紫苑の抱える不安
紫苑はやはり複雑な心境ですね
新婚旅行から戻ってきて最初にやることは紫苑に優しくすることだった。
ご両親に旅行中の紫苑の様子を聞くと毎日作業中も上の空で
話しかけてもまともな返事が返ってこないので心配はしていたとのこと
俺たちが日本へ帰国する日 大事にならずに済んだが紫苑がミスをしたので
あんた邪魔だから家で寝てなさいといったら 何も言わず部屋に帰ったとのこと
「和馬さん あんな腑抜けた紫苑私でも初めて見ましたよ
口には出しませんがやはり和馬さんが麗華さんと二人で旅行したの
精神的に堪えているようなのでどうか紫苑を慰めてください」
その話を聞いた俺は母屋に戻り紫苑を探すがどこにもいないので
寝室へ行くと布団を頭から被り紫苑が嗚咽していた。
俺は紫苑の弱弱しい姿を見ていかに今回の婚姻が紫苑のこころに
影を落としたのか 鈍い俺でも理解することができた。
「紫苑 ごめん」
俺はそのまま紫苑の寝ている布団へ潜り込み
紫苑を後ろからそっと優しく抱きしめる
すると紫苑の嗚咽も大きくなる
「和馬のバカ 私凄く寂しかった 麗華と二人だけだと考えると
凄く不安だったよ このまま私を置いてどこかへいってしまう
んじゃないかと そんなことないのにね」
紫苑が体の向きを変えて正面から抱き着き胸に顔をうずめる
俺は紫苑が泣き止むまで何も言わず抱きしめていた。
暫くしてやっと感情がコントロールできたのか
「和馬 ほんとごめん 私も自分が弱くなるなんて
思いもよらなかった 麗華は私の親友なのにね
表面的に麗華を数馬の奥さんと認めたはずなんだけど
心の中ではやっぱり私は数馬を独り占めしたかったみたい」
まだ無理をしてるが少し落ち着いた紫苑を見て和馬はほっとする
「紫苑 麗華を妻にしたが俺は紫苑をないがしろにすることわない
二人とも大切にするからな 約束する」
「和馬 ほんとよね 和馬が毎日麗華のところで寝てたら
私また泣くからね これからは私と麗華とシオンのところ
平等に寝るのよ 和馬にできるの?」
和馬は紫苑のお願いを聞いて
頑張るよと答えることしか出来なかったが紫苑は満足したようだ
和馬と紫苑と麗華はこの世だけでなく来世の馬の国でも
パートナーとして長い時間ともに過ごすことになる
和馬の苦労はまだ始まったばかりだ
数日後 麗華が牧場へやってきた。
どうも紫苑に話があるみたいだ
ちなみに麗華と結婚したが麗華とは別々に暮らしている
麗華が現役騎手である以上 同居は難しいのだ
紫苑と麗華が俺の前に来ると
「和馬 今日は一人で寝るかシオンのところで寝なさい
私と麗華は二人で今後のこと話し合うから」
俺はその夜シオンの馬房へお邪魔した。
「シオン 俺を慰めてくれ 紫苑が冷たいんだ~」
ふざけてシオンへ抱き着く和馬
馬房にはシオン以外にカノンとシルクがいる
「はいはい 慰めてあげるから 横になりなさい」
カノンとシルクは呆れ顔
「パパもまだ子供ね」
翌日には麗華もトレセンへ戻った
前日の夜にどのような会話があったのか知る由もないが
二人ともギクシャクすることもなく以前の関係に戻れたようで
和馬は一安心した。
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そして天翔牧場ではシオンとシルフィのお産が始まる
グレイは種付けが遅かったため今回は2頭だけになるが
今回は昨年のようなサプライズな出来事もなく
それぞれ栗毛の可愛いい元気な男の子が生まれた。
そうだ シオンもシルフィも牡馬を生んだ。
シオンに罪はない あの黒いのが悪い
今年の当歳馬セレクトセールには2頭上場することが決まった。
ちなみにセレクトセールの主催はDRAで会場を提供するのが
天翔ホースパークになる 広い駐車場もあるし
何よりセールに上場する当歳馬を厩舎で預かることができるのは
普通の牧場規模では難しいからだ。
※ セレクトセールの時期になるとパークで繋養されている馬たちは
仮設の組み立て式の厩舎へ移され 既存の厩舎は上場される馬が
使用します。
出産が終わると 今度は種付けシーズンになります
和馬は馬バスで伊藤牧場へ向かいますが馬バスには
シオンの姿はなくプライムとサンダーの2頭が
積まれてます。
昨年までの種付け件数なら天翔牧場で種付けができたが
今年の場合は申し込み件数が倍増したため
事故の危険性も考え 種付け施設が充実している伊藤牧場へ
2頭を預けることにした。
和馬が2頭を厩務員へ預け向かった先は
「よう、ブラック元気か?」
寝てるとこを起こされブラックは少し機嫌が悪い
「誰だ 俺は種付けで疲れているんだよ」
目を開け馬房の入り口をにらむとそこには和馬がいる
和馬を見て条件反射的に起き上がり
「和馬 久しぶりだな シオンは元気にしてるか?
