峠道を越えて
相克の教会第八話目となります。
今回は旅話となっております。
では本編へGO!
翌日を迎えてジャック達は各依頼をこなしながらまずはナーガ政府がやってくるのを待ち、その更に翌日にナーガ政府代表が到着しそのままジャックは両国間橋渡しをすることになり、その頃になってようやくメメルウ方面の交渉が上手く行きそうであるという事が分かった。
なんでも向こうの国も教会方面へと霊的な案件の解決を委託していても、全く返事が無いばかりか状況は少しずつではあるが悪化するしまつ。
如何にか状況を知りたいという所で隣国からの提案を受けることにしたのだが、ジャックや国王はこの裏をある程度理解していた。
教会に協力している国としては教会に異を唱えるというのは勇気のいる案件であるが、だからと言ってこの状況を放置するわけにはいかない。
だが、教会に非協力を貫いている国から元勇者が教会案件を探るために通過を認めて欲しいとくれば話は別。
要するに「勇者なんて見ていない」と言い張ればいいだけで、こっちから手伝わなければ問題は無いのだ。
少なくとも教会方面への言い訳も出来、同時に案件も解決できると予想しているのだろう。
で、いざ解決して何かしらの問題が生じても「自分達は見ていません」と貫き通すのだろう。
だが、ジャック達も国王ももはやこの状況があっさり解決するほど簡単ではないと思っている。
どんな結果になってももはや教会の権威を続けることが出来るほど状況は優しくなく、他の種族がやってくることは避けられない。
この状況はドライ最高司祭が知らないわけが無いのだ。
要するにこの状況になっている時点でもはやドライ最高司祭の理想は既に完成しており、後は状況に流されるままなのだろうと推測で来た。
ジャック達はどうしてもなるべく早く教会へと向かわないといけない。
教会本部が最大の防衛策を使っているという事は、今この瞬間も敵の脅威に晒されており、その脅威ことが前任の勇者達であることはもはや疑うべきですらない。
ジャック達がメメルウ方面へと向かう為に必要な国境を超える唯一の方法、手形の発行が漸く認められ、両国間のみではあるが行き来が自由に出来るようになったわけだが、ここで問題が生じた。
向こうの国の都合で列車での行き来は禁止されてしまったわけだが、その言葉にアンヌが非常に嫌な顔を作ってしまう。
要するに歩いて国境である峠を越えて国境沿いにある町へと移動し、そのまま歩きで教会方面へと移動する必要性がある。
ナーガ政府代表者からも早めに行動した方が良いと提案を受けたジャック達は昼前には出発し夕方には国境にある砦に到着したいと考えていた。
「歩きで国境越えか…はぁ…」
「凄い重いため息が聞こえてきたな。因みに国境の砦までは一本道をただ進んでいけばいいだけだ」
「なら早めに到着して早めに寝てしまいたいですね。砦から国境沿いの町への到着まではどれくらいかかりますか?」
「そうじゃな…やはり半日は掛かるな。到着して出来れば宿で一泊、出来なかったら町の外で一泊じゃな」
「え!? 出来ないの!? どうしてよ!?」
「アンヌはなんで簡単に出来ると思っているんだ? お前以外は他種族だぞ? この国だから許されているし特に問題は起きていないが、他の国では別だ。俺達が今から行く国は普段は異種厳禁だぞ?」
「そうだった…はぁ…」
「お前が所属している教会が原因なんだと理解して欲しいね。だから最悪は野宿だな」
「野宿ならどうせなら少しでも教会方面へと移動した方が良くないか? 始めっから野宿した方が良くないか?」
「アンヌが睨みつけるから出来る限り宿を取る方向で行こう。もし、町に行って駄目だと言われたらその時は諦めて野宿だ。良いな? アンヌ」
「…仕方ないわね。じゃあ。早めに行きましょうか…」
物凄い重く深いため息を吐き出してから歩き出したアンヌについていくジャック達、町から出ようとすると国王達の見送りがあり、ありがたく感じながらも名残惜しい感じで街を去って行く。
少しだけ広がる草木を少しだけ眺めながら山脈の間へと伸びていく一本道を見ながら深いため息を吐き出し、その隣で一本の列車が汽笛を鳴らしながら通り去って行くのを儚げに見守るアンヌ。
「あの列車ってさ。山を越えるの? ねえ? ジャック兄ちゃん」
「いや。違うぞ。トンネルを掘ってあるからそこを通る。流石に列車が山を登るのは無理があるぞ」
