勇者の剣を求めて 9
勇者の剣を求めて九話目となります。
勇者の剣の能力と名前が決まります。
では本編へGO!
太刀の能力は『二倍返し』で小太刀の能力は『反射』で間違いが無いと確信を持ったわけだが、同時にノルヴァスにも能力は理解させるには十分な効果だったはずだ。
勇者の剣を握りしめた状態でジッとこちらを見ていたノルヴァスだったが、アルノ最高司祭の両腕の切り口を更に深めに切断して俺のブラックホールの効果を付与した斬撃攻撃の追加効果を解除して見せた。
ある意味唯一の正解だろうけれど、他人の腕とは言えそれを躊躇なく行えるあいつの神経はある意味常軌を逸していると言える。
アルノ最高司祭は切られる瞬間も悲鳴を上げているわけだが、まあ俺はそれについては不思議だと思う事も無いわけなのだが、出来ればここで引いてほしいと心から願う。
しかし、ノルヴァスは握りしめた剣を斜め上へと向かって振り上げると同時に飛び出した斬撃はまっすぐに鍛冶士達へと襲い掛かった。
俺は斬撃の軌道上へと移動して斬撃を反射させると、ノルヴァスは返ってくる斬撃を余裕をもって回避する。
無表情に近い表情を浮かべているのだが、一体何を考え何を想い何をしようとしているのか俺からではまるで理解できない。
まだここでやろうと考えているのか、それとも別の策を考えているのかと警戒を解かないでいると勇者の剣を収めてアルノ最高司祭を担いで背中を見せる。
「勇者の剣を完成された以上俺達が此処でやることは無いな。効果も分かったことだし、対策を検討させてもらうさ」
今此処で襲い掛かればとふと思ったが、その場合アルノ最高司祭程度は殺せるかもしれないが、間違いなくノルヴァスは鍛冶士を何人か殺すだろう事は間違いが無い。
となれば俺は此処で見逃すことが唯一の方法なのだろう。
ノルヴァスはそのままアルノ最高司祭を連れてズレた世界への道を開き去って行った。
最後までしっかりと姿を消した姿を見届けた後、俺は鍛冶士達に勇者の剣を返却した。
「申し訳ないことをしました。緊急時でしたので…」
「良いのです。剣が貴方を呼んだ。そういう事でしょう。最後の仕上げたがありますので」
俺はもう一度深々と礼を言い、流石にこの部屋の中に残ることを選び部屋入り口で最後の仕上げをしている彼らをジッと見守る。
外での戦闘音も無くなったので恐らく全員が撤退したのだろうが、ズレた世界をこんな形で活用してくるとは思いもしなかった。
ものの十分ほどで最後の仕上げを終えた彼等だが、まだ戻ってからの仕事があるというので俺はそのまま剣を預けることにした。
外に出ると皆が心配そうな顔で待っており、アンヌが代表して「大丈夫だった?」と聞いてきたので「ああ。大丈夫だよ」と答えておいた。
そのまま全員で一番集落まで一旦戻ってから、最後の仕上げを待つことになる。
まあ、仕上げと言っても恐らくは鞘作りだろう事は間違いが無い。
あのままでは刃がむき出しで危なっかしいだろう。
「あっさり撤退しましたね。もう少し抵抗するかと思いました」
「う~ん。勇者の剣が出来たし効果も最低限で知れたから撤退したんじゃないかな? 下手に突っ込んでいって返り討ちに会いたくないって判断したんだと思うよ。明日の朝には出来るの?」
「らしいけど。今日一日は暇だな…」
俺は先ほどまでいた火山の山頂へとふと視線を向けつつ、今度は両腕をふと見てみる。
火傷の痕こそ全く無いが、服は肘から先が無くなっており先の方も燃えた痕がしっかりと残っていた。
強引に手を突っ込んだので仕方がないと言えるかもしれないが、まあ服を買えって変えればいいだけなのだが、結構服代金がかさむな。
全部自己責任なので何とも言えないけどさ…。
「俺は服を買ってこようかな…服屋なら何処か探せばあるだろうし」
俺は一人歩き出すと後ろをメイビットが付いてくるので俺は「メイビットも服か?」と聞いてみると、メイビットは笑顔で「はい」と答えた。
