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繁殖牝馬たちの戦いが始まる

謹賀新年 明けましておめでとうございます。


元日の早朝 シオンと散歩がてら初日の出を見物していた

ここへ来る前には馬頭観音様のところへ初詣でにもいったし

今年は何だかいいことがありそうな予感がする


「和馬 初日の出綺麗だね 」


「いや、君の方が朝日よりも綺麗だよ」


「ありがと 和馬嬉しいわ」


正直な感想 キラキラと光り輝くタテガミとシッポに敵う

朝日はこの世にはありません


「それじゃあ 初日の出も見たしそろそろ帰ろうか」


「そうね、もう少しいっしょにいたいから

遠まわりして帰りましょう」


まあ、こんな感じで年が明けましたが

今年は繁殖牝馬の種付けもあり忙しい年になるはずです


1月中旬 紫苑の両親、光秀と琴音は有給休暇消化で

沖縄へ旅立った。

この夫婦まだ30代なんですよ


琴音さんが紫苑を生んだのが18歳なんですね


紫苑がしみじみと


「牧場が忙しくて遊びになんて行けなかったからいい骨休めね」


俺と紫苑は二人がいない間はパークからの応援者と馬たちの世話をすることになる


数日後 日焼けした 仲良し夫婦が帰還した。


2月に入り いつもの年より雪解けが早いのか放牧地も地面から新芽が出て

芽吹き始める 繋養馬たちも皆放牧地へ行きたがる


「それじゃあ 行くか?」


今日は東京からお客さんが来る予定で DRAの職員とカメラマンが牧場へ来るが

目的はうちの繁殖牝馬の登録用の画像を撮影したいとのこと

横向きの全身が映っている写真のことだろうか


それで俺はそのカメラマンに別の仕事も依頼することにした。


ホースパークのホームページに掲載する

新しい施設と放牧地に放されている繋養馬の写真を

撮影してもらうためで俺はこんな感じでと参考になる絵コンテまで

作成した。


時刻は早朝朝日が昇り始める少し前なんだけど俺たち厩務員は午前4時には

起床して作業をしている


俺はシオンとグレイとシルフィの3頭を連れて放牧地へ向かうことにした。


馬房を出て厩舎内の廊下はあまり広くないので

縦一列で並び歩き厩舎外へ出ると俺の後ろを

3頭横並びでのんびりついてくる


その姿を見た紫苑とその両親は驚く


「和馬さん 引き綱 持ってないわよね」


「それよりも 何で馬が素直についていくのよ」


「まあ、和馬さんだからかな 俺たちじゃ無理だわ」


3頭を見送る厩務員3名と種牡馬が1頭


プライム君はお留守番です。

繁殖牝馬でないので写真を取ることもないそうです。


頑張れ プライム 産駒が活躍すれば

依頼は必ず来るから!!


