは後方からの攻撃だ。君の武器は?」


 ネリビットは後ろに持っていた袋から大き目のバズーカを取り出してしっかりと抱えるように握りしめるのだが、どうやらバズーカと言う言葉と武器を知らなかったようで首を傾げるディラブ。

 どうやって生きていけば知らないのかが分からないのだが、普通に生きていてもそれとなく知識程度には仕入れそうだけど…それに俺達のように戦闘が仕事みたいな職種だと尚更である。


「特性バズーカです。銃弾はこの片手で収まる程度の物なんですけど。これは充電式となっていて、魔力を充電してそれぞれ用途が違う術式が出るんです! 手元で操作すれば射出する術式の形もある程度は変えることが出来るんです。まだ試作段階ですけど…」

「という事はこれは君が自分で作ったのか?」

「はい。俺達姉弟は錬金術師ですから。これも自作できますよ。ある程度のパーツを錬金術で作った後に組み合わせて作ったんです」

「魔力のチャージってどうするのだ?」

「錬金術で作ったこのボックスに魔石が入っていて、このボックスで充電するんです。使う術式は射出する際にバズーカに備え付けている画面で操作できます。俺ぐらいになれば一秒もあれば操作変更できますから」


 そう言いながらネリビットは腰につけている魔法のポーチから人の頭程度の大き目の正方形の箱を取り出して見せてくれた。

 どうやらあれにくっ付けて充電するらしいのだが、良くできた仕組みだ。

 その辺の錬金術師よりよほど腕前が良いだろうに、これで才能が埋もれていることが勿体ない。

 戦闘技術に対してはあまり期待しない方が良さそうだが、それでも錬金術師としては十分過ぎるほどの腕前だろう。

 こんな村で無ければ相当儲けているはずだ。

 歩いて登っていては日が暮れるので、ここは少々ズルいとは思ったが、立体的でかつ上り易い構造のダンジョンなので上まで魔術で一気に登ってしまおうと思い術式を練る。

 上へと昇っていく過程で飛行系のコウモリ型の『バルキー』が群れで襲ってきたわけだが、それをバズーカの雷系の攻撃で一網打尽にしてしまった。

 一旦見える限りでの一番上の出入り口近くに降りると、今度は爬虫類型のモンスターである『ダンサー』と呼ばれるモンスターが真上から仕掛けてきた。

 四つ足走行かつ体中は分厚い茶色い鱗で覆われている筋肉質の大柄、口は大きく突き出ており顎の力であらゆるモンスターをかみ砕くと言われている。

 そう…言われているのだ。

 ディラブが斧で一発吹っ飛ばさなければ、さぞかし立派な攻撃が来たに違いない。


「さあ。行くぞ! 腕試しにもならん」

「この辺のモンスターなんて腕試しになるのか? どうせ下級から中級程度だろ?」

「最近は上位系しか行かなかったから歯ごたえが無いな」

「す、凄い…一撃だ」


 俺達は歩いて一旦外に出ると、太陽の眩しい光に一瞬だけめまいを起こしつつ俺は右腕で光を遮りつつ足元に襲ってきた犬みたいなモンスターを地平のかなたへと蹴っ飛ばす。

 ディラブは案外慣れているのかまるで光にめまいを起こすことなく外へと出てきた。

 ネリビットも一瞬だけ右手で遮りつつ直ぐに右手をどけた。


「今何か蹴っ飛ばしたか?」

「知らん。襲ってきたから蹴っ飛ばしただけだ。さて…道なりに進めばいいのかな?」

「はい。此処が中腹ですからしばらく山を回り込むように移動すると丁度反対側に上へと昇る為の入り口がまたあるはずです。山頂はそこから洞窟を進んだ先ですね」

「じゃあ。早めに行こうか」


 俺達が歩き出すと左右彼方此方から小型のモンスターが襲い掛かってくるわけだが、俺とディラブはそれと蹴っ飛ばしたり殴って吹っ飛ばしたりと乱雑に相手をする。

 実力差があるのは分かり切っているのだから大人しくしていればいいのにな。

