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城塞都市ランドロス 2

城塞都市ランドロス二話目となります。

ディラブの常識知らずが分かるお話となります。

では本編へGO!

「城塞は朝の八時から開いて夜の十時前には閉まってしまうんです。ですから、今日お父さんに会ったら多分出られないので今日は城塞に泊ってください。お父さんには僕の方から言っておきますので」


 ババルウ君がそんな提案をしてくれたわけだが、まあ出られないなら仕方がないと俺達は納得する。

 頭の中ではオーガの国王という存在を想像しては違うだろうなと否定する時間を繰り返していた。


「国王様ってどんな人? 性格とは何となく聞いたけど詳しくは知らないなと思って。敬語とかきちんと喋らないと殺されるぐらい厳しい人なら危ない人が結構いるなと思って」

「なんで俺を見る? 敬語は喋れずとも黙ることは出来るぞ」

「名前を名乗れと言われた時も同じ手段を言い訳として使う気か? 通用するわけないだろうに。ていうか敬語ぐらい喋れ」

「最低限の敬語は教えるべきかのう? 今後敬語を喋るような機会もあるじゃろうし」

「大丈夫ですよ。出会い頭に罵詈雑言を浴びせない限りは、基本温厚な方ですから」


 オーガの国王はどの程度まで世界情勢を知っているのだろうか、流石に突っ込んで聞こうとは思えない。

 それは多分聞いたら失礼な分野だろうとは俺でも良く分かる。

 だが、出来ればナーガ政府からの意向とは別にきちんと一対一で話をする機会を作りたいものだ。


「食事も城塞で用意させていますので」

「それより二人のお兄さんも同じ食卓を囲むのか?」

「いいえ。基本僕達は別々の場所で食べるんです。特に一個上の兄は一人で食べることが多く…」

「そうか…」

「同じ食事の席でそれとなく探ろうとか考えてた? まあ、何となくジャックの考えることが分かる」

「まあな。それが出来れば一番楽だからさ。下手に探りを入れるのも難しいしから。王族は気を遣うよ」

「おや? 儂は気を使われたことが無いがの」

「「「気を使う必要があると?」」」

「無いです」


 面白い会話をしつつ俺達は城塞までの道のりを馬車で進んでいるが、すっかり夜も更けてきたので街中は街灯が赤い壁や赤い地面を明るく照らしている。

 俺からすれば街中をしっかり歩いてみたい気がするので、明日の朝にでも出かけてみよう。


「そういえばババルウ君の修行なんだけどさ。私とジャック君で剣術の修行、呪術の実地指導と勉学はディラブとリアンに任せてもいいかな?」

「ああ…そういう意味か。良いんじゃないか? 流石に斧使いに剣術を教えろって話自体が無理な気がするしな」

「無理だな。斧と剣では戦い方がまるで違う。大降りになってしまう斧ではオーガの剣術とは違いが出る」

「じゃのう。儂は何を教えるんじゃ?」

「呪術を教える程度は出来るでしょ? 仕事して。仕事をしている時間にナンパしていたら鳩尾に拳が叩き込まれますから」


 リアンの顔面が青ざめていくのだが、昨晩いったい何をされたんだ?

 セクハラじみた行為をされて反撃されたとは想像しているが、殴られる以上の事でもされないと青ざめないと思うんだけどな。

 まあリアンなら流石に死にはしないだろうし、大丈夫か…ドラゴンは肉体強度と言う一点ではオーガに張るし。

 ナーガの場合は強度は大したこと無いけど、その代わり戦闘では不死に近い再生能力があるからな。

 瞬間回復と言ってもいい回復速度だが、同時にこの再生速度を阻害する毒系統の術を使われたらヤバいけど。

 あるんだよな…猛毒レベルを簡単に扱える奴らが。


「腐食だっけ?」

「え? 何の話? 今俺の心を読んだ? 怖っ!」

「何となくだけど。腐食でしょ? この世で最も恐ろしい毒。肉体や物体をその名の通り腐食させて殺していく。最悪の毒だよね。ナーガが最も不得意とする毒の一つだし」

「聞いたことあります。でも、確かドラゴンやヒューマン族が扱う聖術で回復できましたよね?」

「ホビットでも出来るんだよ。あっちは薬があるだけだけどね。ホビットが作る薬は万能だから」


 通称『万能薬』と呼ばれている薬で教会でも扱われているような有名な薬なのだが、その薬の効果は所謂『あらゆる毒等の異常状態の完全回復』である。

 石化すら回復させることが出来るこの世でもっと万能な薬。

 旅をする人間は必ず一つ持てと言われるほど有名な薬だ。

 実際俺も三つほど持ち歩いているので、正直毒に対しては危険とは思っていてもそこまでの危機感を抱いては居ない。

 即死系の毒なんかはそもそも神々の加護で防げるし。


「そんな薬があるのか…」

「良くディラブはその状態で生き抜くことができたの。万能薬なんて金が無い人間でも流石に持っておるぞ」

「金が無いから買えないのだ」

「無料配布がありますよ。ディフェンダー本部に言えば最低一本は支給してくれるはずですが?」


 知らないという顔をするのだが、本当にどうやって大陸を横断したんだ?

 真面目に不思議なんだけどさ…万能薬無しで良く旅を続けてきたなと俺は本気で口にしつつ感心した。

 ディラブとしてはむしろそんな物が必要なのかの方が驚いたようだ。

 まあ、後でしっかりと教え込むけどさ。


「だけどホビットの商品って万能でいいよね。私一度はホビット大陸は行ってみたいんだよね。ディラブは行ったことがあるんだよね。どんな場所…あまり記憶にないって顔だね」

「無いな。ただ歩いて町によれば最低限寝泊まりして、そのまままた歩く。ダンジョンを歩けば時折助けてお金を恵んでくれるから」

「あの…他にも色々とありますよね? 旅をしながらでもお金を稼ぐ手段」

「知らないんじゃよ。良く生きてこれたと感心するわい。携帯電話も知らんしの」

「知らない情報をありがとう。隠していた理由を聞こうか?」

「…言えば後で文句を言うから。生きる上で困らないし…持っていなくても」

「強がりもここまで来ると褒め称えるべきかもね。地図を確認したり、簡単なメッセージを送ったりカメラもあるのに…村長さんも使っていたよ。私帰るときにポケットから取り出したの見たもん」


 知らなかったと顔で表現してくれるディラブだった。


「買うぞ。良いな?」

「継承が終わったら…」

「明日買うの。日中動き回っているわけじゃないでしょ? 良いわね?」

「物凄く嫌がるのう。現代機器をそんなに信用できない奴じゃな…何を嫌がる理由がある?」

「爆発しないのか?」

「お前は現代機器を新型兵器とでも思っているのか? 爆弾を持ち歩いているわけじゃないんだぞ?」


 城塞の門を潜りながら俺は「明日買うからな!」と無理矢理約束させる。

どうでしたか?

次回はいよいよオーガの国王が登場します。

では次は赤鬼のオーガ第三十一話でお会いしましょう!

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