大晦日 天翔牧場の忘年会
ミステリーグレイとプライムレコードの2頭が動物検疫期間を終えて
本日天翔牧場へ到着することになった。
俺たち厩務員他2名と馬房ではシオンとシルフィが到着を待っている
父さんと母さんもミステリーグレイのことが気になるので
ホースパークの業務を他の人に任せてここにいる
すると天翔牧場の馬バスが静かに牧場内の駐車場へ姿を現す
今回新たに購入した新型の馬バスで運転手は紫苑のお父さんが
担当しているがバスの名前はラグーナシオン号だ。
後部のゲートが降ろされ中から1頭ずつ降ろされる
最初は牝馬のミステリーグレイで次にプライムレコードが降りてくる
俺たちは手分けして馬房へ連れて行く
「和馬 見事な馬だな」
父さんは葦毛の牝馬ミステリーグレイを観察している
「ねえ、和馬 この馬がお爺ちゃんに調教された馬なのよね」
「そうだよ、まあ 長旅で疲れているから
話は後日詳しく聞いてみるよ」
「グレイ 長旅お疲れ様 まずは馬房で休んでくれ」
グレイは厩舎と馬房を興味深げに見ながら
「この牧場が天馬さんと美鈴さんが作られた牧場なんですね
なんか落ち着きます」
グレイの手綱を引き馬房へ行くと馬房の扉から2頭が顔を出す
「グレイさんお久しぶりですね まさかここで再会できるとわ
思いませんでしたわ」
「シルフィさんもお元気そうで何よりです」
シルフィが次に気になる馬は
「プライム 元気だった 」
プライムはシルフィと再会できて嬉しそうだ
「シルフィ姉さんのおかげで和馬さんに助けていただきました
あそこにいたら恐らく僕は今頃馬の国にいるでしょうね」
シルフィはほんとにそうよとあきれ顔
「プライムも和馬に恩を返すために種付けもしっかりね」
そこで蚊帳の外の扱いのシオンが
「あの 私 ラグーナシオンを言います。
これから仲間としてよろしくお願いします。」
「あ、ご丁寧にありがとうございます。
ミステリーグレイと言います。」
「僕はプライムレコードです。」
ミナサン 馬同士で 馬が合うようです。
言葉の壁がないのがいいですね
天翔牧場の繋養馬は繁殖牝馬3頭と種牡馬1頭になりました。
年末を迎え天翔ホースパークは臨時休業となり
春までパーク内で工事が行われます。
天翔牧場でも忘年会が紫苑の自宅にて開催されますが、
爺ちゃんは夕方には寝てしまうため参加しません
「それでは皆さん グラスをお持ちください」
「お勤めお疲れさまでした。 明日も仕事ですが
来年は今年以上に忙しくなりますので
健康管理に気を付けよろしくお願いします。」
「それでは乾杯!!」
紫苑の両親はビールを飲んでますが和馬と紫苑は当然ジュースです。
和馬は紫苑とその家族へ賞与と書かれた封筒を手渡す。
「額は少ないですが私からの気持ちですのでお納めください」
「和馬さんよろしいのですか」
「はい、パークの厩務員と額は同じですので
気になさらず受け取ってください」
「お気持ちありがたく頂戴します」
「さあ、この料理はパークの食堂の残りですが味は保証しますので
どんどん食べてください」
そして4人での宴会が始まるが
「それとですね、年明けしてからの話ですが、
浅井さん有給休暇を消化してください」
「でも馬の世話もありますが」
「その心配はありません 休暇中はホースパークの厩務員が
交代で研修に来ますから なにぶんパークも休業するので
余剰人員がいますので気にせずお休みしてください」
「そうですか、わかりました 久しぶりに夫婦水入らずで
旅行にでも行こうかな なあ」
「貴方と2人で旅行なんてほんと久しぶりですね」
「え、私はついていっちゃダメなの?」
紫苑の母さんは紫苑を隣の部屋に連れて行く
