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エピローグ:赤鬼のオーガ

赤鬼のオーガ編最終話となります!

では本編へGO!

 勇者の剣を完全に使いこなすことが出来るのはその作った当代の勇者本人だけで、他の勇者が使っても能力の半分しか引き出せない。

 それでも、邪核を取り除いた邪神とはいえそれでも十分すぎる強さを持つ(と言うか取り除いてもあまり強さに変わりはない)邪神を討つことが出来る。

 これは俺個人の資質の高さが由来なのだろうが、それでも本来の出力の勇者の剣の攻撃力に拾ったばかりの大剣で勝てるわけが無かったのだ。

 邪核を取り出されたことで、目の前にホビットの遺体があることでノルヴァスが握りしめていた剣に目がいかなかったのは不覚だった。

 吹っ飛ばされた俺の体は屋敷から飛び出してそのまま港との丁度中間地点で止まる。

 傷口事態はあっという間に塞がってしまうわけだが、それでもフルパワーに近い出力を出している勇者の剣の攻撃力に勝てる気がしない。

 皆が驚いて俺の方を見るわけだが、そんあアンヌ達の足元に切れた先の大剣の刃が突き刺さった。

 そして、現れたノルヴァスが握りしめている剣を見てアンヌも驚く。


「嘘…勇者の剣? しかも、フルパワーで出力を引き出してる?」

「という事は…どういう事なんだ!?」

「ディラブ…要するにこの男は先代の勇者という事じゃよ。百年前のな…邪神ベルターの討伐に失敗した勇者じゃよ」

「まあ…その言い方も仕方がないか。実際俺は失敗したわけだしな。やっぱりこの剣を持つと少し興奮するな。邪神ベルターを自分の剣なしで倒した功績は黙って認めるよ。俺は倒せなかった。命乞いをすることしかできなかったのさ。俺は自分の使命と短命という運命を前にして俺は自分の命を選んだ」

「それで生きながらえたと!?」

「全ての人間がお前のように強いわけじゃない。基本的に人間は弱い。それはお前が誰よりもよく見てきたはずだ」


 ノルヴァスは誰よりも見下すような、それでいて期待をまるで抱かないような瞳で俺を見下す。

 邪神ベルターを倒す旅の中で俺同様に自らの運命を知ってしまったのだろう。

 同時にヒューマン族の勇者とナーガ族の勇者の違いにも。


「たとえ俺が倒しても一時的な功績として認められるだけ、時代と共に功績は風化していくのさ。千年前の勇者の事も、二千年前の女神の事も誰も覚えているわけじゃない。たとえどれだけ長命の種が居たとしても、俺達の戦いはいずれ忘れられていく。下らないと思わないか?」

「千年先に生きる者達にまで俺の功績が届いてほしいとは思わない。今今生きている人達が笑っていられる世界が欲しいんだ。俺が生きる限り俺は目の前にいる人を救う。俺は勇者だから救うんじゃない。救うから勇者なんだ!」