「女の子なら服はやっぱり好きなのか?」
「はい。でも、今までは中々買う機会もお金も無かったのですが、今はある程度の余裕が生まれたので。でも、ここはあくまでもホビットの集落ですからナーガの服は無いかもしれないですね」
「まあ、無ければ最悪今のままでも良いけどさ。ここ最近服の損害が激しくて…」
「誰かに頼んで買ってくることは出来ないのでしょうか?」
「どうだろうな…頼めば政府が持ってきてくれそうだけどな」
「この後はそのまま隣の大陸に?」
「いや。その前に首都に行く。どうせ途中だしさ。少し話を聞いておきたいことがある。隣の大陸に行く前にな。俺個人の用事もあることだし」
「本ですか?」
「ああ。それに…厄災のホビットを探しておきたいんだ。いるとは思うからさ。間違いなくな」
この集落での事件はともかく前の街と村での事件は間違いなく厄災のホビットが関わっており、彼は双子のホビットを探し出しては呪いを振りまこうとしているようだ。
あの村の情報が行き渡れば必ず厄災のホビットへと情報は洩れるだろう。
それに、こういう聖典に出てくるような奴らの子孫がトラブルを起こすとなるとほぼ確実に首都絡みで事件を起こすのは分かり切っているのだ。
特にこういう双星のホビットを探そうとしている素振りから見ても間違いが無い。
問題なのはノルヴァス達はその厄災のホビットを忌み嫌っているようで、探す気があるのかすら分からない。
まあ、呪いを作り出した存在はその身と一族が代々呪われると言われているから仕方が無いけど。
関わりたくは無いだろうな。
「呪いは病気みたいですね。人から人に広がって災いになるし…」
「似て異なるものだな。遥か昔は病気も鈍いみたいなものだったしな。結局で現代技術で解明できないことは呪いなのかもしれないな」
「呪いは解呪すると呪いを掛けた本人に帰るんですよね? この場合呪いを振りまいている本人が呪われている場合はどうなるんですか?」
「解呪されて終わりだな。性格は呪いを振りまいている人間を殺せば終わりだ」
結局で呪われている人間が呪いを振りまいている場合は「殺す」がモットーなのだ。
それ以上もそれ以下も存在はしない。
冷静に冷酷にただ作業をするように行わないといけないのだ。
「そもそも生きる呪いとなってしまった者が救われることは無いし、その一族も同じだ。罪は無くても罰は背負わないといけない。救われることは無い」
「なんか…嫌だなぁ」
「いざとなれば俺が何とかするから考えなくていい。特にお前達姉弟がな」
「ジャックお兄ちゃんとアンヌお姉ちゃんが兄妹だった場合、今の関係も変わるのかな?」
「どうだろうな。お前達と違って俺達には兄妹として育った記憶も思い出も無いからな。案外変わらないかもな。まあ、そうだと決まったわけじゃないけどさ」
まだ推測の段階なのだから。
「ジャックお兄ちゃんはどうして甚平ばかり着るの?」
「唐突だな……う~ん……単純にピッチリする服が嫌いなだけなんだけど…何と言うか気持ちが悪い? こう…ゾワッとする」
「ああ。分かるかも。私もあまり好きじゃなくて、体のラインが出るし…」
「メイビットは痩せているだろう?」
「そういう意味じゃなくて、恥ずかしいから。普通に。それにゆったりとした服の方が服の中に隠しポケットを作ることも出来るから」
「それは錬金術師ならではの視線かもな」
「でも、ネリビットは結構嫌がるんですよね? ピッチリした服が好きらしくて…」
「そうなのか…アンヌがどうだったかな?」
そんな話をしている間に俺達は服屋の前まで辿り着いていた。
どうでしたか?
次は首都編のプロローグ回も兼ねています。
次の首都編をもってホビット大陸編は終了です。
首都編は敵味方入り乱れた総力戦となります。
では次は双厄のホビット第三十一話でお会いしましょう!




