ランドロス鉱山坑道東区攻略戦 2
ランドロス鉱山坑道東区攻略戦二話目となります!
ノルヴァスは一旦ここで撤退三度オーガ編では出てくる予定です!
では本編へGO!
ノルヴァスが見えている風景はモノクロだった中、ジャック・ロウだけは彼にとっては鮮明に色彩はっきりさせるほどの存在だったのだが、それはこうして彼の術式を見てはっきりと確信させた。
全てがつまらないと感じる中で見えてきた一人一人は背景と一緒、通り過ぎる一般人も、戦いに赴く兵士達も、教会の神父やシスター、病院の院長や医師や看護師すらも彼にはただの背景だ。
つまらない人間でその辺にある石っころと同じぐらいの扱い、だから傷つこうが死に絶えようが別に感情が動かない。
司祭達に助言をしたりしたのもあくまでも「楽しそうだから」という理由以外に己の計画に都合がいいかもしれないなぁと思ったからだ。
この状況だってその通りで、商人に協力したのも結局で都合がいいから。
失敗しても別に構わない。
と言うよりは失敗する可能性が高いと睨んでいたし、失敗したときは直ぐに逃げられるように出口に近い場所に陣取り、ジャック達の襲撃時も最も出口に近い場所に居た。
そこでジャックの一撃をその目に見た。
(美しい。良い…)
初めて目に見えた人間にそんな感情を抱いたような気がするが、その理由は彼以外には理解どころか分かる事すらない。
だが、同時に抱いた感情は「彼を黒く汚したい」である。
絶望させたい、失望させたい、悲劇にまみれさせたい。
こんな世界はくだらないという事を証明したいのだと、守ることに値しないのだと証明したのだ。
そんな感情を抱いたその瞬間アンヌが突っ込んできた。
アンヌが突っ込んでいく鋭い一撃をノルヴァスは片手直剣で上へと弾きアンヌに切りかかろうとするが、アンヌはその攻撃を体を捻って回避しつつ空中で受け身を取りつつ着地と同時に下から胴体めがけてレイピアを突き刺す。
下から来た重たい攻撃を上手く受け止めつつ至近距離から睨みつけるアンヌをヘラヘラした笑顔で見せた。
「一撃に焦点を置いた古流剣術。確かベルトールが開発した連撃と対をなすベルトール一撃流だったかな?」
「良く知っているわね」
「まあね…私は連撃だからさ…」
レイピアを自分に引き付けるように弾きアンヌに切りかかろうとする瞬間、ジャックが間に割って入った。
両者の間に大きな大剣を振り下ろして衝撃と共にやってきたジャック、兜の奥に見える真っ赤な瞳が怪しく睨みつけるが、その瞬間には真下から振り上げられる大剣の一撃に驚きながら後ろにダッシュで避けた。
「また一撃流かい? さては同じ師かな?」
リアンの前にいる商人は大きなカバンを降ろしてリアンに対して距離を取るが、その理由はリアンが拳法の構えを取っているからである。
ドラゴン族は遠距離攻撃を使わない事が多い分、近距離から中距離での戦いを好む。
商人もそれを知っているからこその重い荷物を降ろしてから拳銃とナイフを取り出してスッと構えた。
しかし、リアンは構えを見ただけで良く分かるのだ。
あくまでも戦闘は素人とほぼ同じ、ダンジョンを乗り越えていくうえで多少は鍛えているのだろうが、商人はあくまでも商人なのだ。
戦闘は本職ではない。
ましてやヒューマン族はジョブが全てであり、他の四種族とは違ってジョブごとに得手不得手がきっちりと別れてしまう。
「こう見えてもかつては最前線で戦った経験を持つ人間なんですよ!」
リアンはその言葉に嘘は無いだろうとは思ったが、同時に感じる残念さが彼が最前線に向かいながらも役に立てなかったという真実を物語っていると思えた。
リアンは国王と言う身ではあるが、本来自らダンジョンに赴くぐらい実力はしっかりしているつもりで、ジャックが十将軍に選ばれている間もディフェンダーに協力してもらいながらもドラゴン族としての修行を繰り返していた。
だからはっきりと言える…浅い実力しかない人間でしかないと。
