幕間(まくあい)優駿と皐月の再会ばなし
優駿が亡くなると馬の神様が現れ2つの選択肢がありますと
問いかけられた優駿だったが迷うことなく即答した。
「皐月が存在する世界にしか興味ありません」
簡潔に答え馬の国へ早く連れて行けと催促するようなまなざしで
馬の神様を見た。
「は、はい、それでは目をつぶってください」
優駿は言われたとおり目をつぶり数秒後眩しさを
感じたので目を開けると一面放牧地が広がっていた。
優駿は自分の体を手で触りながら確認していく
ほんとに若返るんだな
余裕が出た優駿の視界にはのどかな牧草地が広がり
何頭かの馬が草を食んでいた。
見た感じ普通の放牧地なのだが違和感を探すとすれば柵がないことか
それと馬たちがこちらを見て何かいっている
「なあ、あの人間は天馬さんの知り合いかな?」
「そうだろ それ以外の人間は馬の国へは来れないと思うぞ」
念話が僕にも聞こえる そうかこの世界だと誰でも馬の言葉が聞けるんだ
優駿は近くにいた馬に話かけた
「すいませんが、天馬さんが何処にいるかわかりますか?」
2頭いるうちの青鹿毛の馬が親切に教えてくれた
「ほらみろ やっぱり天馬さんの知り合いだったろ
天馬さんなら調教が終わると噴水広場へ帰ってくるから
そちらへいったら会えると思いますよ」
優秀は馬に教わった道をたどり噴水広場へ到着すると
人だかりが見えた。
「あ、天馬さんと美鈴さんがいる 皐月は何処かな?」
「あ、見つけた 男性二人と会話をしているようだが
見覚えがある楯さんと横長さんのようだ。」
優駿は馬の間をかき分けて皐月の目の前へ到着
皐月の服装は高校の時のジャージの上下でいかにも運動してました
と感じる服装で容姿は10代の頃へと若返っている
美少女の皐月を見て優駿は涙を浮かべた
「皐月 会いたかった」
優駿は人前なのも気にしないで皐月の胸へ飛び込む
皐月は優駿と直ぐにわかったが人前で抱き着かれ
恥ずかしいので優駿を咎める
「こら、優駿 離しなさい 恥ずかしいでしょ」
優駿は抱き着く腕の力を更に強くする
「嫌だ、もう離さない」
「優駿 私もあなたと会えて嬉しいけど人前だし
それに私、運動後で汗もかいているから
離れてくれるかな」
優駿は思いっきり 息を吸い込む
クンクン
「皐月 いい匂いがする 臭くないよ」
「優駿 こら嗅ぐな 」
皐月は優駿を突き飛ばす
優駿は5メートルほど飛ばされたが
この世界なので怪我もなく汚れを払い普通に立ち上がる
「皐月酷いよ 突き飛ばすなんて」
いまだに 怒りが収まらない 皐月は
「貴方が デリカシーがないからでしょ
信じられない 女性の匂いを…嗅ぐなんて
幻滅したわ」
幻滅と言われ 我に返った優駿は土下座で謝る
その後天馬と美鈴が仲裁に乗り出しこの場をおさめる
「それで優駿 私が死んだあと 何かあったの?」
まだご機嫌斜めの皐月は冷たい眼差しで優駿を睨む
「和馬君が2人の女性と結婚したよ」
「え、いつの間に日本は重婚が認められるようになったのかしら」
優駿は和馬と紫苑が最初に結婚してつい最近騎手の麗華と婚約して
籍を入れたと説明する
「え、その麗華という子が日本の法律を変えさせて
重婚を認めさせたの?」
続いて優駿は麗華の家が山崎重工だと説明して総理とも仲がいいと
伝えた。
「和馬もそれだけ惚れてもらえれば男冥利に尽きるわね」
「それでね和馬君から聞いた話だと彼女たちにも念話が使えると
説明するらしいから今度は騎手が3名は増えるよ」
「なるほどね これで7頭立てのレースが出来るわね」
そしてやっと落ち着きを取り戻した優駿は周りを見ると
