愛する愛馬と眺める初日の出
今年はシルクのデビューの年です。
元日 早朝
和馬はカノンに馬具を取り付け散歩の準備をしている
いつの間にかこの馬房にはシオンとシルクもいて
和馬とカノンの散歩についていくことになっていた。
厩舎から聞こえる物音で目が覚めたのか紫苑と麗華が
和馬たちを見送るために厩舎内へ
そこへ光秀さんと琴音さんが現れ新年の挨拶をする
「和馬さん 新年あけましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い致します。」
「あ、光秀さん 琴音さん 明けましておめでとうございます。
こちらこそよろしくお願いします。」
「和馬さん あやのなんですがあのこ朝弱いので
すいませんね また改めて挨拶に行かせますから」
「いいですよ、気にしてませんから」
和馬は手慣れた感じで準備を済ませるとカノンへ騎乗する
「それじゃあ、光秀さん 後のことよろしくお願いします」
「牧場は大丈夫ですから のんびりと散歩してきてください」
和馬とカノンの後ろにシオンとシルクも従え和馬は歩き出す
厩舎から出ていく和馬を見送ると
「さあ、二度寝でもしようかな」
紫苑と麗華は二度寝するようで部屋に戻っていく
馬房の掃除と飼葉の準備は既に終わっているので
紫苑と麗華はあと3時間は眠れると部屋に帰る
その二人を見送る光秀と琴音
「しかし、見慣れたけど 引き綱もつけてないのに
シオンとシルクも等間隔でついていってるよな
普通はあのまま放馬するだろ確実に」
「それだけ うちの繋養馬は和馬さんのこと信頼
しているのよ 普通じゃありえないわ」
牧場から初日の出を拝んだ二人は厩舎へ戻り休憩室へ入ると
光秀が唐突に琴音に話しかける
「なあ、琴音 話があるんだが」
「嫌よ 私は反対だから」
「まだ 何もいってないだろ?」
「あんたの考えなんてお見通しよ
どうせ私たちが手放した牧場のことでしょ」
「ど、どうしてそのこと」
「あんたと何年の付き合いがあると思うのよ
それぐらいわかるわ あんたがたまに一人で牧場を
見にいっているのも知っているわ」
「だったら なんで反対なんだ?
まだ売却されていない今のうちに契約したいんだ
最初は賃貸で最終的に買い戻すつもりだし
不動産屋とも近いうちに契約のことをだな…」
「私もね ただ買い戻すだけなら反対しないわよ
あなたの生まれた家でもあるからね
でも馬産はだめ あなたが私の反対を押し切って
やるなら私は離婚するわ 当然あやのもよ」
「どうしてダメなんだ。 今なら現金もあるし
頭金の問題もない まあ厩舎の改修工事はしないと
馬もまともに繋養できないけどな 」
ため息をつく琴音
「やっぱり 思い違いしてるわね
そんなに牧場経営が簡単に思えるの?
一度失敗して手放したのに
私たちでは無理なの理解できていないの
もちろんシオンがいたとしても無理よ」
「でもな、俺たちより馬産の経験がない和馬さんでも
天翔牧場を問題なく維持できているんだ
真似すれば 何とかなるだろ?」
「あんたほんとに馬鹿ね
私たちじゃ無理だったから牧場を手放したのよ
そんなこともわからないでもう一度チャレンジする
笑わせないで やるなら一人でやりなさい
私とあやのを巻き込まないで あとシオンはもう和馬さんの
繋養馬だから 返せなんて恥ずかしいから言わないでよ」
「嘘だろ シオンがいないと繁殖ができない
それにシオンは俺たちの所有馬だ
紫苑が勝手に結納金代わりといってただけだろ」
呆れる琴音
「それじゃあ シオンを和馬さんから返してもらえたとして
シオンに種付けする種牡馬はどうするの?