そうか 今日はシオンの種付けだな 俺に任せろ」
シオンに種付けできると喜んだブラックだが
次の和馬の言葉で地獄へ落される
「ブラック残念だが今年生まれた産駒は栗毛の牡馬だ
それとシオンはここに来てない 種付けしないからな」
栗毛の牡馬が生まれたと聞かされ天国から地獄へ落された
ブラックの顔から血の気がひいた。
和馬との約束で牝馬が生まれなければ種付けはしないと
昨年和馬から聞いた言葉を思い出すブラック
「和馬 お願いだ 俺にもう一度チャンスをくれ
必ず 尾花栗毛の可愛いい牝馬をシオンに産んで
もらうから 頼む このとうり」
ブラックは和馬に頭を下げるが和馬は馬房の扉を開けて
中へ入るとブラックの肩をポンポンと叩く
肩をたたかれたブラックは頭を上げると
そこには笑顔の和馬がいた
「ブラック お前勘違いしているようだな
今年シオンに種付けしないのは俺の方針なんだ
繁殖牝馬にも休養が必要だからな馬体を休ませるため
数年に一度は空胎にするんだよ」
「それとな 俺はやり方を変えた
シオンがお前との種付けを嫌がるなら交代させるけど
シオンが拒ばないならこの先もお前に種付けさせることにした
俺はお前を高く評価している 来年また頼むな」
和馬から優しい言葉をかけられ安堵したブラック
「和馬、お前いいやつだったんだな
最初は悪魔かと思ったぞ
お前の期待に応えて俺は頑張る
必ず次回の産駒は牝馬が生まれるようにするからな」
ブラックの力で性別が選べるわけではない
「お、おう、頼んだぞブラック 期待してるからな」
和馬とブラックが馬房内で抱き合う姿を見た厩務員たちは
「あのブラックが懐くなんて やっぱり和馬さんは
俺たち皆の憧れる厩務員だ」
馬房から通路へ出ようとする和馬が振り返り
ブラックが不安になる言葉を投げかける
「なあ、ブラック 今年からうちの牧場に
アメリカ生まれの凄い種牡馬が入ったんだが俺としてわ
サンダーとシオンの産駒も一度は見たいんだよな~」
「おい、待て和馬、 和馬さん その話もう少し詳しく~」
ブラックの制止も無駄に終わり和馬は厩舎から出ていく
残されたブラックはまた不安な一年を過ごすことになる
そう、同じ厩舎にはその話題のサンダーサイレンスがいる
厩務員からもすごい馬だと評判を聞き
不安な毎日を過ごすことになる
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3月 俺はレースの打ち合わせのためトレセンの佐々木厩舎へ赴く
佐々木さんとの話で既に3歳で馬体が成熟したカノンは
4歳で引退をすることを決めドリームはまだ成長するとの判断で
4歳以降も怪我がなければ現役続行することにした。
今年のレースはカノンは中距離の重賞レースに出走
ドリームは短距離から中距離の重賞レースをメインにする
カノンのレース
4月大阪杯G1 6月タカラ記念G1 11月 エリザベート女王杯G1 12月アリーナ記念G1
ドリームのレース
3月 松宮杯G1 5月 JHKマイルC 10月 スプリンターS G1 12月 アリーナ記念G1
カノンの引退レースはアリーナ記念になる
それと引退を表明した吉田さんにはできるだけ長く現役でいてほしい
ドリームなら 吉田騎手の花道を演出できると信じている
4歳でカノンは引退して繁殖に入ります。
ドリームには5歳までは頑張ってもらいます。