天馬の近くには見慣れた光景があり
牝馬が仲良く4頭ほど天馬に甘えているが
その中にチャコがいるのが見えた。
「ねえ、皐月 チャコはチャコチャンになったんだよね」
「そうだけど 何で 貴方がそれを知ってるのよ」
天馬たちも不思議そうな顔をしてる
そこで優駿は、和馬が天翔牧場で生産牧場を再開したことを説明
イギリスから繁殖牝馬を2頭輸入したがそのうちの1頭が
天馬たちのことを覚えていたと伝えた。
「そう理解できたわ チャコといっしょに転生した馬の中に
そのミステリーグレイという牝馬がいたのね
それでその馬も記憶を消されずに転生したと」
優駿はグレイがイギリスで生まれイギリス、フランスの競馬場で
レースをしたため日本の競馬場のデータが役に立たなかったと
愚痴をこぼされ改善提案をされたと伝える
「そこで僕は世界中の競馬場のデータを記憶したんだよ
皐月褒めてくれるかな」
その話は天馬にとっても盲点だった。
救いは世界の有名な競馬場をレースで出向いた
盾騎手と横長騎手のおかげで競馬場もバラエティーに富むようになっている
当然重馬場の芝も再現されている
「そうね、私は何もできなかったけど 優駿は偉いわね
褒めてあげるわ」
褒めてもらい 喜ぶ単純な優駿だったが
もう一つ気になることがあった。
横長さんの横にグレーのプラチナがいるのは現役時代主戦騎手と
教えてもらっているからまだいいが
楯さんに寄り添う牝馬は誰だろうと疑問に感じ
優駿は尋ねた
「ねえ、楯さん 隣で懐いている牝馬とわこの世界で
お知り合いになったのですか?」
話題に上がった 楯さんは牝馬の頭を優しく撫でながら
「この馬の名前はサイレントシズカと言います。」
競馬に詳しい優駿はレース中の怪我で予後不良と診断され安楽死処分
された有名な馬を思い出した。
「あの逃げ馬で有名な優秀な牝馬ですよね
僕も覚えています。」
「そういえば 盾さんとコンビを組むようになってG1を勝利したんですよね」
「天馬さんに馬の国の話を聞いたときに
馬の国ならシズカともう一度会えると思ったので
馬の神様に連れていって下さいとお願いしました。」
「シズカは僕が騎乗した一番好きな競走馬なんです。
どうしても直接会って謝りたかった
レース前に異変に気が付かなくてごめんねと」
横にいるシズカは気にしないでいいと寄り添いながら
「貴方は悪くないわ もう気にしないでいいのよ
私はあなたとレースに出ることで救われたのだから
貴方がいなかったら私はもっと前に処分されていたし
それに貴方は私に逃げて走る楽しさを教えてくれた
感謝するのは私の方よ」
シズカが念話で伝えてくれた思いが皆に伝わる
しんみりとした雰囲気を変えるため明るい話題を提供するため
皐月は優駿へ問いかける
「ねえ、優駿 生産牧場の馬たちはどうなの
産駒は重賞勝てたの?」
「僕が知っているのは2歳の年末までだけど
2頭とも最優秀2歳牝馬と牡馬に選出されたよ
麗華さんの見た感じだと牝馬3冠とクラシック3冠
も夢じゃないといっていたよ」
天馬が久しぶりにしゃべるよ
「それは頼もしいな ここへ和馬が来たら褒めてやるとするか」
美鈴がしゃべるよ
「でも 和馬も天馬に似て尾花栗毛の馬が好きとわね
隔世遺伝で間違いないわ 」
天馬は断言する
「尾花栗毛の馬が一番なんだよ なあメリー」
メリーに甘える 天馬を見て美鈴は笑顔になる
「和馬がここへ来るまでは騎手は4人しかいないのよ
それまで皆で頑張りましょう」
ローズたちは出番がなかった。
天馬編でのメンバーが久しぶりに登場しましたが
馬たちのセリフはありませんでした。