天翔ホースパークの新施設の展望台名称は「夢見る丘」


放牧地が見やすいように盛り土した場所に屋根付きの展望施設が

建設された。座席は有料の指定席と無料の自由席がある

前の列が指定席で後方が自由席になる

施設の両側には有料の望遠鏡が据え付けられている


今回カメラマンに撮影してもらうのはここから見える

放牧地とシオン達繋養馬の雄姿の撮影


ただし 今のところ繋養馬の安全確保のため

パークの開園前しかすぐそばの放牧地は使用しません


和馬たちが到着する前にはお客さんは既に到着されていました。


「すいませんお待たせいたしました。」


DRAの職員2名とカメラマンはその光景を見て唖然とした


朝日に照らされた放牧地を和馬を先頭に後ろを大人しく

ついていく牝馬が3頭


カメラマンの関口は、素早くカメラを構え被写体を連写


最初はクライアント様である DRAの撮影から開始


真横からの撮影だが牝馬たちは、和馬が指示したその場から微動だにしない

おかげで撮影は僅か数分で終了。


DRA職員は和馬にお礼を言うとタクシーに乗り込みその場を後にした。


「それじゃあ 関口さん よろしくお願いします」


「相良さん 撮影は渡された絵コンテの順序でいいですか?」


「はい、それで構いません まずはシオンからお願いします」


シオンは和馬から少し離れた位置から走り出す。


朝日を浴びてタテガミとシッポが輝く光景を見て

関口はたまらず連射で撮影する


次のポーズは停止している状態で草を食む仕草、


その次は頭を上げてカメラ目線のポーズで微笑む仕草


関口は人間のプロのモデルを相手にしてるような

不思議な感じがした


なんで、ここまでカメラマンの撮りたいポーズが

誰に言われもしないのに出来るんだよ


カメラマンからOKが出て次の牝馬にバトンタッチ

こんな感じで3頭とも無事に撮影を終了した。


和馬がシオン達に念話で指示してるので

コンテどうりの撮影がスムーズに行える

こんなことは通常ではありえないだろう


「相良さん 今日は不思議な体験をしましたよ

普通だと動物相手の撮影は、気長にやるもので

1日で終わる撮影なんてありませんよ

対象の動物が目の前にいたとしてもこちらの意図する

ポーズなんて偶然じゃないと撮影できませんからね」


「普段の撮影だと長い時間かけて撮り続けた映像をコマ送りで見て

なんとか気に入る映像が数コマ見つかる程度なんですよ」


「今回は私も時間がないので諦めますが、次の機会があれば

 今度は牧場で自然の姿を撮りたいですね」


「はい、いつでもいいので 是非いらしてください」


今回の撮影時の画像データを別のメモリカードへコピー

してもらえたので牧場へ帰ったらみんなで鑑賞会だな


3月 少しずつ春めいてきたころ種付けが行われる


天翔牧場ではグレイとクイーンの種付けをプライムが

シオンの種付けは伊藤牧場で行う


クイーンはお姉さんらしく初めてのプライムが

緊張しないように種付けを最初に行う


「プライム よく聞きなさい 貴方は今後たくさんの繁殖牝馬を

相手にすることになるでしょう いやきっとなるでしょう

ただ、初心は忘れてはダメです お相手するときは

いつも優しく丁寧にをもっとうにしなさい」


「これは私も聞いた話なんですが、嫌いな種牡馬が種付けすると

なぜか受胎率が低下して2回行っても受胎しないこともあります

相手の牝馬も種付けが初めての場合もありますから

怪我をさせないように優しく労りながら種付けしなさい

そうすれば牝馬の好感度も上がりますから

受胎率も向上するでしょう」


「シルフィ姉さん 助言ありがとうございます。」


シルフィの助言が効いたのかグレイからの評価も上々のようだ。


グレイの最初の産駒はトム叔父さんに引き渡し

欧州で競走馬としての真価を試されることになる

これで成功しないと次回からは別の種牡馬で種付けしないと

いけなくなるからな プライム頑張れよ


天翔牧場の繁殖牝馬の頭数は3頭なのでセレクトセールにも

上場することができるが当面は馬主を俺が務めることになる

3頭とも産駒が評価されればその時上場しようと思っている


さてシオンの種付けだが是が非でも産駒には活躍してほしい

種付けするマスタングブラックの実力は評価してるが

俺の愛馬に種付けする権利を易々認めるつもりはない

奴にはガツンといっておかないとな


種付け当日 伊藤牧場の駐車場へ1台の馬バスが到着

馬バスの後部ゲートが開き中から綺麗な尾花栗毛の牝馬が降ろされる


和馬はシオンの準備を紫苑に任せて叔父さんに挨拶に行く


和馬の父親の悟は現伊藤牧場経営者の弟だが

和馬の母親と結婚するとき喜んで相良性を名乗ることに同意している


