ランドロス湿地帯攻略戦 6
ランドロス湿地帯攻略戦六話となります!
不吉な敵の存在をチラ見せとなりますね。
では本編へGO!
湿地帯自体が複雑な構造じゃなくてよかったと思いながら俺達は湿地帯もいよいよ後半戦を迎えており、あれ以降キング種との遭遇だけは何とか避けることが出来ていた。
しかし、何度か定期的にモンスターを嗾けられるような状態であるが、今のところ全く問題がないまま前に進んでいる。
俺たちの戦いを見ているうちにババルウ君は「何か学びたい」と言い出し、俺はディラブに「呪術を教えてあげればどうだ?」と言うと、ディラブは「あらかたできるだろう?」とババルウ君に問う。
どうやらある程度は出来るようだが、イマイチ上手く術を使えないようでコツを教えて欲しいとディラブに近づいていく。
ディラブは困惑しているようで唸っているのは見ていて面白かったが、こればかりは俺達では教えようがない。
「呪術は場に掛ける術だからな。制約を場に掛けるだけだからそれ以上…強いて言うなら状況を見極める必要があるな。制約で大切なのはどれだけ自分達が有利になり他者がどれだけ不利になるような状況を作るかだ」
「例えば…敵の動きを抑制するような制限を掛けるとか?」
「それもあるが。モンスターを仮想的にすれば分かり易いかもしれないな。例えばスライムは体内に核と呼ばれる本体があるんだが、この核を破壊しないと倒せない。だが、核は逃げ回るからスライムは難しい」
そう言いながら緑色の大きなスライムが沼から飛び出してい来るわけだが、アンヌが渋顔を作りながらレイピアを抜き出して力一杯突っ込んでいく。
スライムの核を的確に狙った一撃で核事スライムの肉体であるゼリーみたいな謎の物体を吹き飛ばす。
一瞬だけリアンがアンヌの服が解けることを期待したようだが、残念なことにまるで変化がない瞬間にがっかりする。
その内アンヌから殺されそうになるんじゃなかろうか?
しかし、目の前で説得力を殺す奴だな…気を付けばいいのに。
スライムで例えをしている奴の目の前でスライムを一瞬で討伐するなと言いたい。
口に出すわけにはいかないので俺はアイコンタクトを試みるが、振り返り俺の視線に気が付いたアンヌは「何?」と聞いてきた。
アイコンタクトが成立し辛いな。
「あれは特殊だが。一般的に呪術の戦い方自分が有利になるように場を使って全員に制限を掛ける。場を支配する術式が呪術だ。場を使って人を呪う。状況を理解して自分が有利になるように制限などをどんどんかけたり解除したりする」
「難しいです」
「だろうな。これは実戦を積むしかない。よし、次の戦いではババルイが呪術を使ってみると言い。いざとなったらエロ女が何とかする?」
「おやおや? 儂はまたしてもエロ女と呼ばれておるのかな? いい加減やめて欲しいんじゃがのう。それに儂がまるで万能とでも言いたげじゃな? 勘弁して欲しいのう。ジャックがやればよかろう」
「ババルウ君を守る事に集中しているんだからリアンがしろよ」
「ならアンヌは?」
「お爺ちゃんがしなさいよ。時には役に立つことをすれば? 普段から役に立たないんだから。今のところ私達のパーティーのギャグ担当なんでしょ?」
「儂…泣いていい?」
「駄目だ。真面目にしろ」
ディラブを含めてパーティーメンバーからの冷たい一言に一筋の涙を流すわけだが、まあいざとなったらアンヌが何とかするだろうし黙っていよう。
しかし、アンヌ自身もまた同じことを考えたようで俺の方に向かって見つめてくるわけなのだが、どうやらお互いにお互いの秘策がバレたようで、こうなれば押し付けあうだけである。
無責任ここに極まれり。
「何故ジャックとアンヌは睨みあっている」
