オマケ その11 美鈴と天馬の再会秘話 後編
前回の続きになります
美鈴が馬の国へ来た翌日の馬房
美鈴と再びめぐり会えたことが嬉しいのか天馬は美鈴を抱き寄せたまま
眠っていた。
その様子をすでに起きているメリーとローズたちが感慨深げに優しく
見守っていた。
「パパも再会できて嬉しいんだね 顔も笑っているよ」
「まあ、今日くらいは許してあげます。
私が人間なら同じように抱きしめてあげれるのに残念ね」
そんな2頭の親子の会話が念話で伝わったのか美鈴が目を覚ます
天馬に抱きしめられている状況に驚きながらも
顔を赤くして照れている美鈴は可愛いらしい
メリーとローズと目が合い
「メリー、ローズ おはよう 」
「美鈴おはよう よく眠れたようね」
美鈴はのろける
「天馬に抱かれて眠っていたからかな
こんな感覚久しぶりよ」
美鈴は照れながらも天馬の腕をほどこうとはしない
暫くして天馬も起床 目の前にいる美鈴に驚くも再会を喜ぶ天馬
天馬は美鈴に馬の国の生活についてレクチャーすることにした
馬の国では、食事は原則必要がないこと
念じれば食事も目の前に出すことはできるが
食べて栄養にすることはできず食べなくても何も困らないこと
馬たちが草を食んでいるのは習慣みたいなものだから
まあ、それにここでは時間経過はするが、成長することもないし
衰えることもなく見た目もそのままで過ごすことになる
馬たちは調教で怪我をすることはないので
多少きつめのトレーニングでも大丈夫だと説明
美鈴に説明しながら噴水広場までくると
突然目の前にいた馬が消えたことに驚く美鈴
「ねえ、天馬 馬の姿が消えたけどあれは何?」
「俺も最初は驚いたけど あれは転生したんだ
新たな試練に挑むために馬の神様が並行世界へ
送り込んだんだよ」
「え、並行世界 漫画やアニメじゃあるまいし
説明してよ、それに馬たちはこの国へきたら
のんびり過ごせるんじゃないの?」
「美鈴の戸惑いもわかるよ 俺もそうだったから
あの時はチャコチャンに迷惑かけたし」
天馬は隣を歩いていたチャコチャンを優しく撫でる
「パパ気にしないで チャコも気にしてないから
それにもう今はG1ホースだしね」
「え、チャコチャンの登録名 チャコじゃないの?」
「ああ、そうだよ チャコはここへ来てから
一度転生して別の世界で競走馬として活躍して
G1勝利したからもう転生することもなく
俺たちとここでのんびり過ごせている
あの時は凄く辛かった」
天馬は美鈴にこの馬の国でのんびり過ごせるのは
競走馬としてG1勝利した馬だけと教えた
チャコは重賞勝ち馬だが天馬のミスで2歳で引退させたので
G1勝利はなくここの決まりで再度転生することになり
馬名もチャコからチャコチャンへ変更することになったと美鈴へ説明
「転生すると馬名もそれまでの記憶も消去されるのね
でもチャコは記憶なくしていないわよ
私のことしっかり認識してるし」
美鈴も隣を歩いているチャコを撫でてあげる
それには訳があり馬の神様には感謝しないといけないと天馬が言った
「チャコは特別だよ 本来なら転生と同時に記憶も消去されるが
俺が頼んで1回だけチャンスを貰ったんだ
G1を無事に勝てたら記憶は消さないでくれとね
馬名は必ず変更しないと転生できないから改名はしたけど
馬の神様にはほんと感謝してるよ」
美鈴はこの馬の国にいる馬たちの大半がG1未勝利馬で
数年ごとに転生させられていると天馬から聞かされる
天馬の仕事はそんな馬たちを調教してG1を勝てるようにすることで
のんびりとこの世界で暮らさせるようにすることが目標だという
馬の神様が天馬をこの馬の国へ呼んでくれた理由は
今までのやり方では自主的に努力する馬はいずれ
G1勝利してここで余生を過ごせるが努力しない馬は
何度でも転生することになるため 天馬にトレーナーとして
馬たちの調教を頼んだと説明し美鈴もその補佐として
この馬の国へ召喚されたんだと理解した。
「そうか、あの東京競馬場にはそんな理由があったんだ
今までもスタートゲートとかトレセンみたいな
施設はあったけど馬が自主練しないから
意味がなかったんだね」
「それと天馬 さっきの説明で出てきた並行世界って何?
私たちのいた世界と違う世界だと言葉から理解できるけど
どんな世界なの?」
「美鈴は、エヴェレット解釈『多世界解釈』って知ってる
俺は馬の神様に教えてもらったけど」
「ごめん 私にはわからない 皐月ならホイホイ答えそうだけど
漫画やアニメの世界の話かな」
「よかったよ 美鈴も俺と同類で」
「悪かったわね、無知で無教養なわたしで」
「とにかく世界は多岐にわたり分岐をしていて
俺たちのいた世界じゃないところが存在していてね
並行世界とも言われているそうだよ
まあ、とにかくチャコが転生した世界は俺たちは
存在していなかった日本だったらしい」
「それでライクが存在していない世界だから
チャコはG1を3つ勝つことが出来たんだよ
前世のチャコも才能ある馬だからライクがいない世界なら
十分勝てると俺は思っていたから心配はなかったな」
ここでチャコが会話に混ざる
「チャコねこの馬の国で頑張って練習したから勝てたんだ
みんなパパのお陰だよ こうしてパパとの楽しい思い出も
忘れずにいられたから」
チャコが甘えて天馬にすり寄る
天馬はそれにこたえる
「それで天馬 天馬がここへ来てから
状況に変化はあったの?」
「多少は改善されたかな
馬の神様も改善出来て喜んでくれているし
俺たちが調教した馬が元気にここへ戻ってきて
感謝の言葉を聞くとね ほんと嬉しいよ
俺たちの努力は無駄ではなかったと」
「それで、私が呼ばれたと?
天馬一人じゃ心許ないからと」
「それは間違いないと思う
馬の神様もスケット呼んでくれると
いってくれたから
それが美鈴だったなんてほんと嬉しいよ
また会えて ここは寿命なんてないし」
「ありがと 天馬私も嬉しい
貴方ともう一度会えて馬の調教もできる
2度目の人生に感謝しないとね」
「うまくいけば皐月も来るかもよ
私が死ぬ前に馬頭観音様のこと
伝えたからあのこなら理解できると思う」
「それは楽しみだな、騎手も増えれば
レースも調教も成果があがるから
楯さんと横長さん来ないかな」
「天馬 しばらくは私と二人だけだけど
よろしくね 私の愛しの相棒」
「こちらこそよろしく 愛してるよ美鈴」
二人の世界に入り込むがそこで邪魔するのは誰かな?
「天馬のサポートは私がするから
美鈴は指をくわえて横で見ていなさい」 メリーが
「ローズも負けないよ パパは私がサポートする」
「私もですわ 」スターが
「チャコも頑張る」
「天馬が頑張るなら俺も手伝うぞ」プラチナが
「それなら私もプラチナといっしょに頑張ります」マロンもか
ああ、そうだ みんなで頑張ろう すべての馬がこの世界で
のんびりと余生を満喫できるように
天馬編のオマケ話は終了して 次回から天馬のひ孫の和馬編が始まります。
和馬編は生産牧場をやめてしまった天翔牧場が和馬の代になり生産牧場を再開するお話です。
当初は別のお話で進める予定でしたが、続編として進行します。




