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魔王少女はそうとは知らずに騎士になる  作者: ユタニ
第一章

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65.閑話 フリオの話

42話でサーシャが報告していた、ハナノとフジノの長兄フリオとサーシャの面会の様子です。フリオの語りのみ。


こんな所まで第二団の副団長さんにご足労いただきすいません。

第十八団で会計係をしております、フリオ・デイバンといいます。


あ、いえいえ、とんでもないです。

僕の時間なんて気にしないでください。


そうですね、まずは座りましょう。


えーと、フジノの話が聞きたいと伺っているのですが、なんでまた……えっ?

そんなにすごいんですか? フジノが?

いやいや、まあ地元では神童扱いでしたし、正直、僕では剣も歯が立たないですけど、それは田舎で僕の剣の腕だからかと。


はあ……えっ、ええ?

アレクセイ団長以来の逸材ですか?

アレクセイ団長って、あのアレクセイ団長ですよね。偉大な大賢者のお家のご子息で、騎士団と皇室の魔法塔で取り合いになった方ですよね。


へえー、ほー、そんなすごい方並みの逸材……いやあ、すごいんですねえ、あいつ。


あー、それで、小さい頃の様子を聞きたいと。ふむふむ、どんな風に魔法の練習していたか、とかですね。

ははは、確かにあいつは教えてくれないでしょうね。人見知りなんですよ、家族以外にはいつも無愛想で。


家族ですか? 父と母と長男の僕に、次男に三男、その下にフジノとハナノの双子です。5人兄弟なんですよ。次男は今商家に奉公に行ってて三男は何してるかなあ? まあ何かはしてます、自由な奴なんです。


あ、それで、フジノの魔法ですよね。うーん、それが実はフジノの魔法は僕はあんまり見たことなくて、風魔法は小さい時のシャボン玉飛ばす、くらいしか。え? ああ、それが4才の時ですね。


炎の方は年に一回の地元の野焼きの時に見せてくれてました。あいつが野焼きを魔法でやり出してからは地元ではちょっとしたイベントだったんですよ。

ほら、田舎だから魔法使いなんて滅多に来ないんで。フジノは普段は魔法を見せてくれなかったし。


魔法を見せる事? ああ、嫌だったみたいだなあ。理由を聞いたら『僕の魔法は大きいから嫌だ』って言ってましたね。多分だけど、遊びで使っての事故とかを気にしてたのかな? 大人びた奴だったし。


あとは魔道具への魔力の注入くらいですね。

あいつ、6才で魔力の注入出来たんですよ。よく灯りの魔道具に魔力を入れてくれてました。


そんな感じで、すいません。練習してたかどうかも知らないなあ。


あ、勉強はとにかくよくしてましたよ。

家の図書室の本を読み尽くしてからは、神殿の学校にもハナノと通って神殿の先生によると神殿の古書も読んでたみたいです。

あの当時は、欲しいものは古書か図鑑でしたね。僕が騎士になって帰省する時も帝都にしかない本を買ってきてくれって言われました。


剣は僕が指南しました。

あ、剣も強いんですか? そうなんですよ。

えっ? 僕のおかげ? いやいやいや、僕の指導によるものとかじゃないです、絶対に。


フジノは、最初に剣を握った時から全部知ってるみたいでした。

えーとね、何て言うかなあ、徐々に上達するっていうんじゃなくて、徐々に慣れていく、というか、感覚を取り戻していく、という感じたったな。

天才っているんだなあ、ってその時は思いました。恥ずかしながら僕は地道に努力するしかなかったので。


うん? ハナノ?

ああ、ついでに? ふふふ、いいですよ。


ええ、可愛いでしょう。最近は可愛いって言うと怒るんで言わないんですけど、可愛いですよね? 兄の欲目かと思ってたんですけど……ですよね!


ハナノは末っ子で我が家で唯一の女の子なんでね、家族みんなで甘やかして育ててしまったんですけど、いい子に育ちました。

小さい時は体が弱かったんですよ。しょっちゅう熱を出してね。これが高熱だからいつも心配してました。


ところで何でハナノは第二団なんですか? 確かにいい子ですがお世辞にも剣は強くないし、魔法も使えないと……


へー、ハナノが魔獣を扱えるかもしれない。

いや、知らなかったなあ。

そうかあ、フジノと一緒に熱心に勉強してたからかなあ。

まあでも、ハナノがフジノと同じ配属で良かったと僕は思ってます。


もちろんハナノもですけど、それ以上にフジノにとって。フジノは一見大人びてるんですけど、あれは意地っ張りなだけで中身は年相応か、変に拗らせてる分、幼いんです。拗らせてるのは小さい頃から何でも出来て大人扱いされてたからだと思うんですよね。


僕、フジノが13才の時に模擬試合で完敗したんですけどね。

あいつ、たぶん10才の時にはもう僕に勝てたと思うんです。ずっと遠慮してたんだと思います。

13才の時は、僕が本気出せって言ったんです。いやあ、あっという間に負けましたねー。

で、僕はもう心構え出来てたし平気だったんですけど、フジノは目に涙を貯めてるんですよ。勝ってしまって申し訳ない、とか、勝ってしまったショックとか、そういう涙だったのかな。

ハナノが一生懸命慰めてました。


あと、双子だからかな、ハナノへの依存が高いと思うんですよね。


ハナノが熱出してる時はいつも不機嫌だったし、神殿の魔力測定の数日前には、魔力が規定値越えたら帝都の魔法学校に行くことになってハナノと離れるかもしれないからって、一晩中ハナノに泣きながらしがみついて離れなくて……


あっ、これ、しゃべったの内緒ですよ。

怒られるんで。


あとは8才の誕生日かなあ、何でかね、ハナノと2人っきりでお祝いしたいとか言い出して、家の裏山にツリーハウス作って籠ってましたね。


とにかくハナノにべったりですね。まあ双子だし、しょうがないんですかねー。

ハナノの方はフジノより淡白な感じなんですけどね。


あれ? フジノの話に戻ってますね。

すいません。

大丈夫ですか? 良かった。


ハナノはフジノの影に隠れがちなんですけど、僕よりずっと魔物の事とか、薬草の事に詳しいですし、ああ見えて自分の意見もちゃんとあって、ちゃんと言います。


前向きに努力する奴なので、どうかよろしくご指導ご鞭撻をお願いします。

あ、フジノはちょっとややこしいと思うんで、生温かく見守ってもらえればと。


こんな感じで良かったですかね? そうですか、良かった。


あ、今さらですが、お茶をどうぞ。

サーシャ副団長は本日はこちらに泊まられます?

おっ、そうなんですね。でしたら街を案内しましょうか。いえいえいえ、気にしないでください。弟と妹がお世話になってますし。


夕食のあてはありますか? なければ美味い食堂をご案内します。

いえいえいえいえ、本当に気にしないでください。


 

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