「「押し付けあっているんだ。気にしないでくれ。(気にしないで)」
ディラブが「何を?」と言いながらリアンに聞くが、リアンは「聞かない方が良い」と言って歩き出す。
と言うか、試すのなら先ほどのスライムが一番いい気がするが。
まあ、誰かさんが倒してしまったわけだから意味は無いけどな。
「空気を読めよ」
「空気なら読んでるわよ。私は自分の服が溶けるのが嫌なの」
それを空気を読まないというのだ。
まあ、皆歩き出したので俺達も歩き出すのだが実際の所この先にどんだけ面倒な奴が待ち構えているのか分からない。
ディフェンダーが狩ってくれていると助かるのだが、残念なことにキング種やクイーン種となると流石に今すぐ狩るというわけにもいかないだろう。
準備を整え直してから立ち向かうのだろうから狩っていないという事は無いだろうと心に決めて先に進む中で俺達は見つけてしまった。
ディラブが後に語った言葉だが、この湿地帯には獰猛な肉食モンスターの中でも厄介なのが幾つか存在しており、中でも『ウルイ』と呼ばれている大きな顎であらゆる全てを食い散らかす四つ足方向の爬虫類系のモンスターがいるらしい。
体格は横に長く大体四メートル以上の個体であり、動きも非常に素早く背中に生えている幾つもある目玉からは無数の光線系統の攻撃を繰り出すらしい。
攻撃範囲も広く普通に戦っていては間違いなく苦戦する相手。
だったのだが…正直に言おう………死んでいた。
胴体を真ん中から真っ二つにされた状態で絶命していたのだ。
流石に全員で唖然とするしかない状態でディラブがスタスタと歩いて接近していき切断面に右手をそっと触れる。
緑色の血がまだ乾ききっておらず普通に右手に触れる辺りまだ死んで間もないという感じだ。
「死んだばかり? 派手な戦闘痕も無いし…一撃だよね?」
「ああ。キング種を一撃で殺すか…にしてはこいつ自身の戦闘痕も無いから呪術で何かしらの強力な制限を掛けたという感じか?」
「それで正解だな。正確な術式の痕跡は消したようだが微かにこの場に魔力が残っている。場に魔力を残すことがあるような術は呪術以外にあり得ない」
「しかし、じゃからと言ってこのキング種を一撃で殺すか?」
「呪術で制限を与えていたと言ってもキング種に強力な制限なんて…無理ですよね?」
「無理とは言わないが相当強い呪術だな。上手いとかではなく呪術としてのスペックだな。能力が極端に高い」
戦い慣れている個体かもしれないが、問題なのは戦い方だろう。
一刀両断と言わんばかりの切り口だが、剣で切ったのかとも思ったが切られた先の地面が抉れているのに気が付いた。
「武器は斧ね。地面が衝撃で抉れているから。それも円状に」
「じゃのう。相当思ない大剣というアイデアもあったが、円状の傷跡が斧と言う分かり易い痕跡じゃな。しかし、相当重たい斧じゃのう。ディラブの両刃斧とはるか?」
「だな。重たく鋭い斧だろう。分厚い装甲がたった一撃で潰されている。切り方もまた良いんだろうな。玄人だよな…これ」
嫌な予感を感じさせる傷跡に俺達は少し歩くことが出来そうになった。
このキング種を殺した奴がこの辺りをうろついていると思うと迂闊に動くことも出来ない。
出来ることならそんな奴が継承の儀式に参加してほしくない。
しかし、その後俺達は首都へと向かう最中一体もモンスターに行き会う事が無いまま日が完全にくれた頃首都へと足を踏み込んだ。
あのキング種を殺した奴とは会わないまま。
どうでしたか?
今回キング種を一撃で殺した奴がある意味でこの赤鬼のオーガというお話のラスボスだと思ってください。
では次は赤鬼のオーガ第二十九話でお会いしましょう!




