オマケ その5 幻のプラチナ会員
天翔牧場の名前が世間に知れ渡り会員が増加するお話ですが
細やかなサービスをするためには、人数が多くても困るという
お話です。家族経営では無理ですよ
天翔牧場では引退馬繋養資金捻出のため会員を募集している
そして会員特典としてイベントに参加することが出来る
その内容は昼食夕食の提供と宿泊施設利用とメインイベントは
繋養馬による乗馬体験だったのだが...
ある日を境に状況が変わってしまった。
ある日とわ エクセレントローズとブリリアンスターの前座イベント
が行われた日本ダービーのレース開催日からだ。
DRAの公式ホームページには、天翔牧場の概要が掲載されたため
アドレスはもとより繋養馬の細かな経歴 会員を募集していること
またその特典も全国的に知れ渡り その日からイベント参加できる
プラチナコースへの入会申し込みが殺到してしまった。
これではイベントが円滑に行うことが出来なくなるため
牧場側は急遽新規会員登録を停止することになった。
天馬は大きなため息をつく
「DRAもこちらの了承も取らず 余計なことしてくれたな」
DRAの公式ホームページに掲載されることは
天馬たちには事前連絡はなかったらしい
美鈴が
「天馬 余り怒らないで DRAも良かれとしてくれたことだからね」
「でもな 会員が増えてしまうとイベントの参加申し込みしてもらえても
参加できない会員が出てしまう 繋養馬とお義父さんの事情もあるからな」
イベントは大型連休を利用して行うため 参加人数は当然限られてくる
当初は、週末を利用して慎ましく開催できたが今は無理だ
そこで奈々さんが挙手する
「天馬さん 贅沢な悩みですよね
普通引退馬繋養牧場だと会員集めるのもひと苦労しますよ
繋養してる功労馬の中に有名なG1馬でもいればいいのですが…
ここはG1馬に年度代表馬ばかりでしたね あははは」
沈黙が生まれ 美鈴が
「そうね、奈々の言うとうり贅沢な悩みだけど ホームページと
競馬場でのモニターを見られたら 訂正することも
困難になるわね」
「それとね、天馬この牧場はまだ本格的に引退馬繋養牧場
ではないと思うわよ 競走馬は引退してても
現役の種牡馬と繁殖牝馬ばかりでしょ いっそのこと
新規募集を辞めたらどう?」
腕組みしてる天馬は顔をあげる
「そうだな 新規会員募集停止しよう
それと規約を改定してプラチナだけにする」
「プラチナコースだけにするの?」
「そうだよ、他のコースの各特典は無料にして開放する
そうすれば苦情も出ないだろ」
「繋養馬の動画配信サービスと画像の提供のことね
推し馬プリントサービスは廃止よね」
「元々プリントサービスは有料だから
このまま継続かな 会員じゃなくても問題ないし」
「それにな美鈴 いい機会かもしれないから
イベントの概要も修正して会員様の理解も得ようとおもう」
「例のアクセス問題ね どうするの?」
「今年まではいいけど 来年3月からDR最寄り駅は廃駅で
当然駅からのバス路線は廃止だろ どのみちアクセスの問題は起こるからな」
「北海道の人は今までどうり自家用車でいいけど
遠方から参加の人は、空港かDRの駅からレンタカーだよな
そこで空港からの利用者にはレンタカー料金で
ヘリでの送迎サービスなんてどうだろう?