先手は譲ると決めたリアンは敵を唆すようにジリジリと距離感を詰めていくと、商人は焦ったように拳銃の引き金を引く。
パンという音が鳴ると同時に駆け出していくリアン、自己加速術式は聖術の基礎であるが、アンヌが頻繁に使う他者減速の術式はもはや使う人間はアンヌぐらいなのである。
と言うよりは人に作用する術式を得意とする中でも他者減速は非常に高難易度な術式、流石にリアンには扱うことが出来ない。
だからこそドラゴン族ならでは聖術を習得することとした。
地中から練りあがっていくエネルギーを両手に集めてまずは拳銃の弾丸を右手で逸らしつつ眼前まで接近する。
接近してきたリアンに向かってナイフを振りぬくのだが、同時に後ろに素早く下がりつつ両手を上下に構えて竜の口を両手で模す。
「龍掌【閃光】」
リアンの両掌から出てきた真っ白な龍の永細い体と顔が商人の顔面へと接近していき激しい閃光で視界をつぶす。
「ギャアア!!」
「龍掌【破撃】」
今度は右手を鳩尾に叩き込んでから商人の意識を一瞬で奪う。
「これが戦うという事じゃ。よく覚えておくと言い。しかし…戦いの中で揺れる儂の胸…最高じゃ!」
リアンが商人と戦っている最中、ディラブは支配種のオークと戦っていた。
と言うよりは戦いになるはずがない。
ディラブはまともに両手斧を構えてすらいないのだが、支配種のオークは怒りを滲ませながらジリジリと後ろへと下がっていく。
所詮はオーガを模しているモンスターでしかなく、劣化版でしかないオークにとって目の前にいるオーガはもはや上位種である。
命令一つあれば殺すことすら簡単であるが、ディラブはそんなことは選ばない。
「ドウシタ? 貴様ノ命令一ツデ殺ス事ガ出来ルダロウ?」
「貴様を殺すためだけにそんなくだらないことを口にする気はない。我らオーガはいつでも戦うときは正々堂々だ」
切れて背中から取り出した太刀を抜き出して横なぎに襲い掛かるが、その刃はオーガの皮膚すら傷つけることできなかった。
驚きと共にオーガを見る。
「その程度。我らオーガは攻撃力や防御力で勝てると思うな。我らの皮膚は鋼すら凌ぐ。貴様程度の腕前で殺せると思うな。これが…攻撃だ!」
両手で振り上げた両手斧を力一杯振り下ろすと、オークの胴体を真っ二つにしてしまう。
「所詮同族殺しにはその姿が相応しい」
ジャックが切りかかろうとする攻撃を後ろへとダッシュして回避、その間も視界はしっかりとアンヌとジャックを捉えている。
アンヌは自己加速術式で加速しつつジャックを足場にしてノルヴァスへと襲い掛かった。
流石にアンヌでもノルヴァスへと減速の術式は使えなかった。
他者減速はある程度の実力差がしっかりと付いていないと使えない術式である。
あれは直ぐにバレる上に掛かっても適応できれば簡単にカウンターを決めることは出来るのだ。
「流石にそこの男では君たちの相手にはならないか、だがその男を黙って渡すわけにはいかない」
ノルヴァスは真上に向かって人差し指と中指を指すのだが、その瞬間気絶している商人の体に尖った岩が落ちてきてそのまま体をつぶしてしまう。
一体何故こんなことになったのかまるで理解が追い付かない状態で、ジャックとアンヌは驚きで攻撃の手が止む。
それを待っていたように催涙ガスを噴出する球体を転がす。
「ハハハ! 又会おうじゃないか! ここはダンジョンの最奥だ! 脱出するのにも時間が掛かるだろうなぁ!!」
「ノルヴァス! 貴様! 仲間じゃないのか!?」
催涙ガスを吸わない様にアンヌとジャックは後ろに下がり、ジャックは消えていくノルヴァスに向かって叫ぶ。
「仲間? まさかだろう? 利用しただけさ! 私が低レベルな人間を仲間にするわけが無いだろう!?」
「何故命を見下す!?」
「くだらないからさ! 他者への恨みも、向上心も私からすれば全てな!」
立ち去っていくノルヴァスは高笑いを続けながら消えていった。
どうでしたか?
ここから本格的なダンジョン攻略となります!
では次は赤鬼のオーガ第十話でお会いしましょう!




