底なしの悪意 4
円環のドラゴン編二十八話となります。
いよいよバトル開始です!
では本編へGO!
作戦結構の夕方を超えて夜を迎えてきたころ、俺達は屋敷の入り口から大きな通りを挟んだ反対側の建物の屋上から双眼鏡で屋敷の外側の警備を確認していた。
出入口である大きな石材で出来た両開きのドアの前に二人、そこから外壁沿いに回るように五人がうろついているという構図。
入り口も正面玄関以外に裏口が無論あるが、そっちの方は監視カメラ以外に銃撃能力を備え付けられているドローンまで飛んでいる。
しかし、ここで俺達が見逃さなかったのはこの屋敷の屋上部分である。
この屋敷は五階建てとなっており、五階部分は大きな出っ張りのように上へと飛び出た形となっており、四階がその下に小さく広がり、それより更に大きな三階が存在している。
で、その出っ張りと呼んでも良い部分である五階部分とこの屋上が丁度同じ高さとなっており、俺達は此処から侵入を試みることにした。
俺は魔力を練り始め、ディラブは呪術で場に条件を組む。
ディラブの条件は一時的な重力の力場を移動させる事、俺は魔術で重力を強めつつ衝撃を緩和する為に術式を発動、その間ファリーダは聖術で肉体の強化を施してから俺達は一気に屋敷に侵入した。
窓を突き破ると音が鳴り中にいる人間に警戒されるので、窓ガラスに衝突する前に呪術と魔術を解除してから屋上に着地、そのまま五階の窓ガラスから中を確認。
魔術と聖術で五階部分の機材などのチェック作業、侵入しても問題ないと分かり改めて作戦チェックタイム。
「ディラブは中に入らず屋上から移動し裏口の屋上部分で身を隠して待機、俺が今から一階の正面玄関から攻撃して侵入、騒ぎが起きるだろうからその間にファリーダは聖術で透明化の術式を使って国家元首を確保」
「ジャック様はそのまま裏口へと合流ですね」
「俺はファリーダの確保が完了したという合図とともに裏口を確保、そのまま裏口近くに用意しておいた乗用車に乗り込むだな」
「ああ。最悪敵を蒔く必要がありそうだ。俺達はそのままリアンの爺が居る場所までダッシュで移動してから乗り捨てる。とりあえずこの手筈で行こう」
「バレてしまった場合はどうしますか?」
「国家元首の確保を最優先する。ファリーダは深追いはするな。確保出来たらそれでいい。ただし、逃がした場合は俺が確保するか最悪ディラブが確保だ」
「俺は最終手段で良いんだな?」
「ああ。出来れば俺があの悪意の元を全て押さえて置ければいいが、敵の能力やパワーによっては抜かれる可能性が高い」
改めて一階にある正面玄関を確認しつつもう一度簡単に確認してから俺は一階にある正面玄関へと近づいていく。
正面玄関近くまで辿り着いた所で俺は息を大きく吸い込み、二本の勇者の剣を召喚して大太刀に炎属性の魔力を吸収させて、そのまま斬撃として正面玄関にぶつけた。
大きな爆発音とともに爆炎が立ち上り、悲鳴と共に吹っ飛ぶ人の影を確認してから俺は一階の正面玄関に着地してから出入口から中へと入っていく。
ドアを素早くかつ豪快に開けてから俺は一階ロビーに入る。
そして、驚かされる。
「ようこそ。侵入者」
スキンヘッドの人相の悪い男はニタリという笑いを浮かべながら俺にそう語り掛け、その右隣に立っているナーガ族は腕を組んだ状態で黙り込み、左隣に立っているサングラスにショートカットの黒髪の男は直立不動で立っているだけ。
ただ、他の二人もヤバそうだが、中央にいるスキンヘッドの男が一番ヤバそうに感じる。
「貴様達が街中に入った瞬間からずっと意識していたんだ。正直金払いが良いからと言う理由であの男の防衛を受けたが…まさか、いきなり大当たりがやってくるとはな」
「この場所にやってきたという事はアンタ…俺と同じナーガであるアンタが囮役」
「…そして、恐らく最も強い…そういう事だな…?」
俺は敢えて喋らず黙って頷くだけ、下手にこちらの喋る必要性を感じないので黙っていることにした。
「ちなみにどうしてあんな男を狙う? 興味は無いが関心はあるのでね。金払いが良い意外に取り柄の無いドラゴン族。正直に言えば愚かと言うしかない人柄、いつか騙されて死ぬだろう事は想像できる」
あくまでも俺は喋るつもりはなかったので大太刀に氷結属性の魔力を込めて正面に斬撃として放つが、それをナーガ族の男が炎属性の波を作り出して相殺してしまう。
まあ、そこまで強い斬撃として放ったつもりはなかったので良いのだが、簡単に溶かされたという事は愛称を加味してもそこそこの魔力量を持っているようだ。
で、問題はあの二人。
両方ともヒューマン族に見えるのだが、どうやらショートカットの男に見える方、纏っている魔力が『ドラゴン族』と訴えているように見える。
あの中央の男…あれは悪意で誤魔化されていたが、そもそも人間なのか?