「別にないわけじゃないぞ。特殊な列車なら出来るがな。まあ、この場合はトンネルを掘ってあり、そのトンネルを通り国境を越えるわけじゃが。途中で先ほど言った国境の砦の地下部分で検閲をするんじゃよ」
「あれって面倒だよな? しつこく荷物を探る上他の人も待っていないといけないのに、人によっては無駄話で時間を食うから苛立つという」
「分かるわぁ…私なんて一時間待たされたことあるもん。こっちは急いでいるんだから早くしてって思うもんね」
「他種族には分からない事だな。列車が無いオーク大陸なんて列車に乗るという事が未だに慣れない」
「私達のホビットは列車自体は有りますけど、多分国境を越えるとかの苦労は分からないですね」
「なんで小さい国同士で要らない手続きをしなくてはいけないんだが。さっさとしてくれればいいのにな。まあ、今回はあまり関係は無いけどな」
「え? どうしてですか? 国境を越える以上は手続きと共に荷物検査はあるのでないのでしょうか?」
「在るけど待たされないわ。このご時世他に国境を歩いて越える人なんていないもん。私達ぐらいよ。後はディフェンダーだけ」
「俺達みたいな後ろめたい理由が無い限りはな」
「失礼な事言わないでよ! 私達が列車に乗れないから乗らないだけよ! もし、乗れるんなら乗っているもん! 自分で歩いて国境を越えるなんてディラブぐらいよ!!」
「俺? まあ…一人でも歩いて越えるけれども。鍛えられて良いだろう? 途中でダンジョンとか無いのか?」
「「「無い。断じて無い」」」
ジャック達から断言されるとディラブは残念そうな顔をしながら前を歩きだす。
ジャックからすれば特に疲れもしないような道が続いており、峠道も坂道などはあるが、急こう配などは無く、歩いて登る分には困らない。
歩き出して四時間ほどで峠道の入り口まで辿り着き、ジャック達はそのまま断崖絶壁の側面を歩きながら峠道の先に薄っすらと見えてきた砦を眺める。
「結構大きい砦ですよね? なんであんなに大きいんですか?」
「この国は教会の権威が通用しない国だ。向こうは教会の権威が強い国。別段戦争でもしているわけじゃないが、いざとなった時にお互いに信頼は薄い。だから国境を越える人を見極める必要がある。実際、裏ルートで超える人はそこそこ居るしな」
「そうじゃな。奴隷としてオークの売買は中央大陸でも割とある話じゃし」
「だからこそ、こういう正規ルート位はしっかりとしていないといかんわけじゃ」
「そこまで険しい峠道というわけじゃ無さそうですね。歩きながらでも夕方には到着できるでしょうか?」
「途中で洞窟を通る必要があるぐらいか? 俺は通ったことあるけど…多分爺ちゃんとアンヌは…」
「無いわね。わざわざ歩きながら峠を越えようとするほど物好きじゃ無いわよ」
「儂もなしじゃな。基本国王じゃったし。興味が無いわけじゃない。登山なんかは趣味じゃからやったことあるしな。洞窟探索も若い頃は良くやったわ」
「「「え?」」」
リアン以外からの以外という顔をされてそのまま黙り込む一行の前にリアンは「意外か?」と返す。
意外と言えば全員が意外という言葉以外での答えを持たなかった。
「年がら年中女性の胸とお尻を追いかけまわすだけが趣味かと」
「酷い偏見じゃな。儂だって昔っから女子を追いかけまわすことを趣味にしておるわけじゃないぞ。若い頃は洞窟を探索したり、山を登って青春の汗を流した者じゃな」
「気持ち悪」
「言い方を改めませんか? ですが、リアン様でもそんな健全な時代が在ったのですね?」
「儂のイメージ悪くないか?」
「良くなると思ったのか? ジャックを含めて誰一人お前のイメージは一貫して「エロ爺」だぞ。俺でもお前と一緒に旅して常々思ったことだ」
「宿泊先で常に女に手を出すだろう? 悪いけど、ネリビットとメイビットの教育に悪いから止めてくれよ?」
「失礼じゃなぁ。そりゃあ儂も昔っから女の子にナンパをしているようなことは良くしていたがなぁ」
「ああ…皆の評価が急降下していく気配が…」
「爺ちゃんらしいよなぁ。ジャック兄ちゃんなんて忌々しい顔しているもんな」
峠道を一時間ほど歩いた所でジャックが言っていた洞窟が見えてきた。
どうでしたか?
暫くは旅話が続くと思っていてください。
では次回は相克の教会第九話でお会いしましょう!