 俺の言葉に戦意を失いかけていた兵士達も、アンヌ達すらも立ち直っていくのが分かる。

 メロンとドドナが唖然とするノルヴァスに向かって笑い声を発するのが分かった。


「残念だったね。ノルヴァス。この子はきっと君の対極にいるような人間だよ。ある意味勇者になる為に生まれてきたような人間だよ」

「全く同じ意見よ。貴方は自分のように堕ちて欲しいと思っているのかもしれないけど、ボスの言う通りこの人は私達と分かり合えないわ」


 ノルヴァスの歪み切った表情、怒りと憎しみを混ぜ込んだような顔を俺は初めて見た。

 少なくとも目の前に人を百人位並べていたらその百人を纏めて殺しそうな感じがする。

 今すぐにでも俺に向かって襲い掛かってきそうな中、俺は右手と左手にそれぞれ魔力を作り術式を素早く完成させた。

 ナーガ族ならぱっと見で術式を見抜きそうだが、いくら邪悪な道に落ちた元勇者とはいえ基本はヒューマン族でしかないノルヴァスに術式は見抜けない。

 実際駆け出そうとしたその身が一旦止まる。

 俺はある程度のダメージなら素早く回復するので、一撃で致命傷という事は絶対にない。 

 となるとノルヴァスが俺に勝つためには連撃しか無いわけだが、それでも俺が今現在ノルヴァスに勝てる可能性は低いどころか殆どない。

 これは賭けなのだ。

 そして、俺はその賭けに勝った。


 膨大な魔力を港側からはっきりと感じ、同時にノルヴァスが盛大に舌打ちをした。


「ノルヴァス。タイムアップよ。撤退」

「十将軍がしかも大将軍長と副長が来ているみたいね。私達が三人がかりで襲い掛かっても勝てないわよ」

「分かっている。この男を殺すとなっても難しいのに三人も揃われたら撤退も難しいだろう。貴様の命今一度預けるぞ。絶対に殺す」


 ノルヴァスはそんなセリフと共に結晶を取り出す。

 他の二名も同じように結晶を取り出してからその場を離脱していく中、一隻の船が港に辿り着いた。



 大将軍長が首相と共に降りてきて港一帯の惨状を目の当たりにすることになったわけだが、その後ろから副長が現れて両手で別の同じ術式を練りそのままゴーレムを崩壊させた。

 見たことが無い術式だからあの人固有の術式のようだが、俺は折れた大剣を握りしめながら首相達へと近づいていく。


「何かあったようですね。教えていただいても?」

「はい…実は」


 俺は三人に出来る限り簡潔にかつ正確に伝えて見せた、このオーク大陸で起きた一連の事件とその背後関係、そして今ここで起きたことを。

 大将軍長は俺の大剣を受け取りながら切れた断面をジッと見ると首を横に振った。


「無理だな。此処まで綺麗に斬られたら再生は不可能だろう。当初の予定通り勇者の剣製造に向かうべきだな」

「ええ。将軍長は直ぐに発ってください。私はオーガ王家と会談に入ります。副長は此処で復興作業を」

「分かりました。お任せください」

「折れた大剣は預かろう。どのみち荷物にしかならんだろう」

「……ええ」


 俺は黙って大剣を預けてしまうが、いざ失うとなると結構寂しかったりする。

 ディラブは「分かるぞ」とウンウンと頷いているのだが、多分俺ほどではないと思う。

 そこまで愛着のある武器でもないし。


「師匠に言ったらどうなるかしら?」

「ジャックが黙って震え始めたぞ?」

「恐ろしいことを言うな。武器を破壊されたなんていえば激怒する人なんだから…裸で肉食系の魔物の巣のど真ん中に置き去りにする人だぞ」

「そのまま見捨てられるのよね。戻ってきてもそのまま怒られるだけだし…」


 はぁ…嫌だな…怒られるの。

 バレない様にしないとな。


「しかし、こうなるといち早くでも勇者の剣を作った方が良いだろうな。首相の言う通りとにかく早く向かうべきだな」

「火山の目の前の町ですから。迷えば火山へと向かえばいいと思います。基本はナーガ大陸同様に鉄道が走っているはずですが、山が幾つかあるので乗り換えが激しいですね。そこだけ気を付けてください。僕はナーガの首相を父上の元へと送りますので…あの」


 俺達に何か言いたそうにしているババルウ君は涙目になりながらも堪えるような声を発する。


「ジャックさん達のお陰で僕は次期国王に成れるだけの人間になれました! この御恩は絶対に忘れません! 何かあったら絶対に駆け付けますから!」


 俺達はババルウ君へと手を振りながら歩き出していった。



「あの人達のお陰なんです…」

「そのようですね。私の判断は間違っていなかったようですね? 大将軍長」

「私が反対したみたいな言い方止めてください。何も言っていないでしょう?」

「役に立って見せます! あの人達が頑張る分僕も頑張ります」


 赤鬼のオーガ終わり。

 双厄(そうやく)のホビットへと続く。

どうでしたか?

次からは双厄のホビット編へと入り、早速ですが新パーティーキャラクターが登場します!

では次は双厄のホビット第一話でお会いしましょう!

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