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グレイの里帰り

カノンとドリームの2頭はトライアルレースを順調に勝利してG1へ挑んだ。


結果的に2頭とも5月まで2つのG1を勝利して2冠馬になっている


カノンはどちらかと言えば両親とも短距離とマイル向きだから


樫の木は難しいと佐々木さんと話をしていたが、スタミナが切れるそぶりも見せず


2着馬に2馬身リードして優勝した。


レース後カノンはまだまだ走れるよと俺に褒美をねだったので

飴玉を3つほど口へ入れてあげた。


ドリームは種牡馬のプライムがスピード重視の特性を持ち


母親のシルフィのスタミナとパワーが受け継がれ両方の能力を備えた


優秀馬になっているが俺の見た感じだと2400までで限界かなと感じた 

菊の花は3000メートルなので最後の1冠は運次第だろう


まあ、とにかくDRAの広報と宣伝担当の人から感謝の言葉をいただき

秋のG1も盛り上げてくださいと頼まれた。


そして季節は夏 2頭は秋競馬に向け休養中で牧場で親子仲良くくつろいでいる


ただ、放牧中はカメラを構えたファンが展望台に押しかけたため

スタッフを増員することになったそうだ。


2頭が休養中なので俺は一人渡英してトムさんの牧場へ視察に行く


ミステリーグレイと産駒は動物検疫期間があるので既に渡英済みで


俺とトムさんと2頭を引き取り牧場へ連れて行くことになっている


まあ、姉さんもトムさんといつも一緒にいるからほんと仲いいね


トムさんの牧場へ到着すると厩務員の人がミステリーグレイと産駒を


馬房へ連れて行くので俺たちも馬房へ するとグレイから


「和馬さん 日本へ行くまでこの馬房にいましたけど

やはり和馬さんの牧場が最高ですね

来年までここにいると思うと気が重いです。

それに日本ほどじゃないですけど暑いです。」


「グレイ ほんとごめんね 来年まで辛抱してね」


人間と同じで快適すぎる環境を一度体験すると馬でも

愚痴をこぼすようですね


姉さんがこちらを見て


「ねえ、和馬 グレイなんていってたの?」


和馬は苦笑いを浮かべ


「姉さん トムさんには内緒だよ

グレイはこの馬房は暑いと愚痴をいっているのさ

天翔牧場が快適すぎるとね」


姉さんもため息つくが


「天翔牧場の厩舎を一度体験すると馬も贅沢になるわよ

あの環境が普通だと思われるとほとんどの牧場から

文句を言われるわ あの施設にいくらかかるんだってね」


「まあ、もともと 高齢の引退馬を繋養する厩舎だからね

快適じゃないと長生きできないしね」


「それよりも姉さん グレイに種付けする種牡馬なんだけど

どんな馬なの?」


「アメリカ生まれでアメリカのG1と凱旋門賞の優勝馬だけど

どんな種牡馬を種付けしても天翔牧場で馴致しないと

世界で通用する馬にはならないわね

問題は種牡馬じゃないのよ トムには言えないけどね」


流石天翔の血を引く姉さん よくわかっているな


「今回も私はそれなら種牡馬を日本へ連れて行けばと

トムにいったんだけどね 種牡馬を繋養してる牧場が

反対したのよ 日本へ行くと怪我とかのリスクが高くなる

高額な種牡馬を死なすわけにはいかないとね」


和馬はその話を否定することは出来ない

馬は神経質で長く飛行機に揺られるだけで

最悪死ぬ馬もいる まあ保険に入っているけど

リスクは高いからな


まだEU圏内なら馬バスで輸送できるからリスクの軽減に

なるのだろう


和馬はトムの牧場の馬房をくまなく周り情報収集

否 馬たちの健康状態をチェックしている


残念ながらこの牧場には馬の国の記憶がある馬はもういないようだ


姉さんが


「ねえ和馬、お眼鏡にかなう牝馬はいた?」


和馬は姉さんが何をいっているか悟り


「残念だけどいなかったよ」


和馬は健康状態のリストを姉さんに渡すと二人で

事務室へ戻ってきた。


椅子に座りお茶を飲む まあここはイギリスなので紅茶が定番


「それにしても あのプライムの産駒が日本のG1を勝つなんてね

トム その話聞いて落ち込んでいたわよ」


「姉さん それって 俺にタダ同然で譲ったからかな?」


プライムとミステリーグレイ2頭での購入だが

プライムの価格は明記されていなかった。

いわばオマケである


「いいえ、違うわ プライムの能力を見間違えたことへの自己嫌悪

とプライムの本質を見抜いて購入した和馬の目利きの良さにね」


「姉さん 言い過ぎだよ 俺にはあの能力があるし

それとプライムの能力の高さを教えてくれたの

シルフィだから 彼女に感謝しないとね」


青葉は紅茶を一口飲むとカップとソーサーをテーブルへ置く


「和馬 うちの養子にならない?」


