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ランドロス湿地帯攻略戦 5

ランドロス湿地帯攻略戦五話目となります。

ジャックとアンヌの剣術の師匠が回想というかセリフだけですが登場します。

では本編へGO!

 先ほどの攻撃でいい加減勝てないのだと理解して欲しいが、どうにも襲い掛かってくるモンスターは後を絶たないようだ。

 今度はウルフタイプが五匹ほどで群がって襲い掛かってきたわけだが、なんでこう…獣型や人型が襲ってくるんだ?

 ここは湿地帯だぞと思って俺はディラブとアンヌに「任せる」と言って防壁を展開、リアンは聖術でディラブに強化術式を掛けてサポート。

 ディラブが地面を強く蹴って飛び込んできたウルフを三体まとめて真っ二つにすることに成功したが、今度はディラブの右側に回り込んで襲ってくる。

 それをアンヌはレイピアによる突進攻撃で肉片に変えてしまう。

 最後の二匹はその光景に恐れをなしてそのまま逃げていく。


「ふむ…嫌な予感がする。こうも連続で襲ってくる感じだと嗾けている奴がいるのかな? それもモンスターをある程度操れるような奴が」

「え? そんな人いるんですか?」

「いるよ。珍しい方だけど。裏側に精通している人はこういうスキルを持っている人は多いかな。でも、それが本当なら嗾けている人は裏側に属する人ってことにならない?」

「じゃのう。はたして…何が目的なのかのう?」


 リアンの言葉と同時にババルウ君以外が彼をしっかりと見つめ、彼は戸惑いを隠せないまま「え? 僕ですか?」と声を漏らす。

 この状況なのだ。

 嗾けているのは王子の誰かで候補者を蹴落としたいと考えている場合が多いだろう。

 俺は少しズルいと思いながらも威圧というスキルに自らの魔術を組み合わせて周囲に殺気を向けさせることにした。

 魔力が込められた殺気は相手にリアルな死に様を想像させるだろう。


「ねえ。ババルウ君はもしかして候補者になるって言い出した時にお兄さん達から止められたんじゃない? 片方か両方」

「はい。両方から「才能がないからやめておいた方が良い」と言われました。でも、こういうやり方は多分下の兄だと思います。賢いやり方というか、自分の手を直接汚さないバレにくいやり方を選ぶと思います」

「フム。君を送り込んだのは長男かな? 多分外で死んでくれればそれいいぐらいのアイデアで、それを確実にするためにモンスター使いを送り込んで殺そうとした。それでキング種が興奮状態だったわけだ」

「縄張りにモンスターがやってきたからか? まあ、野生のモンスターは基本各縄張りを持っているからな。分からないのはスライムやゴーレムのような種だけか…」

「一番上のお兄さんが露骨な妨害を思いつき、それを利用して下のお兄さんが殺そうとした? もしかしたらある程度痛めつけようとした?」

「後者だろ。殺そうとは思っていないと思う。まあ…嗾けた奴がどう考えているかは知らんが。ただ中途半端な知識で裏側に属する人達に取引を申し込むのはあまり感心しない」

「あの男も割り込もうとするかもしれんしな。いや、無いだろうな。ディフェンダーに警戒されている以上首都にすらいない場合が多い」

「じゃが、裏側に属する者と繋がって策を弄する可能性はあるぞ。下手をすれば奴の仲間が潜んでおるかもしれんな。有り得ん話ではないじゃろう? じゃってオーガの呪術はやり方によっては十将軍すら打倒せるだけの要素を持っている」


 これは誇張ではない。

 やり方という話にはなるが、封印術を組み合わせれば呪術で十将軍クラスを追い詰めることは可能だろう。

 だからこそ、こういうパーティーを組むうえでオーガは重要な要因になるのだ。

 俺がディラブと出会った時にできれば仲間に入れたいと考えていた。

 呪術を一方的に解くことが出来るのもオーガのみ。


「直接めぐり合う事もありそうだよなぁ…ディフェンダーが役に立たない以上は俺達でやるしかないわけだし」

「ぼ、僕も皆さんの足手纏いにならない様に頑張ります」

「いや。君は一番頑張るんだぞ。俺達が頑張って君が国王になっても意味はない。君が努力して勝ち取るから意味があるんだ。差し当たっては君の特訓が必要だ」

「…本当に僕は強くなれるでしょうか? 正直に言えば自身が無いんです…僕は弱いままなんじゃないかって」


 俺達は足を止めてしまったババルウ君の方へと向かってどう話しかけたら良いのか分からないまま黙っていると、ディラブが代わりにと口を開いた。


「自身が無くして強くなることは出来ない。強い自分をイメージすることが強くなるうえで大事な事なんだ。君の一番良くない所はそうやって自分が「強くない」「情けない」と思っていることだ」


 それはきっとディラブ自身すら思っていたことで、未だに心のどこかで自分を卑下している部分でもあるのだろう。

 村長が言っていた事、ディラブは自分の事を過小評価している部分がある。

 だが、こうして一緒に旅をしていて分かる通り彼は才能の塊だ。

 赤鬼のオーガの血縁というだけで才能と言う部分は完成しているわけだが、それ以上に武術の才能と言う一点もまた高い。

 だが、自分を卑下しておりだからこそ「強くなりたい」という意思が強いのだろう。

 そういう意味で似たもの同士でもあるのかもしれない。

 そんな時、俺とアンヌは師の言葉を思い出した。


「「()()()()()()()()()()()()()」」

「え? なんですか? それ…」

「かつて俺とアンヌの剣術の師が教えてくれた言葉さ。「力とは信念の先にあるものだ。誇りを胸に。夢は指針になる。信念無き力など何の役にも立たない。強くなりたければ揺るがぬ信念を持ち努力することだ」ってな。努力とは信念の先にあるものだからな。イメージと言えばいいのかな?」

「そうだね。強い自分をイメージして鍛えると違うって事。誇りや夢はそういうイメージを強くしてくれるから」

「フム。それもそうじゃのう。例えばモテる自分を想像することがモテる一番の近道じゃからのう」

「エロ爺は黙っていろ。話を脱線させるな。強くなりたいのなら強くなっている自分を想像してみることさ。それに、ババルウ君には夢があるんだろう? 王族としての誇りもある。ならとは信念だ」


 ババルウ君は直ぐには流石に出来ないのか、困り顔をした状態でウンウンと唸りながら悩んでいる。


「直ぐには出来ないだろうが、この一週間でそれをしっかりとさせたほうが良いだろうな。きっかけさえあれば君はあっという間に強くなれる。俺が保証する」


 勇者として強くなれたのは間違いなく師のその言葉があったからこそなのだ。


『お前は強い。誰よりも強くなれる。だからこそお前は誰よりも優しくなれ。信念の先にある力を掴むんだ』


 フラフラしていて適当な人ではあったが、だが誰よりも強さという部分では誰にも引けを取らない人だ。

 あの人は人を見る目だけはしっかりと持っている。

 師が彼を見ればきっと喜びながら面倒を見ただろう。

 才能ある人を鍛えるのはあの人の娯楽の一つだったし。


「なんじゃろうな…儂の知り合いの偏屈男を思い出すのう」

「知り合いなんじゃない? 師匠って基本中央大陸中を巡って歩いているような人だし。落ち着けって話だけど」

「その同レベルで自由を求める人間が発言してもまるで説得力が無いよな」

「今現在旅をしている人に言われたくない」


 お互いに睨みあう俺達。

どうでしたか?

力とは信念の先にあるという言葉の通り、ババルウ君が信念を手に入れることを願っています。

では次は赤鬼のオーガ第二十八話でお会いしましょう!

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