伊藤牧場のブラックで種付け〇〇〇〇万円するのよ
ちなみにうちのプライムは今年から種付け金額〇〇〇〇万円だそうよ」
「和馬さんに恩を仇で返してシオンを奪い取り
種付けする種牡馬をどこで調達するのかしら
安い種牡馬なら○○万円でも種付けできるけど
それじゃあ産駒を上場しても落札されないでしょうね」
「落札されないと牧場は維持できないのよ
シオンに無理をさせられないし
それにもっと大切な馴致は誰がするの?」
光秀はぐうの音も出ない 琴音は正論をいっただけだ
シオンの産駒でも簡単にG1を勝てる競走馬にならない
重要なのは産駒の馴致の内容だ
プライムの種付け金額は四桁になりました
まあG1を勝てる馬の種牡馬ですから
当然跳ね上がりますよね
ブラックの需要も増え既に四桁です
「あなたはどうか知らないけど私は今の生活がとても気にいっているの
あやのも多分同じ気持ちよ 牧場は買い戻してもいいけど
私たちが牧場経営するのはもう諦めなさい
ここでも貴方のやりたいことはできるはずよ
和馬さんに相談すれば きっと力になってくれるから」
光秀さんの顔の表情に変化が
「琴音 すまん 俺はどうかしていたようだ
俺は和馬さんの行動をまじかで体験することで
なんか俺でもできそうだと錯覚していたらしい
冷静になって考えると真似なんてできるはずがないのにな」
光秀が冷静さを取り戻しほっとする琴音
「あなたが正気を取り戻せてよかったわ
私も本気で離婚しなくちゃと考えていたから
私たちはここで厩務員として働けて幸せなのよ
あなたも和馬さんのおかげであやのと結婚できたの
和馬さんは大恩人なのよ」
「そうだな 俺も琴音とあやののためにも頑張るよ
貯蓄もあるし今度和馬さんに頼んで3人で旅行へ行こうな」
琴音は光秀に寄り添い ラブラブモードへ
「嬉しい あやのも喜ぶわ
でもね 私たち3人抜けて問題ないのも
ホースパークに厩務員がたくさんいるおかげなのよ
以前の私たちの牧場だとほんとどこにもいけなかったわよ
紫苑にも悲しい思いさせていたと思うわ」
「そうだな 琴音のいうとおりだ 家族で旅行へ行けるのも
この牧場で働いているおかげだからな」
この旅行の話は、和馬にも了承され 3人仲良く旅行へ
行くことになりました。
話はさかのぼり 和馬とカノンたちは
和馬と牝馬3頭は小高い丘の頂上で初日の出を眺めていた
和馬の願いは、
「馬の神様 今年も繋養馬たち皆健康で怪我もしないように
見守ってください お願いします。」
シオンは和馬に尋ねる
「ねえ、和馬 何を馬の神様に祈願していたの?」
「もちろん シオンたちが今年一年怪我無く健康で
いられますようにと頼んだよ 俺の大切な家族だからな」
「そうよね、私は和馬の妻だものね」
「え~ お母さんだけずるいよ カノンもお父さんの
奥さんだよ」
「え~お姉ちゃんズルい シルクもパパのお嫁さんだよ」
「こらこら 心配しなくても シオンもカノンもシルクも
俺の奥さんだよ これからもいっしょだよ」
「わ~い シルク嬉しいな 今年デビューだから
パパといっしょにいられるしね」
カノンとシオンがシルクをみつめる
「そうだな シルクも今年デビューだから
トレセンでも競馬場でもいっしょだな」
「え~シルクいいな~ 私も引退取りやめしようかな」
無理だよ カノン
1月初旬 牧場事務所の電話が鳴る
DRAからの仕事の依頼の電話らしくあやのさんが見えない相手に対し
へこへこと頭を下げている
その依頼内容は、 カノンと麗華にG1レース開催日に
イベントに参加してほしいとのことだが
和馬はカノンに今年は休養をさせると約束しているので
すべて断るようにあやのさんへ伝えるが
あやのさんの元上司からのお願いなので何とかしたいと願うあやの
「和馬さん お願いできませんか?」
あやのが目に涙をため上目づかいで 和馬に懇願のポーズをする
これはどう見ても反則だろう
和馬は思わず 年上なのを忘れ あやのの頭を優しくなでてしまう
「わかりました 条件次第で依頼を引き受けましょう」
あやのは思わず 和馬に抱き着く
「ありがとうございます。 和馬さん」
紫苑の感想
「やっぱ 和馬もあやのさんには弱いんだ
可愛いいと得だな」
後日 条件をつけ 日本ダービーとアリーナ記念のイベントに
参加することにした。
光秀さんも優秀な厩務員なのですがチート和馬の真似は
逆立ちしても無理です 琴音さんはなんか凄い奥さんですね
家族経営の仕事だと子供が犠牲になる場合もあり
家族旅行なんて難しいのかもしれません