「………中央のスキンヘッドの男。お前…人間か?」
「………」
「悪意に誤魔化されていたが、内から漏れ出している悪意と共に言葉にし難い雰囲気がある。なんだ…貴様」
「………混じっているという言葉を貴様は知っているかな?」
その言葉を聞いた瞬間俺は背筋に冷えるような感覚を覚えた。
混じることがあるという事は教会の聖典にも描かれており、時折悪魔なり天使なりがこの世に落ちてくる際に人に混じることがあると。
混じった人間は普通では考えられないような力や寿命を獲得すると言われており、俺は一度だけそんな症状を抱えていた女性と戦ったことがあった。
まだ、勇者としてしっかり活動していた際、精霊と呼ばれる存在と混じりあってしまった女性が一つの街を巻き込んで滅茶苦茶に仕掛けていたのだ。
最後はその女性を殺すことで決着をつけたわけだが、正直に言えば強いとかいう次元ではなかった。
多分邪神と良いレベルだったような気がする。
戦い方からして異次元レベルなのだ。
「俺も混じっているのさ…悪魔とな」
漏れ出る悪意と共に溢れかえるような邪悪な気配が奴の足元から漂い始め、彼らの後ろからやってきた見張りの人物たちを飲み込み始める。
「この波が通用しないか…ただのナーガ族じゃないな。貴様…元勇者か?」
俺は大太刀に聖属性の魔力を込めて重い一撃と共に振り下ろす。
飛び出た魔力の刃はまっすぐにスキンヘッドの男へと向かい、左右に男達は飛び出すように逃げ出した。
着弾すると同時に砂煙のようなものが立ち上るが、まるで消える気配の無い漏れ出るような悪意、同時に悪魔の翼が砂煙を吹き飛ばしスキンヘッドの男をあらわにした。
悪魔の羽に尻尾、目は黒と赤で彩られており真っ黒な肌に赤い模様が浮かび上がっている。
そうだ、純粋な悪魔や天使達のような存在そのものではなく、あくまでも混じったような姿をしているんだ。
左右の手の爪は先が尖っており、スキンヘッドの男は右腕を自分の眼前に持ってき、そのままどす黒い魔力のような力を籠めると俺めがけて飛ばした。
これは魔力ではない…!
精霊と名乗った存在も使っていたが、恐らく上位の存在が使うであろう別の何かだ。
俺は大きくジャンプして回避すると同時にナーガの男は俺めがけて雷属性の一撃を叩き落そうとする。
空気を足場にして更に跳躍すると今度はドラゴン族の男が俺の鳩尾に拳を叩き込んだ。
「俺が殺すんだ。とどめを刺すなよ?」
「それはダメージを与えてから喋ったらどうなんだ!?」
連続で聖属性の攻撃を刃として叩き込み、同時にダッシュでスキンヘッドの男へと近づいていく、悪魔である以上弱点は聖属性であることは間違いが無い。
そして、あの立ち位置から考えてあの男がリーダーだ。
あの男さえ倒せばこちらが一気に有利になる。
なら迷う事なんて無いと俺は距離を詰めていく。
するとナーガ族の男は雷属性の魔力を籠め始めるが、その雷属性の魔力が若干どす黒い色に染まっているような気がする。
いや、気の所為ではないだろうと俺は放たれた矢を小太刀で反射する。
あのスキンヘッドの男が二人に自分の力を貸しているんだ。
どうでしたか?
今回のバトルは少しばかり長くなるかもしれません。
では次は円環のドラゴン第二十九話でお会いしましょう!