 ネリビットはバズーカを握りしめながら左右を確認するように歩いており、時折俺達が軽く相手をしているのを「凄い」と感心した風に見ていた。


「あの少年に何か思うところでもあるのか? やけに気にしているが」

「可哀そうだと思っただけさ。何か境遇に感じるものがあるわけじゃない。姉弟の力だけじゃどうにもならない現実は時にある。そういう時は周囲に人達が手を差し出すしかないんだ。だが、彼らのようにそれも出来ないような境遇なら見捨てるなんて出来ないだろう?」

「そうか…お人好しだな。普通町や村単位で嫌われている人間でしかも赤の他人なら放置すると思う」

「それが出来るほど俺は人として落ちぶれることは出来そうにないな。それに、あの村は危険だ。早めに脱出した方が良い。早めに治療したらさっさとあの姉弟を連れて出て行こう」


 ディラブは飛び出してきた犬型のモンスターを蹴っ飛ばしつつ「何故?」と尋ねてくるわけだが、俺は「いや…」と言い辛そうに答えた。


「あの村は住民の殆どが軽い催眠状態なんだ。何か暗示のようなものを常にかけられているようで、記憶の差異のようなものが見られる。ディラブが村に入ってから気持ち悪いと言ったのは匂いを使って催眠を掛けていたからだろう」

「? だが、俺達は何ともないぞ」

「加護のある人間は効かん。だが、嗅覚などが敏感な人間は匂いで立ち眩みや気持ち悪さを訴えることはある。村中で焚いているお香があった。多分あれだ。あの子達の家には無かったから多分、誰かが仕入れたものだろうけれど。

「ならお香を消して回ればいいのでは?」

「あくまでも最初の切っ掛けに使われているだけで、今消して回っても根本的な解決にはならないうえ、もう意味は無い。それに、消していく過程で別の問題が生じるさ。それこそ大きなトラブルになる。最悪死者が出る。村人にな」


 それは出来る限り避けたいんだ。


「あの子達には追々説明するが、明日の朝にでも俺は村を出たいんだ。今日一日守り切ればこっちの勝ちだろう」

「今日襲ってきたら?」

「交渉するだけだ…それが効かないなら最悪その場で強力な催眠でもかけるさ。俺とディラブでなら相当強力な催眠が掛けられるはずだしな」


 アンヌがそんなことをしたがらないし、リアンはそもそも出来ないだろう。


「あのさ!」


 ここでネリビットから声が掛かり俺達はヒソヒソ話を止めてから向き直るとネリビットは大きく輝かせたような瞳で俺達に聞いてきた。


「二人の事兄ちゃんって呼んでいい!?」

「へ? まあ…好きに呼べばいいけどさ」

「ほんと!? やったー!!」


 年相応の元気の良いリアクションに驚きつつやはり「まだまだ子供だな」と思うばかりだ。

 あんな境遇の中にいるから大人びようとしているのだろうが、それでも内面はいろんなことに興味のある子供なのだと分かる。

 飛び跳ねたり素早くはしゃぎ回っていると、先ほどの子犬サイズのモンスターとは違う背丈だけで三メートルは有ろうかと言う大型サイズが現れた。

 ネリビットは流石に驚きながら腰を抜かしていると、ディラブが斧でその大きな体を真っ二つにしてしまった。

 子供の前で残酷な一撃を。


「スゲェ…」

「はしゃぐのは良いがあまり騒いでいるとああいう音に敏感なモンスターがやってくるから気を付けろ。良いな?」

「う、うん!」

「ほら。行くぞ。今日中に帰るんだからな」

「分かってる! 行こう! ジャック兄ちゃん!」


 種族を超えても絆はあるんだ。

 そう思わせてくれる…そんな出来事だった。

どうでしたか?

後数話でこの村のお話自体は終わりですが、終わりは結構つらい形になります。

では次は双厄のホビット第四話でお会いしましょう!

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