和馬は伯父さんと仲がいい


「やあ、和馬君いよいよだね 私も楽しみにしてるよ

なにせ 過去天翔牧場の産駒でG1勝てなかった馬はいないんだよ

来年以降で生まれた産駒を是非譲ってもらいたいものだね」


「ありがとうございます。 少しプレッシャーでもありますが

先の先駆者のように産駒を輩出したいものです。」


「こちらとしても協力は惜しまないよ

マスタングブラックの種付け料は無料でいいから

是非とも来年以降も種付けをよろしくね」


「私も父から当時の天翔牧場の産駒の活躍は聞かされていたからね

産駒が活躍したら種付け馬の評価も自然に上がるからね

期待してるよ和馬君」


和馬は伯父さんとの挨拶を終えてシオンのところへ向かった。


今頃は種付け準備が終わってるころだろう

因みに天翔牧場の繫殖牝馬は昔から当て馬は使用しません


シオンは和馬を見ると興奮する様子もなく微笑んでいる

今年が初めての種付けなんだけど落ち着いているようだ。


逆に種付けするマスタングブラックは異常な興奮状態だ。

あれは良くないな


伊藤牧場の厩務員が抑えようとしてるが

興奮してるブラックは指示を聞かない


それりゃあ自分の好きな牝馬に種付けするチャンスが

きたんだから興奮するのはわかるがあれでは

牝馬が最悪怪我をする


厩務員の制止を振り切り


和馬はブラックに語り掛ける


「ブラック。シオンに怪我させたらタダじゃすまさんからな

興奮するのはわかるがもう少し平静を保てよ

そんなんじゃ 種付けをお前に任すことは出来んぞ

それでもいいのかお前わ 」


興奮しながらも和馬の言葉を聞き

少しは落ち着いたのか


「それは嫌だ 現役で活躍して種牡馬としてシオンに種付けするのが

俺の目標だからな 他の牝馬には興味はない」


その様子を見て和馬も厩務員も安堵したが

厩務員はなぜブラックが大人しくなったのか理解できていない


「お前はシオンが好きなんだろ 好きな女の前で

みっともない醜態をさらすなよ 堂々と構えろよ

紳士的に振る舞え そうすれば女はお前に惚れるぞ」


「それわ本当か? シオンも俺に惚れるのか?」


「いや、今は無理だろ あんな醜態見せた後だからな」


うなだれるブラックを和馬は励ます


「でもな 今回の種付けでお前が紳士的な態度で

挑めれば いずれお前に惚れるかもな」


「ほんとだな 」


「俺も牧場任されている経営者だ

お前の産駒の活躍次第で来年以降の種付けも

お前に任せる 」


「だから今回の種付けで根性みせろ

この1回に全てを賭けろよ

1回で受胎しなければ2度目はないぞ」


2度目はないと言われて首をかしげるブラック


「なんだ普通1回目で受胎しないと2回目があると

聞いたことがあるがな お前のハッタリだな」


「あ~そうか お前は同族から聞いていなんだな

天翔牧場で繋養してるイギリスから来た

牝馬に聞いたんだがどうも1回目で受胎できないと

馬の神様が受胎しないようにするらしい」


不思議そうな顔のブラックは


「何故だ?」


「そんなの簡単だろ 牝馬が牡馬が嫌いで拒むからだ

馬の神様は両親から愛されない仔馬を産ませたくないんだよ」


厩務員の話では2回目はあると聞かされたが

同族の牝馬と厩舎も同じでないため

話を聞いていないらしい


チャンスは1度と言われブラックは悩むが

好きな牝馬がシオンだけなのは変わらない


それならその一度のチャンスにかけることに

気持ちを入れ替えることにした。


「ほお~ いい顔になったな」


シオンのもとへ向かうブラックに和馬は


「ブラック、女性を扱う時は優しく丁寧にだ

これはうちの牧場の牝馬からのありがたい助言だ

頑張れよ!」


ブラックはその助言を聞き振り返り


和馬に頭を下げた


種付けは無事に終わり帰りの馬バスの中で


「シオン どうだった?」


何を聞かれたのか瞬時に理解したシオン


「本当わね 和馬にしてほしかった

でもね 彼もね 私に優しくしてくれたから

及第点かな 到底和馬には敵わないわ」


「それわ当然だな 俺が一番シオンのこと愛してるからな」


シオンは言葉にしないで和馬へそっと寄り添り

甘々な雰囲気が漂う


「父さん 後ろから甘いにおいがする」


「紫苑もシオンを見習うようにな 頑張れ」














ブラックのシオンへの想いわ伝わるのか?

このまま片思いで終わるのか まだ決めてません

天馬編なら種牡馬として受け入れた前例もありますが

今回はどうしましょうか試行錯誤です

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