グレイが里帰りで相棒を捕まえた。
秋競馬の本番 いよいよ3歳牝馬と牡馬のG1レース3冠目
菊の花賞と秋華賞のレース本番の日が迫る
下馬評ではカノンとドリームが1番人気で評価されているが
距離特性もあるし簡単に勝てないと俺は考えている
カノンの秋華賞は適正的には行けると佐々木さんとも話をしたが
ドリームの場合頑張っても中距離の2400までだと思っている
秋華賞当日 カノンは1番人気に押され枠順も内枠が取れたため
スタートから終始 先頭グループで走り 最後の直線で抜け出し
首差ではあるが1着でゴールし見事牝馬3冠達成
カノン3冠おめでとう!! 来年の春まで牧場で休養しよう
翌週の菊の花賞は、先頭を走り最後の直線まで粘ったが最後でかわされ
僅差の3着でゴールしたドリーム よく頑張った。
恥ずかしくない りっぱな成績だぞ
ドリームも来年春まで牧場で休養する
無理はしない DRAから頼まれてもアリーナ記念には出ません
11月に入り 姉さんから連絡が入る
「グレイの受胎が確認できたから迎えに来てね」
動物検疫期間もあるし 早めに牧場へ連れて帰りたいので
俺は翌日の飛行機でイギリスへ向かった。
この時の俺はまさか帰りは1頭ではなく2頭で日本へ帰ることに
なるとわ考えていなかった。
空港でレンタカーを借りて牧場へ向かう
和馬もこちらでの運転も慣れたのか一人でレンタカーを借り
牧場やら競馬場へ行けるようになっている
英会話は日常会話レベルなので専門用語は姉さんの通訳が必要です。
牧場へ到着すると俺の到着をトムさんと姉さんが出迎えてくれた。
いつもの事務室へ案内され紅茶をいただく
姉さんが話を切り出す
「ねえ、和馬 種牡馬購入する気はない?」
和馬は驚きカップをテーブルへ置くと姉の顔を見ると
「藪から棒だね 勿論お買い得な種牡馬がいるなら
欲しいよ 天翔牧場の種牡馬はプライムしかいないからね
でも 牝馬と違って種牡馬は高額だよね?」
姉さん苦笑いを浮かべ
「まあね、牝馬よりは高額よね でも和馬は
グレイの喜ぶ顔みたいよね グレイもきっと喜ぶよ」
和馬 なんでここでグレイが出てくるんだと困惑
「姉さん 簡潔に説明してなぜグレイが喜ぶの?」
「グレイ 種付けしたよね その時の相手をどうも気に入った
見たいでね 当て馬なしで発情したのよ
和馬もこの意味わかるでしょ」
「でも、確か アメリカのG1勝ち馬で凱旋門賞の優勝馬だよね
そんな優良馬、馬主が簡単に譲ってくれるのかな?」
「その点は大丈夫 日本へ行くのは賛成の馬主さんだから
だから いいでしょ和馬買ってくれるよね
買ってくれないとうちの牧場の厩務員へお給料払えないのよ」
和馬 姉さんの困り顔を見て 諦める
「それで 姉さん いくらなの?
金額にもよるよ 父さんの許可もいるしね」
「大丈夫 お父さんに連絡したら和馬が許可すれば
問題ないといってくれたから 金額は〇〇億円 安いよね」
「こちらで立替えて支払い済ませてあるからね
和馬お願い グレイも喜ぶよ」
和馬は席を立ち姉に向かい
「それじゃあ、グレイに聞いてくるから
グレイが喜ぶなら購入するよ」
トムさんは不思議な顔してるけど姉さんは笑顔で
和馬を見送り手を振る
ところ変わり グレイの馬房
「グレイ迎えに来たよ 日本へ帰ろう」
「和馬さん 待ちくたびれましたといいたいところですが
お願いがあります。」
グレイにお願いされた 何だろう
「グレイの頼みなら何でも聞いてあげるよ」
グレイの表情が明るくなる 和馬はほんと頼りになると
嬉しくなるグレイだが
「お願いと言うのは 今回私に種付けした サンダーサイレンス
を日本へ連れて帰って欲しいのです」
そこまで 好きなのかグレイ 姉さんの言葉はほんとのようだ
グレイの望みを叶えてあげたいが理由をまず聞いてみよう
「グレイ 購入するのは問題ないけど理由を聞かせてくれる?」
馬房の中で照れくさそうなしぐさをするグレイ
「一目惚れです。 わたしの大好きな牡馬とそっくりなんです」
真面目なグレイの一目惚れなんですが詳しく聞くと
グレイが転生前の馬の国でお世話になった牡馬の子孫らしい
世話になった馬の名前は、グレイトサイレンス
60年ほど前の日本競馬界を変えた種牡馬と言われている名馬だ。
この子孫のサンダー君は隔世遺伝なのか青鹿毛の毛色で
グレイトサイレンスと瓜二つだとグレイは興奮気味に話す
グレイは死んだら馬の国へ行きそこで告白するつもりだったらしい
姉さんから聞かされた金額も日本競馬を変えた馬の子孫なら
お買い得価格で間違いない これはいい買い物だろう
俺は、グレイといっしょに連れて帰ると約束した。
グレイは嬉しそうな顔で俺を送り出した。
事務所へ戻ると
「姉さん トムさん サンダーサイレンス購入します。」
