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魔人と謳われた種族 3

主人公が何故ナーガになったのかという理由としてはそろそろきちんと話そうと思っています。

最もその辺はストーリーにそこまで関わってくる内容ではないのですが…

では本編です!

 真っ白な部屋に紫色の装飾が施されているのはここが病院からなのか、それともここの部屋を管理している人の趣味なのかは未だに考え込む部分であり、実際ここの部屋を管理をしているのはナーガ人の女性であり黒い髪を短く刈り上げており、胸が無ければ男性に見えてもおかしくはないほどに勇ましい顔つきをしている。

 ベットに横になっていた俺にその女性は「良いですよ」と声を掛けられ、俺は病院で与えられた薄紫色の病院着を崩さないようにベットから足を出し、そのまま立ち上がた。

 女性から一枚のカルテのようなものを渡されてそのままはっきりと誤魔化さないように告げられる。


「君はナーガ人よ。種族値百パーセントのね。残念でした」

「なんで残念なんです?」

「ヒューマンじゃなくて残念ねという意味。それともナーガで良かった?」


 気持ちで言えば複雑なのだが、意外とショックではなかったのだ。

 新たな地に自分によく似た人達が過ごしている国にこれから自分の居場所が出来ることにワクワク感を感じている。


「ショックじゃないですよ。むしろワクワクしているぐらいで。これからどんな生活があるのか分からないから」

「そう? じゃあこっちが残念。元勇者さんの残念がるところが見えるかと思ったのに」

「口癖なんですか? その…」

「そうよ? 残念? まあいいわ。外にロウ族の普段着があるから来て頂戴?」


 ナーガは普段着まで一族ごとに異なるのか?

 部屋の外に出るとそこには六個あるソファの一つに上下の紫色の甚平が置かれていて、俺は女性の目に触れることを恥ずかしいと思わないままその場で甚平に着替える。


「この紫色は…?」

「私の好み。残念だった? それとも他の色が良かったかしら?」

「いや…良いですけど。でも、甚平は好きですよ。小さい頃から夏はそれを着て過ごしていましたし」

「やっぱりロウ族ね。残念なぐらいに。ロウ族は普段着ではそういう服を好む習慣がある。君は根っからのロウ族なのね。あら? 笑顔」

「? 分かるんですか? 鎧があるのに」

「フフ。まだまだヒューマン族時代が抜けきっていないわね。残念でした」


 そう言いながら俺の鎧の端っこをデコピンして背を見せる女性医師、彼女が歩き出すので俺もその後ろをついていく。


「この後ナーガ庁という場所で国家元首が待っているわ。ナーガは各一族の族長と国民投票で選ばれた国家元首がトップなの。その下に国会議員が結構な数が居るわけね」

「なるほど…俺はロウ族の族長と国家元首がトップという事ですか?」

「その通り。私はナナ族だからナナ族の長になるわね。そこからは自由よ。まあ間違いなく貴方はロウ族の首都である『ガーナンド・ロウ』へと連れていかれるわね」


 どんな所なのだろうと想像しながら女性医師が乗るエレベーターへと乗り込んでいき、彼女の後ろにそっと立つ。

 俺より身長が低い彼女だが、それでも昔のアンヌ並みにはある女性で、向こうでこの身長なら絶対弄られること間違いない。


「私のうなじを見て興奮でもした?」

「? していませんが? どうして?」

「いいえ。先ほどエロい中身がお爺さんの女性が私の胸を揉もうとしたので、私が平手打ちを五発お見舞いしたらそのままナーガ庁へと行ったからね」

「あのエロ爺…」

「君はもう立派なナーガよ。残念がらないなら堂々としなさい」


 そう言われても未だにピンとこない俺、一回のロビーはガラガラでこの病院は大丈夫なのだろうか?