燃料代にはならないけど動いていない空き時間の有効活用だよ」
「そうね、じゃあ 私がお父さんに了解とるわ
それと宿泊施設どうするのバンガローじゃ足りないわよ」
「それは問題ないよ 静内商工会の会合でね
ペンションや民宿の閑散期の宿泊者
集めの方法の模索に貢献できそうだから」
「スキー客の減少に伴う 宿泊施設の件ね
それなら送迎車の問題もなくなるわね」
北海道でも温暖化で降雪不足によるスキー場閉鎖が増えてます。
夏も涼しくなく気温は35度を超えますから深刻です。
こうして天翔牧場の会員募集要項は改定されましたが
会員からの不満は少なくなんとか平穏な年越しを迎えました。
翌年 DRは利用客が少ない最寄り駅を廃駅 バス路線も廃止されました。
イベントを本格的に始動する前に
一組の家族がプレイベントに参加することになりました。
東京から参加される山田さんは、親子3人での参加です。
今回は特別に奈々さんが添乗員として千歳空港へお迎えに行きます。
空港で奈々さんの出迎えを受け ヘリポートへ向かう山田さんファミリー
初めてのヘリコプター体験です。
実はこの山田さん東京に本社がある企業の社長さんで
お義父さんとも面識がある馬主さんです。
「おや、このヘリは佐藤牧場のですか?」
天翔牧場と佐藤牧場共同使用のヘリですが
機体には佐藤牧場の名前があるだけですが
このイベント後天翔牧場の名前とイラストが追加されます
「はい、お隣同士の牧場ですから
共同で所有しております」
ヘリは山田さん達を乗せヘリポートを離陸する
初めてのヘリの体験でお嬢様は興奮してます。
「パパ ママ見て 鳥さんが飛んでるよ」
飛行機に比べ低空を飛ぶので鳥は同じ高度で飛んでます
速度が違うので直ぐに追い越しますけど
こんな感じで30分ほどで牧場のヘリポートへ到着します。
ここは、天翔牧場のヘリポートです。
「やはり ヘリの旅は快適ですね
以前参加したときはDRとバスの乗り継ぎで
疲れたのでこれはいい改善点ですよ」
プレイベントでは依然との違いを体感してもらう
意味もあります。
天翔牧場では昼食の準備が進められている
これは以前からあるバーベキュー料理を味わうことが出来ます
「この牧場へ来るのは2度目ですが、
やはり見事な厩舎と設備ですね
産駒が皆優秀なのも頷けます」
この山田さん 昔は牧場経営をはじめたいと考えていたらしいが
奥さんに反対されて諦めたとのこと
実は山田さん婿養子なんです 奥さんのお父様が起業した会社の
社員として入社して先代に認められたそうです。
昼食は馬房からも見える 中庭で行われるので昼食を食べながら
馬たちと戯れることが出来ます。
馬房からは メリーとローズが頭を出している
メリーが天馬に
「ねえ、天馬 人間たちが食べてるお肉って美味しいの?」
「そうだね、人間は馬と違い雑食だからね
草食の馬と味覚も違うし俺は好きだよ」
バーベキューのお肉は牛肉と豚肉それに鶏肉が使われる
天馬の牧場では羊肉は調理されないし当然馬肉はでません
「でも パパ 飴ちゃんはおいしいよね」
天馬はローズを撫でる
「そうだね 飴は馬でも人間でもおいしいよね」
イベント参加者でも厩舎へ立ち入ることはできないので
中庭から馬房を見学することになるため
寝藁に横になっている馬には会うことはできません
昼食後は休憩後 牧場の施設見学だが、
厩舎と馬房を外から見て放牧地へ向かう
本日放牧されているのは誰かな?
柵の中でプラチナとホワイトマロンが仲良く2頭並んで草を食んでいる
ほんとマロンはプラチナが好きだね
隣の放牧地にはシルバーとチャコとブリリアンスターがのんびりとくつろいでいる
山田さんのお嬢様がチャコを見て
「あ~パパ チャコチャンがいるよ 小さくてかわいいよね」
「ほんとだね でも遠くてよく見えないね」
じゃあ サービスしますかと天馬が
「チャコ ごめん こっち来てくれるかな」
「ウン いいよ~ 直ぐ行く」
チャコが俺たちの方へ駆けてくる
俺の目の前で停止するチャコにお嬢ちゃん大喜び
「わ~ チャコチャン ねえ 撫でていい」
「いいよ、 優しく撫でてあげてね」
お嬢ちゃんは優しく いいこいいこする
そんなところへ シルバーとスターもやってくる
白毛馬のスターの登場に山田さんも興奮する
「天翔さん スターとのツーショット写真お願いできますか?」
デジカメを天馬へ渡す
「いいですよ、スターもこっち来て」
スターを真ん中にして山田さん夫婦がピースする
それじゃあ撮りますよ …カシャ
私もチャコチャンと写真撮ってと言われ
それに応じるチャコと天馬
こんな和やかな感じで1日目が終わり山田さんファミリー
は、送迎車で近くの民宿へ向かう
翌日は乗馬体験があり佐藤牧場から乗馬用の馬を借り
家族で楽しんでもらうことになります
お嬢ちゃんにはチャコに乗馬してもらい
大喜びでしたね
イベントが無事に終わり帰りのヘリポートで
お嬢ちゃんは疲れたのか既にお母さんにおんぶされ
背中で眠っている
「山田さん どうでした 新しいイベントわ」
「そうですね、これなら 参加される方は
満足されると思います。 送迎用のヘリは時間の節約に
なり時間に余裕が持てますからイベントの中身が濃くなります
私もまた参加したいですね」
「それはよかったです。これで安心してイベントが出来ます
参加していただきありがとうございました。
それではお気をつけてお帰り下さい」
山田さんは、ヘリの中から手を振り 牧場関係者も
皆で手を振り送り出す
天翔牧場のプラチナ会員ですが、これ以後も
新規で募集することはありませんでした。
理由は退会されるかたがいなかったため
世間では幻のプラチナ会員と呼ばれています
後に婚約する優駿君の相良家もプラチナ会員なんですよ




