イギリスからの来客は綺麗な栗毛の牝馬です。
ラグーナシオンの種付け相手が決まったが天翔牧場の繋養馬は今のところ
ラグーナシオンしかいないため俺たち厩務員は意外と暇だった。
父さんからはホースパークの仕事を免除されているので
天翔牧場のことに専念できる
数日後の夜、俺は紫苑にせがまれアルバムを見せることになった。
俺の両親の写真と家族4人で撮影している写真を見て紫苑が変なことを言う
「ねえ、和馬お姉さん以外に妹もいるの?」
「年の離れた嫁いだ姉がいるけど妹はいないよ
どうしてそんなことを言うのかな」
「え、この七五三の写真だけど女性が3人映っているよね
まさかこの中に和馬がいるの?」
写真には父さん以外に知らない人が見れば3人の女の子が映っているように見える
やばこの写真処分したはずの俺の5歳の時の写真じゃないか
でも見られたら誤魔化すのも変だしまあいいか
「この真ん中のピンクの着物が俺で右側が母さん
そして左にいるのが姉さんだよ」
「え、うそ 美少女3姉妹じゃなく 右側がお母様なの
凄く若く見えるけど」
「うちの家の家系はどうも小柄らしくてな母さん身長147センチだし
昔から若く見られて喜んでいたよ」
「でもいいな~ 綺麗な黒髪よね」
でお姉さん何処へ嫁いだの?」
「3年前にイギリスの牧場主のところへ嫁いだよ」
「え、お相手外国の人なの」
「イギリスからこの牧場へ視察に来た人でね
息子さんが付き添いで来たんだけど
その際に通訳していた姉さんに一目ぼれして
視察が終わっても日本に残り求婚していたんだよ
その根気強さに負けて姉さん嫁ぐことにしたんだ。」
和馬の姉の青葉は大学卒業後牧場秘書として外国からお客さんがきたときには
通訳としても牧場に貢献した人材でした。
「へえ~ イギリスの牧場主か広い土地もってそうね」
「トムさんのお父さんはイングランド貴族の爵位持ちだよ
中世ヨーロッパのご領主様だね 」
※1エーカーが日本の1224坪になるそうです。
「イギリスのトーマス牧場だけど凱旋門賞の優勝馬も産駒にいるよ」
「すごい すごいね この牧場も目指せ凱旋門賞優勝ね」
和馬ため息
「紫苑興奮しているとこ悪いけど牧場のメモリアルホールに行くと
凱旋門賞の優勝トロフィー見学できるからね」
紫苑はブリリアンスターのことを思い出す。
「言われて見れば この天翔牧場って日本でも凄い記録持っていたわね」
「まあね、俺はその記録を破るためにもう一度生産牧場をはじめたいと
思ったんだ」
ブルブル スマホのメール着信が入る
「紫苑ごめん メール来たから ちょっとまってて」
無言でうなずく紫苑
メールを読み
「姉さんからのメールだけど… まさか… そんな」
「紫苑ごめん 父さんに確認することがあるから
ホースパークへいってくる」
それから1時間後 和馬は帰宅した
「紫苑 ただいま」
「お帰りなさい 貴方」
和馬はあえて反応しないで
「和馬 でどうだったの? 悪いお話」
「姉さんの牧場から牝馬が日本へ送られてくるそうだよ
いや、もう検疫終われば直ぐにここへ来るかな」
「へえ、外国産馬か EUでも活躍した馬なの?」
「一昨年の凱旋門賞で優勝した牝馬だよ
名前はシルフィクイーン」
「何でそんな凄い馬がここへ来るのよ」
「トムさんと姉さんからの婚約祝いらしい」
「なんか色々で疲れたわよ
大手牧場の人の金銭感覚についていけないわ
婚約祝いで種付け料タダにする人がいるかと思えば
今度は凱旋門賞の勝ち馬をプレゼントでくれるお姉さんとか
意味不明ね こんなことで私ここでやっていけるのかしら」
数日後馬バスに載せられてシルフィクイーンが到着した。
馬バスの後部ゲートが開き馬バスの乗員がシルフィの手綱を引きバスから降ろした
馬バスの乗務員は俺に挨拶をするとバスに乗り込み駐車場から走り出した。
長旅で疲れた顔してるシルフィクイーン
俺は外国産の馬とも念話できるか不安いになりコミュニケーションを取ることにした。
「シルフィ長旅お疲れ様、どう日本はいいところでしょ」
シルフィは驚きこちらを見た。
「驚きましたわ まさか私たちと会話できる人間がいるなんて
貴方は何者ですか?」
「よかった。外国の馬とも普通に会話が出来るんだ
これからもよろしくね シルフィ」
「それと質問の答えだけど強いて言えば馬の神様の使徒かな?