「その顔はグレイにお願いされたようね
私のいったとおりでしょ」
俺は出された契約書にサインをする
「よかった これでお給料払えるわ」
まだ いってるよ この金額ならはした金でしょ
契約を済ますと俺は経緯を聞くことにした。
サンダーの元の馬主は牧場を長年経営していたが
高齢のため引退を決意して牧場を売り出したらしい
その牧場がグレイトサイレンスが生まれた牧場とのこと
日本の馬主へ売却したあと生まれた産駒を交配させ
細々と血を絶やさないように代々受け継がれていたらしい
日本に来たグレイトサイレンスは日本競馬界に衝撃を与え
種牡馬として活躍したが16歳の時の病気が原因で他界した
その後産駒が血を絶やさないように子孫を残していたが
遂に途絶えることになる
そしてサンダーの引退後だが、種牡馬としてアメリカでは需要がなく
けっきょくイギリスの馬主が購入したが、気性難の馬として有名で
現役時代も騎手と厩務員から敬遠されていた問題馬だった。
そしてその馬主がトムさんの牧場へ種付けに来た時
日本人の姉さんを見て日本の馬主になら安く譲るといったため
姉さんはグレイも気にいってるし和馬なら購入してくれると
判断して購入したとのこと
どうもそのイギリスの馬主も手を焼いていたらしい
購入額は〇〇億だが、種付け料が〇〇〇万円で1年200回以上種付けすれば
数年で元が取れる計算になる 捕らぬ狸の皮算用かな
トムさんと交渉して今回種付けした産駒は天翔牧場で購入して
日本でデビューさせることになりました。
産駒の実績を作らないと種牡馬として評価も上がらず
種付けが出来ないからだ。
和馬は今度はサンダーサイレンスの馬房へ向かった。
トムさんの牧場厩務員もサンダーの噂を聞いて
蹴られないように警戒してお世話しているらしい
近くにいた厩務員が和馬の行動に注目している
和馬は馬房の入口で青鹿毛のサンダーを見て
確かにグレイが一目惚れするのも理解できた。
和馬は馬房の扉を開けると戸惑う様子もなく中へ入る
「オイ 嘘だろう 怖がらず 馬房へ入っていったぞ~」
サンダーが和馬を警戒した目で見てる
「初めまして 日本で牧場を経営している
相良和馬と言います。グレイはうちの繋養馬です」
念話が出来ることでサンダーの警戒心が少し薄れたようで
威嚇しなくなったことで一安心する和馬
「お前がグレイの馬主か?
それで俺に何の用だ?」
「はい、今回貴方を購入したので挨拶に来ました
グレイから貴方が気にいったので是非日本へ連れて帰って
くれと頼まれたのですが、貴方はグレイのことどう思いますか?」
サンダーは正直国を転々とすることに苛立ちを感じていた
日本にいってもまたどこか別のところへ連れて行かれると
考えて不安になっていたが和馬の一言で連れて行く理由がわかり
少しは安心した。
「ああ、グレイから話を聞いたがグレイが好きなのは
俺じゃなく俺のご先祖様のことだろ
なんか馬の国で世話になったと惚気られた。
今度馬の国へいったら告白するともいっていたぞ」
サンダー本人の前でグレイトサイレンスが好きだと
正直にいってしまったらしいな それは男として
傷つくかもしれない
「まあね、グレイも馬の国での記憶があるから
思い入れも強いと思うが君にもチャンスだと思う
グレイのことはどうなんだ? 嫌いか好きか?
君の返答次第で購入は白紙に戻すよ」
サンダーはグレイの容姿を思い出す。
正直ドストライクで好みの牝馬だ
俺とおんなじ毛色の爺ちゃんに惚れている牝馬か
爺ちゃんもグレイが好きで世話したのだから
好みも同じかもしれない それならここにいるより
グレイのいる日本へいったほうがいいだろう
「爺ちゃんよりも俺の方が凄いと言わせてやる」
サンダー君の本音が出ました。
「グレイのことは俺も好きだ。日本へ連れていってくれ
俺が必ずあいつを惚れさせてやる
見たこともない爺ちゃんに負けるもんか」
「その意気だよ 気にいったよサンダー
これからよろしくな」
和馬とサンダーが打ち解け和やかな雰囲気で馬房から出てくるのを
驚愕の目で厩務員が見ている
「和馬さんは、俺たち厩務員の目指す理想形かもしれない」
サンダーは少し気が強いところがあるが
熱い思いが感じられるいい牡馬じゃないか
日本の競馬界にもう一度衝撃を与えてくれ
こうして2頭は仲良く貨物機で日本へ帰ることになります。
和馬の考えとして天翔牧場でいつも一人でいる
グレイに気軽に話せる仲良しの牝馬を見つけるつもりが
旦那さんを連れて帰ることになり複雑な気分だが
これで天翔牧場の種牡馬が2頭になる
はたしてサンダーサイレンスはご先祖様を超えることが出来るのか?
グレイにも春が来ました。 これで馬房でも寂しくないですね
サンダーサイレンスの購入額がチャラになるまで何年かかるのか?




