カノンが愚痴る
ミセスキャサリンの葬儀が終わり 遺体は火葬後天翔牧場の墓地へ埋葬された
紫苑は和馬がひどく落ち込んでいるためある提案をする
「ねえ、和馬 シオンとシルクの馬房へいって慰めてもらいなさい
後のことは私たちでやっておくから」
和馬は紫苑へ
「紫苑ありがとう それじゃそうさせてもらうわ」
その日から和馬はシオンの馬房で1週間ほど引きこもった
ただ、馬房の掃除とか飼葉の準備などしっかりやっているので
紫苑とその両親は他の4頭の世話をすることにした。
ただ、紫苑は最初は冗談でいった言葉を和馬が真に受けたため
数日後後悔することになる
「ねえ、母さん」
「なんだい 忙しいから手短にいいなさい」
「和馬が冷たい 夜も母屋に帰ってこないで
シオンの馬房で寝泊まりしてるのよ
一人寝がさみしいの どうしよう」
呆れる 琴音
「あんたねえ 夫婦のことは二人で解決しなさい
もう少しの辛抱だから我慢しなさい」
和馬が引きこもりシオンとシルクの母娘の感想
「久しぶりに和馬に甘えることができるわね
もちろん 私が和馬を慰めてあげてもいいわよ」
「パパが遊んでくれるからシルク嬉しいよ
どうせならパパもこの馬房で暮らせばいいのにねママ」
来年 デビューのシルクの馴致も問題ないようです
人との信頼関係の構築は成功しています
これなら良い成績残せそうです。
それに引き換え トレセンにいる2頭は不満そうです。
「カノンお父さんに褒めてもらえると思って
宝記念1等賞取ったのになんでお父さん来てくれないのよ」
「僕はカノンに負けて2着だったけどね」
ドリームの予定ではJHKマイルへ出走だったが佐々木が和馬に頼み込み
カノンと宝記念へ出走することにした。結果はカノンがドリームに
首差で勝利したが、佐々木は来年のアリーナ記念を念頭に置いて
出走を決めた ドリームの引退レースをアリーナ記念に想定したからだ
中長距離が得意のカノンにわずかに及ばずの2着だが3着以降の馬に
5馬身以上引き離しての2着なのでカノンが出走しないのであれば
1着取れる可能性が高いと判断した。
ドリームはカノンの一応お兄ちゃんなので慰めの言葉をかける
「カノンしょうがないよ 佐々木さんが厩務員の人と
話しているの聞いたけどなんか牧場で繋養してる
高齢のおばあちゃんが亡くなって葬儀をしたらしいから
和馬さんも大変だったからね」
カノンはその話を聞いて癇癪をおこすのをやめた
「お父さん きっと悲しんでいるよね
カノンがすぐそばにいたら慰めてあげるのに
お父さん 早く帰ってこないかな」
「それは無理だね」
「なんでよ」
「僕とカノンは秋までレースないから
来週には牧場へ帰るからだよ
向こうでお父さんを慰めてあげればいいよ」
カノンはふて腐れた表情で
「ドリーム 甘いわよ 牧場には
お母さんとシルクがいるのよ
どうせお父さん馬房にこもって
お母さんに甘えているわよ」
「カノン よくわかるね」
「フン 舐めないで 伊達に4年近く
お父さんの愛娘やっていないわよ
お父さん 悲しいとすぐお母さんのところへ
来るから お母さんに抱き着いて甘えるのよ」
和馬の行動と性格はカノンにもわかるほど単純なようです
話は遡り 宝記念の口取り式に一人で参加した佐々木調教師
トレセンへ戻り助手と厩務員との会話
「先生 お疲れさまでした。 」
「いやいや 今年に入り今回で3回目のG1の口取り式ですが
一人だと逆に緊張しますね 和馬さんがいてくれると
よかったのですが、牧場のほうで不幸があったそうなので
しょうがないですね」
「先生 贅沢な悩みですよ ほかの厩舎の先生に聞かれたら
妬まれますよ」
佐々木さん表情は諦め顔です
「もう 慣れましたよ 無言の着信履歴見ると うんざりします」
「でもすごいですよ カノンはこれでG16勝目で
ドリームも4勝ですからね」
「そうですね それもこれもみな 和馬さんの馴致の成果です
2頭ともほんとにいいこですからね
素直で私たちの指示を間違えないで聞いてくれますから
調教もスムーズです、他の馬ならこんな成績残せませんよ」
「先生 そのことなんですが、セレクトセールで落札された
産駒はそこまで成績残せてないのはなんか理由はあるんですか?」
佐々木の考えは
「そうですね、単純に馴致時間が足りないのが原因ですかね
2歳馬のセールならまだマシですが当歳馬だと難しいと思います
天翔牧場の馴致は昔から完璧で他の育成牧場の馴致では
まるで歯が立たないと競馬関係者の人に言われてましたから」
「それと先生 話が変わりますが、フリーの戸崎騎手が
佐々木厩舎に所属する件ですが事実ですか?」
佐々木は思案して
「戸崎君から頼まれたのは事実ですがまだ正式に決めたわけじゃ
ないです 簡単に決めることができませんから
ただ、吉田君が引退するのが決まっている以上
うちとしては戸崎君がここへ来るのを歓迎しますけどね」
厩務員から
「でも それって目的は天翔牧場産駒の主戦騎手ですよね」
「当然でしょう 騎手である以上レースで勝てる馬に
騎乗したいに決まってますからね 彼だけじゃないでしょ
所属騎手になれば、騎乗できる可能性はありますからね」
「それと騎手だけでなく調教助手とか厩務員からも
うちへ入りたいといろんなところから
アプローチがありますからあなたたちも
頑張らないと足元すくわれますよ」
厩舎所属の馬が勝つと調教師だけでなく担当厩務員にも
賞金の一部が手に入るので厩務員たちも必死になるでしょう
「先生 俺たちクビにしないですよね?」
佐々木は笑顔で答える
「それわあなたたちの頑張りしだいですね」
翌週 光秀が運転する馬バスがトレセンへ到着
カノンとドリームを乗せ牧場へ向かった
秋まで休養です。カノンは牧場へ戻ってきても
不機嫌な顔してましたが和馬が1日甘やかすことで
どうにか機嫌もよくなり馬房で仲良く3頭で
過ごしています
ドリームも久しぶりの里がえりでシルフィに甘えてますね
グレイはそろそろお産が始まりそうです。
サンダーサイレンス旋風が巻き起こるのか
とても楽しみです