「あんたバカなの こんな機会ないのよ
和馬さんと親睦を深めなさい」
「傍からみたら和馬さんの奥さんは馬のシオンだと
思うわよ あのイチャラブ見せられたらね
あんたもシオンに負けないように誘惑しなさい」
「紫苑聞きなさい 母さん過ぎたことをとやかく言わないけど
正直貴方の最初のアプローチは間違いだったと思うわ
まだあんたが自分の体を使い誘惑して婚約したのなら
まだ許せるけど あんたは和馬さんがシオンを好きなのを利用したでしょ」
「和馬さんいい人過ぎるからあんたと結婚してくれるけど
あんた達まだキスもしてないでしょ」
「母さんどうして知ってるの?」
「そんなの見ればわかるわよ。
見た感じ友達以上恋人未満ね」
「和馬さんは短期間でシオンとの固い絆を結んでいるけど
貴方とは仲のいい友達関係のままなのよ
母さんの勘だけど和馬さんあんたに隠し事してるわよ
その点シオンとわ隠し事がない長年連れ添った夫婦なのよ」
「え、でも私たち6月には結婚するのよ
どうすればいいかな」
紫苑母さんは微笑み頭を撫でる
「まだ若いでしょ これから絆を築けばいいのよ
恋愛結婚ではなくお見合い結婚だと思いなさい
相手のことは後から知ればいいのよ
そしてほんとに相手のことを好きになれば恋愛と同じよ」
紫苑と紫苑ママは居間へ戻った。
「そういえば和馬さん 和馬さんのご両親は」
「ご心配なく 二人ともパークの方で忘年会してます」
「そうそう 言い忘れましたけど パークの工事ですが
その内容はこの天翔牧場に関係ありまして
今はパークと牧場の境は柵で仕切られているだけですが
今回そこを小高い丘にして屋根付きの展望室を作ります
椅子も並べて有料の望遠鏡を据え付けます」
「来年にはこの牧場の繁殖牝馬の情報が広まるでしょうから
今のうちに対策と来園者を増やすのが目的です。
ただし、パークの営業時間中はパーク側の
放牧地は安全上の理由から使用しません」
「大声で繁殖牝馬とその仔馬が驚きますからね」
食事も終わり時刻も数分で新年を迎える
紫苑が和馬がいないことに気が付く
「あれ 和馬はどこ?」
「少し前にね 行くところがあるから
お先に失礼しますと帰られたわよ」
「こんな時間に?」
「こんな時間だから大切な愛馬のところへいったのよ」
「シオンああ見えて臆病で寂しがりやだからね
ほんとここで繋養されて幸せだと思うわよ」
紫苑母さんの勘は鋭い和馬はシオンの馬房にいた。
「こんばんわ シオン寂しかったかい」
「少しね でも今は和馬がいてくれるから 」
少し前までシオンの馬房にはミステリーグレイと
シルフィクイーンがいたらしい
「シオンも来年にはお母さんになるんだよ
俺は凄く楽しみなんだ。生まれた仔馬が
シオンのような綺麗な尾花栗毛の女の子だったら
最高だね」
「でも私心配なの 和馬が仔馬に夢中になる予感がするのよ」
「大丈夫だよ シオンもシオンの仔馬も俺が面倒見るから
安心して可愛いい仔馬を生んでね」
「約束だよ和馬 それといっしょに寝よ」
和馬とシオンは仲良く添い寝をする
その念話を横の馬房で聞かされた牝馬たち
「いいな シオン こんなに愛されて」
「そうですわね 普通人間と馬の間で恋愛感情は生まれないと
思いますが、この二人を見てるとあり得ると思いますね
それにたとえこの世で死に別れてもいずれ馬の国で再会できますからね
和馬さん馬の神様の使徒だそうですよ」
「私にもこんないい人がいればいいのにでも
シルフィさんにはプライム君がいましたね」
「私は別にプライムは弟なんですよ
心配なだけです 恋愛感情なんてないと思います
今はまだ…」
そんな感じで 新しい年を迎えました。
次回は種付けのお話ですね