「ナーガ人は女性じゃないとそうそう病気にはならないし、男性が此処を使うのは五年に一度のクリーンの為よ」

「? なんですそれ?」

「三十になれば分かるわ。大丈夫。その時も私が担当だから。残念ながらね」


 何か嫌な予感がするが、ナーガ人である以上俺は受け入れるしかないと心に決めてから外へと案内された。

 外には一台のタクシーが待ってくれており、俺が乗り込むと女性医師はそのまま俺に手を振ってから中へと戻っていく。

 タクシーが走り出すのだが、運転しているのはナーガの男性、丸い兜は間違いなくナナ族だろう。

 本当に一族ごとに兜が違うんだな。

 俺は甚平の感触を楽しみながら外の景色に目を向ける。


「首都は五十階建てのナーガ庁を中心に大きなビルディングとツタなどの植物が売りでね、真ん中から流れる沢山の水はナーガの自然の象徴の一つでもあるんだ」

「そうなんですか」

「ロウ族だよね? ロウ族の首都は良いよね。木と水で出来上がった町で。僕は好きだよ。大きな巨木にお店や病院があって、その下に住宅街が広がっているんだよね…」


 そうなんだと俺は想像するしかできなかった。

 だって知らないから。


「噂だと今回の勇者はナーガ人らしくてさ。それが理由で中央大陸のヒューマン族から追放されたとか…」

「そうらしいですね。勇者は嫌いですか?」


 聞いてみたくなった。


「良いや。むしろ誇らしいよ。勇者が嫌いなナーガ人なんてそういう居ないさ。むしろナーガに来てくれるって思ったらワクワクするよね? 早くお会いになりたいね」


 その言葉だけで俺はこの国に来てよかったと思えた。

 我ながら単純である。


「お。そろそろ到着だね。料金は前金で支払われているからね」

「はい。ありがとうございます」


 お礼を一言言ってタクシーが走り出していくのを待ってから、俺は五十階建てのナーガ庁へと入っていく。

 案内を受けてそのまま奥へと進んでいき、エレベーターが四十階まで移動したところで別の案内へと切り替わる。

 綺麗な赤いカーペットに豪華な装飾がある薄い黒にに近い色の廊下、場違い感を感じているのは俺だけなのだろうか?


「あの…もっと綺麗な服の方が良いのでしょうか?」

「? いいえ。ロウ族の民族衣装ですよね? 良いのではないでしょうか?」


 すっげえ簡単な返事に戸惑いかねない俺。

 大きなドアを開けて中へと入ると、先にエロ爺がソファに座っており対面には百八十センチほどの長身の美人が座っている。

 黒いスーツを着て胸には白いバラが飾ってあるのだが、胸元が閉まらないのか大きく開けていた。

 全くエロいと思わないのは…もう俺がナーガ人だからだろう。


 国家元首と思われる女性から「対面にどうぞ」と案内されて俺は爺の隣に座った。


「そっちはどうじゃったかの?」

「ナーガ人になってる。百パーセントナーガだって言われたよ。そっちは?」

「こっちもじゃ。元には戻らない。これで結論じゃな。こちらは国家元首のエワンさんじゃ」

「エワン・ベルナと申します。ジャック・ロウで合っていますね? 貴方さえよろしければ我々ナーガの国民として登録させていただきますが?」


 エワンさんの丁寧な物腰にこっちも少し緊張してがちがちになりそうになりながらも「お願いします」と頭を下げてお願いします。


「ほほう。後悔はないみたいじゃな? 良かったのうエワンや」

「ええ。我々ナーガ人は絶対同胞を見捨てたりしません。ようこそナーガへ! 歓迎しますよ」


 心から温かい気持ちが溢れてきて一筋の涙を拭って「これからよろしくお願いします」と告げた。


「まずはジャック・ロウの今後を先に、リアン様の今後と事件の黒幕になりますね」

「俺はどうすれば…」

「ジャック・ロウの正式な住処をこちらでご用意しました。明後日の朝にはアンヌ様が到着し治療が開始します。治療完了期間は約一週間。その間に生活に馴染んで頂きます。リアン様はその間に色々と私達と話がありますので、その時にジャック・ロウが追っているという見えない敵も各種族に通達してますね」

「お願いするわい。流石にもう当面は教会への直接的な接触が出来んし。しかし、ジャックの種族転生はどうなる?」

「それについてはアンヌ様の治療を終えたのちに説明いたします」

「という事はもうナーガ政府は分かっていると?」

「はい。調べましたので。直ぐに結論が出ました。君の祖先の一人はナーガ人です。それが君にナーガの血が流れていた理由なのでしょう。


 俺の子孫の中にナーガが混じっている。

 それがはっきりと分かった。

どうでしたか?

当分は戦いもない平和な日常が続く予定で、もう少し進むとロウ族の町も描いていきますのでよろしくお願いします!

では次の十五話でお会いしましょう!

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