「姉さん いきなりなんだよ」


「ごめんね 嘘よ冗談だから まあこの牧場へ和馬が来てくれると

助かるのはほんとだけどね 一番の理由は馬たちが喜ぶからかな」


青葉は和馬から手渡されたリストを見る

事細かく馬の健康状態が明記されている

この情報を獣医が取得するのは到底不可能


「和馬の結婚式の時 私たち牧場で宿泊したでしょ

その時にねトムと馬房を見て回ったの

トムも驚いていたわ 皆元気で健康そうだし

快適な厩舎でのんびり暮らせる理想的な馬房だとね」


「馬と会話できる和馬がここへきてくれたら

冗談抜きで繋養馬が喜ぶわね

自分たちの意見を聞いてくれる人間がすぐそばにいるから」


和馬は


「姉さん ごめんね 養子になれないけど

年に数回はここへ来れるようにするから

俺はトムさんのこと家族だと思っているから

何かあったらすぐ駆けつけるよ」


「和馬 ありがとう トムも喜ぶわ

それとね 今回 ミステリーグレイに種付けするけど

今回限りだと思うわ 今回のはトム自身の確認のためだから

トムも気が付いているのよ 馬の能力は種牡馬の成績より

育成牧場の馴致のやりかたが重要だとね」


「でも、それわ」


青葉は和馬へわかっていると頷く


「本人が納得すればいいのよ

今後は和馬が馴致した馬がこの牧場へ来るから

トムもね和馬が馴致した馬を見て感じたのよ

今までの馬とまるで違うと一番大切なことは人間に従順なこと

厩務員の言うことを素直に聞くから可愛くてね

みんなで可愛がるのよ レースでもいい成績残したから尚更ね」


この馬はイギリスでのG1勝利しているとのことプライムよかったな


それから俺はのんびりと牧場で過ごしながら牧場の仕事もお手伝いした。

そしていよいよ帰国する前日、恒例となった競馬場へ一人でいった。


姉さんにはお留守番してもらいレンタカーで競馬場へ行くと

俺はパドックへ陣取り 情報を探り お目当てのレースの馬券を購入


高額な払戻しを現金で受け取り 帰り道でトムさんには日本産のウイスキー

姉さんには高くてあまり飲めないといっていた有名な紅茶の茶葉を購入

牧場へ戻り土産を手渡し 二人に感謝され最後の晩餐をいただく


俺は厩舎へ行くとミステリーグレイの馬房へお邪魔して

今夜はここで寝ることにした。


「和馬さんが私の馬房で寝るの初めてですね

いつも隣のシオンの馬房でしたから

羨ましかったです。」


「それはごめん今後はみんなの馬房で順番に寝るからね」


「はい、お願いしますね 」


俺はグレイとお話を始めたが近くの馬房の馬からも会話に参加させろと

言われ厩舎内は静かだが念話での会話で盛り上がる


翌日の朝 姉さんに起こされ目が覚める


和馬の横には少し不機嫌のグレイが横になっている

和馬が抱き着いていたので起きることが出来ないようだ

ただ不機嫌なのは和馬のせいではない


「和馬は今でも牧場で馬たちと寝てるの?」


「そうだね、シオンとカノンと寝るのが多いかな

シルフィは隣の馬房にプライムがいるしね

だからグレイと寝るの初めてだね

それがどうしたの」


「和馬の部屋にいったら もぬけの殻だったから

多分グレイのところかなと馬房へ来たらね

2人揃ってよく寝ているから驚いたのよ」


「知っていると思うけど 野生の馬も警戒のため 寝る時も横にならず

立って寝るのが普通なのよ 横になって寝れるのは

よっぽど安心できて信頼できる仲間がいる時だけなの

それでね和馬を起こそうとしたらね

グレイに威嚇されたのよ まるで大切な人に触るなと言われた感じがしたわ」


和馬がグレイを見ると不機嫌そうな顔してるので

頭を優しく撫でると機嫌がよくなった。


グレイも和馬と暫く会えないと理解してるので寂しいのだろう


朝食の席で トムさんから朗報が


「和馬君 グレイのことなんだけど グレイの受胎が確認できたら

日本へ戻すから 和馬君に産駒の馴致もお任せするよ

産駒のことを考えるとそれがいいと妻にも言われてね

よろしく頼むね」


「はい、馴致はお任せください りっぱな競走馬に調教しますよ」


こうしてグレイも年末には日本へ戻ることになった。


このことをグレイに話すと凄く喜んでいたが

周りの馬からは、グレイはずるいと言われていた。

皆さんも俺が日本へ連れて帰りたくなる馬になってください


空港の免税店で俺はメモを片手に右往左往しながら

妻たちの買い物をする 勿論紫苑のご両親のぶんもだ


日本へ帰ると直ぐに秋競馬が始まる






日本産のウイスキーは海外でも評価が高いです。

紅茶の茶葉はやはりイギリスのが有名です。

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