馬の神様からも使徒になりなさいと言われたしね」
「あなた なぜ 馬の神様のことを知っているのかしら」
「説明するの難しいけど 直接お会いしてお話をしたからと
言えばシルフィは納得できるのかな」
「そんな馬鹿な言い伝えでは馬の神様とお会いしたら
翌日には馬の国へ連れていかれると聞かされたのに
どうしてあなたはここにいるのですか?」
「シルフィのその不思議そうな顔も可愛いいけど
そこはまあ 特別だと思ってもらえればいいかな
こうして君と出会えて俺は嬉しいからね」
「貴方 不思議な人ですね まあ、いいでしょう
わたくし シルフィクイーンと言います
イングランドの生まれです。」
「姉さんからも君のこと頼まれているからね
こちらこそよろしくね」
「黒髪の貴方の顔 何処か見覚えがありますね
たしか牧場で私を送り出した方と似ているような
気がします。」
「ああ、それ間違いなく俺の姉さんだよ」
「そうですか、少し安心しました
言葉がわからずコミュニケーションをどうすればいいかと
馬バスの中で考えていましたから
貴方に会えてよかったですわ」
和馬はシルフィの首筋を撫でて
「シルフィ今から君を馬房へ案内するけど何か不満があれば
何でもいってね イギリスの馬房と違うと思うから
少しでも暮らしやすく環境を整えるからね」
「お気遣いありがとうございます。
貴方いい人ですね 気に入りましたわ」
和馬はシルフィと打ち解けたようですね
和馬は厩舎へ入り馬房へ案内する
「こちらの厩舎と馬房綺麗で快適に暮らせそうです
気に入りましたわ」
「それはよかった。あと飼い葉も何か希望があれば
取り寄せることもできるから不満があればいってね」
念のため シオンに出している飼い葉を見せてみる
シルフィは試しにと口に入れて咀嚼すると笑顔になる
「正直 イギリスの飼い葉は私の口にあいませんが
日本の飼い葉は美味しいですね これが普通ですか?」
「そうですね、日本の牧場ではこちらの配合が普通だと思います
あとは年齢とか繋養馬と競走馬によってカロリー計算は変わると
思います。」
馬房の中でシルフィと会話してると
馬房の外から中を覗く馬がいる 今日は俺一人なのでシオンも馬房から出て
放し飼いになっていた。
「あら 新しく入厩されたかたですね
わたしはラグーナシオンと言います。
どうぞよろしくお願いいたします。」
「え、日本の厩舎は放し飼いなんですか?
まあ、いいです ご丁寧にどうも
私はイギリスから来ましたシルフィクイーンと申します
こちらこそよろしくお願いします」
「シルフィ今日は特別なんだよ いつもは馬房の扉を閉めているから」
「そうなんですね、でも私この厩舎気に入りました
厩務員の方とコミュニケーション取れる良い環境で
満足です。」
シルフィは綺麗な栗毛の牝馬です。
栗毛と尾花栗毛の馬が2頭いるこの牧場最高です。
紫苑とその両親は用事を済ませ厩舎の中へ入ると
テンションの高い和馬と遭遇しますが
驚くのは和馬のテンションより 放し飼い状態の2頭の牝馬と
仲良くコミュニケーション取れている状態に驚きました。
次回は和馬がイギリスへ渡航してお姉さんとトムさんの牧場へ行きます
その目的は、シルフィの種付け相手探しです。




