城塞都市ランドロス 5
城塞都市ランドロス五話目となります。
今回から噂程度ですが登場するキャラクターは今後にも関わってくるキャラクターです。
では本編へGO!
翌朝の事結局俺達は朝食を頂いたわけなのだが、食堂に居たのは俺達以外には国王とババルウ君だけで、俺は隣で食事を取っているババルウ君をチラ見する。
別に食事のマナーが不安と言う話ではない。
ただ単にこの子はこの兄弟が食事の席に参加しない事をどう思っているのだろうか、そういう意味での事だったのだが。
どうやらこの子は全くに何も感じていない感じがする。
多分「言っても無駄なんだろうな」という気持ちだろうという事が目を見て分かる。
国王に至っては「どうでも良い」と思っている気さえ漂わせてくるが、この子は昨日の俺達のやり取りを知っているのだろうか、突っ込んで聞いてもいい物だろうかと悩んでいると国王が自ら口を開いた。
「特訓とはどうするつもりかな? 正直に言えばこの子は家庭教師などを付けていたので一通りのことは出来ると思うが」
「はい。ですのでまずは私とリアンで今日は知識の確認を一日通して行い、明日以降実戦と反省会を行います。時間が無いので結構厳しめの特訓になると思いますよ」
「構わない。本人もそれぐらいは覚悟の上だろう?」
「はい! お願いします!」
う~ん…あの国王の心の奥が読み難い部分があるのだが、内心がまるで読ませてくれない。
まあ国王なら当然の事かと俺は目の前にある卵のスフレをナイフで切りフォークで口に運ぶ。
ディラブはどうにもこのように行儀の良い食べ物は苦手なようで、ナイフとフォークの持ち方から既にぎこちないのに、一口食べるのに時間を要している。
リアンの方は流石元王族と言うだけあり、難なく食べられているしアンヌもあれで礼儀作法は教会でしっかり身に着けているので問題なし、俺の方は若干慣れない。
ぎこちなさは無いが、それでも問題は無いぐらいには食べられている。
「食べ難いなら別の食べ物を用意させるが?」
「いいえ。大丈夫です…多分…」
大丈夫な人間はそんな忌々しいみたいな顔をしつつ食事をしないと思うけど。
皆の倍以上の時間を掛けて何とか食事を済ませたディラブ、そんな彼の食事を待っていた俺はアンヌとリアンがババルウ君を連れて食堂を出ていくのを手を振って見送る。
国王は誰よりも先に食い終わりいつの間にか部屋を出て行っているし、掴めない人だな。
ディラブの食事が終わり次第俺達は町中へと繰り出すことにした。
「本当に携帯電話とやらは必要なのか?」
「生活必需品だろう? 今時持っておけって話だよ。何時でも連絡が取れる方法が有るのと無いのでは天と地の違いが出る。使えるものは使って生活するものだ」
俺達は一階の玄関守っている兵士から買えそうな場所を聞き、歩いてその場所まで移動することにした。
とはいってもその場所は此処から非常に近く歩いて十分の距離にあるアーケード街にあるとのこと。
正面から一キロ先までずっと真っ直ぐに続くアーケード街、俺達はその入り口に立っていた。
周囲が見る俺への視線が非常に居た堪れなさを感じるが、今更だと心を強く持ちつつ俺は一歩前に踏み出す。
目的のお店まで辿り着き、俺はディラブの分の携帯を購入後改めてディフェンダーの支店まで移動した。
流石にディフェンダー支店は歩くと遠いので馬車に乗って移動していくと、街の外れにそれが見えてきた。
「ここの町のディフェンダーは遠くに支店があるのだな」
「と言うよりは意味もなく中心地に置けないだけだろう? 所詮はモンスター退治や護衛任務などが仕事の本文なわけだし。意味もなく街中には置けないさ」
「それもそうか…」
俺達はディフェンダーの門を潜り中へと入っていくと、大き目の受付と壁中至る所に張られている依頼書が見えてきた。
何度見てもこの依頼書の数は中々なれないものがある。
俺達は受付の男性に来た内容を簡単に説明、国王や王族間にある噂話を聞いておくことにした。
「国王以外の側近の多くは次男を次の後継者に押したそうですが、国王はどうにも三男に期待をしているようでして、三男は家庭教師を何人も雇っては教育を施していたそうです。自ら湿地帯まで趣き何度も何度も指導を行ったと聞いています。継承の儀式ももう少し先に行う予定だったそうですが、最近急に一週間後に行うと進言しだしたとか。理由は不明ですが。長男はかなり直情的であまり賢いとは言えないのが特徴ですが、その分戦闘能力だけで言えば間違いなく他の二人を超えるようですが、次男にはどうしても勝てなかったとか。まあ、戦いとは力だけで決するものじゃありませんし。その次男も最近あまり良い噂を聞きませんね。チンピラのような悪童達とつるんでいたとも聞きます」
結構一気に貰った情報だったが、正直に言えばイマイチ進展も無いような気がした。
次男が悪童達と遊ぶようになったという話だが、その程度の連中では問題にはならないだろう。
「じゃあ次男と長男の協力者は分かっているのか?」
「いいえ。ですが長男だけなら何となくは想像できます。おそらく金にモノを言わせて雇った傭兵崩れでしょう」
傭兵崩れ。
金を支払ってくれるのなら何でもする元傭兵の事であり、基本は単独での仕事を好むが場合によっては複数人で組むこともある。
どこまで行っても金だが、金に五月蠅い一方で平気で約束事を破る連中だ。
「道中で何度か戦ったことがある。金儲けの為なら平気で人襲う連中だぞ。国王は何を考えているんだ?」
「さあな。興味が無いのか。果たして何か策を用意しているのか。その両方なのか」
「分かりません。問題は次男ですね。噂では最近更にヤバい連中と会っているという噂も聞きますし、歯止めが聞かない状態ですね」
だろうな。
昨晩も普通に襲い掛かる寸前だったわけだし、相手との力量さがまるで理解できていない気がする。
と言うよりは知力がずば抜けているとは見えない。
愚かではないのだろうが、危機意識が非常に薄い気がするな。
「そうでしょうね。良くも悪くもこの二人は甘く育てられたようですから。その点三男は良くも悪くも厳しく育てられたようです」
「厳しさは期待の裏返しだ。それだけ未だに期待しているという事だろう」
「私もそう思います。ですが、国の決まりは決まりです。継承の儀式が全てですから。何か策があるのだと思いますが、正直それ以上の事は推測も出来ないのが正直です」
最後に「お役に立てず申し訳ありません」と言い頭を深々と下げる受付の男性を背にして帰ろうとしたとき、最後にあることを教えてくれた。
「そういえば最近『黒いオーガ』を見たという話を聞きましたね。特に首都の中心部一帯で。長い長い一本角と四百メートルを超える巨体に身の丈に合った大きな両刃斧を背負っていたそうです。東の湿地帯へと繰り出す姿を何度か見ているとか」
俺とディラブの間で嫌な予感を感じさせていた。
あの一刀両断されたキング種、もしかしたらその黒いオーガが殺したのかもしれない。
どうでしたか?
黒いオーガはディラブにとってのライバル的なキャラクターにしようと考えています。
では次は赤鬼のオーガ第三十四話でお会いしましょう!




